PMCの日常
6月4日 0734時 ソマリア テロリストキャンプ
ジョン・ムゲンべは、今後の攻撃計画を考えていた。部下たちがAK-47やFN-FAL、RPG-7の射撃訓練をしている。ついに、数年越しの攻撃計画を行う算段を立てていた6年前の報復を行うべく、ヨーロッパを攻撃する。ムゲンべは、かつてはナイジェリアの出身であり、ナイジェリア人によるナイジェリア人のためのナイジェリア、というのを主張していた。それは、海外資本を締め出し、ナイジェリア国内の全ての資源を法外な価格で海外に売りつけようとしていた。
しかし、それは、かなりの反発を買った。というのも、天然資源と農作物だけで成り立っていたナイジェリア経済が、ヨーロッパ諸国の企業の進出によって、建設、サービス、その他都市開発が進み、国民たちの生活は豊かになりつつあった時だった。国民の大多数は、多国籍企業に雇われ、収入が右肩上がりであった。しかし、ムゲンべは、それに反発を感じていた。彼からしてみたら、ヨーロッパ連中の手を借りているに変わりなく、植民地支配と同じにしか感じなかった。それに、国民が進んで協力していることに、もっと反発を感じていた。そこで、ムゲンべは、昨年、政党を組織し、選挙戦に打って出た。
ムゲンべは、同じような志を持つ人間をまずは300人ほど集め、議会の総選挙で議員として立候補した。しかし、ムゲンべとその仲間たちは、政治活動をする裏で、有権者に対する脅迫、贈賄を行った。それはエスカレートし、遂には、他の立候補者にも行われていた。しかし、多くの政治家や国民はムゲンべを嫌っていたため、これに屈せず、最終的には、ムゲンべは選挙戦で大敗した。そして、遂には選挙運動期間中に行われた様々な違法行為のかどで告発され、逮捕された。裁判の結果、好ましからざる人物として、国外追放されてしまった。
ムゲンべは、このことを、西側諸国の資本家、政治家に毒され、洗脳されたナイジェリア国民による謀略だ、と考え、ナイジェリアにいた頃の仲間を集め、300人規模程度の小さな武装ゲリラ組織を立ち上げた。それに協力をしたのが、ファリド・アル=ファジルだった。
アル=ファジルは、パレスチナ出身で、イスラエルに対する攻撃に参加していた。が、イスラエル軍の追撃が激しくなると、段々と追い詰められ、最終的にはアフリカへと逃れた。小さな武装ゲリラ集団しか持っていなかったムゲンべと違い、アル=ファジルは、レバノン、パレスチナ、シリアに多くの細胞を持っていた。アル=ファジルがムゲンべと接触したのは、去年の秋の頃だった。二人は意気投合し、まだ小さかった自分たちの組織を統合し、遂にはかなり大規模なテロ組織を立ち上げた。これまで、彼らは北海で核物質を奪い、マルタで化学兵器を使い、ギリシャとモナコを攻撃した。
6月4日 0758時 ソマリア テロリストキャンプ
Mi-8ヘリが着陸し、中から部下を連れたファリド・アル=ファジルが降りてきた。アル=ファジルは迎えに来たムゲンべを握手をし、話し始めた。
「人間と武器はかき集めた。後は、何をどう実行するか、だ」
「ギリシャ逃げ出した仲間から、興味深い話を聞いた。どうやら、例の作戦の時に対処していたのは、ギリシャの警察と軍だけでは無かったようだ」
「ほう。聞かせてくれ」
「連中の正体はわからない。だが、一つだけ言えるのは、NATOが極秘裏に新しい部隊を立ち上げていた、という事だ」
「ふむ・・・・・。だが、NATOが関わってくるとなると、そう簡単にはいかないだろう。下手に攻撃をすると、即報復を受ける上に、そう簡単に攻撃できるようなところにはいないだろう」
「だな。多分、厳重なセキュリティに守られているだろう。多分、要塞のような場所だろうし、地図にも載っていないだろう」
6月4日 1015時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社
クリス・キャプランが部下たちを連れて敷地内のアスレチック・コースを走っていた。防弾チョッキ、ヘルメット、FN-SCAR Mk16、グロック19と重武装だ。キャプランは既に50近い年齢になっているものの、後から引き連れている若い部下にはまだまだ負ける気はしなかった。ロープをよじ登り、堀にある飛び石に飛び乗る。そして、コースの最後に設けられたシューティングレンジでの射撃だ。キャプランたちは銃を構え、撃ち始めた。人間型のターゲットの頭、鳩尾の辺りに弾痕が刻まれる。
「終わり!」
キャプランは最後の弾倉を空にして、その場に銃を置いた。
警備部隊の隊員たちは銃のクリーニングを行っていた。弾倉に再び5.56mmAPM弾と9mmレンジャーSXT弾を装填した。5.56mmAPMはイスラエルで開発された弾で、7.62mm弾程度の貫通力を持っているとされる。
「こいつを軍隊で使ったら、大問題だな。完全にハーグ陸戦協定違反で、国際軍事法廷送りだな。でも、俺たちは幸いにも民間人だ。それに、ハイドラショックやレンジャーSXT、R.I.P弾を使ったとしても、相手は犯罪者であるテロリストだ。なんとも問題は無い」
ユーロセキュリティ・インターナショナル社が使用している弾種は、5.56mm×45普通弾/APM/APLP弾、7.62mm×51普通弾、7.62mm×39普通弾、5.45mm×39普通弾、12.7mm×99普通/徹甲弾、9mm×19のハイドラショック、レンジャーSXT、R.I.P弾、5.7mm×28普通弾がある。
「ボスもなるべく補給関係で弾は統一したいと言っていたが、なかなかそうもいかないからな」
「まあ、場合によっては、テロリストを仲間内で殺し合ったように見せかけて排除しなきゃならない時もある。そうなると、東側の武器を使ったほうが簡単だ。証拠も残りにくいしな」
「確かにな。言えてる」




