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市街戦-6

 5月23日 1359時 ピレウス港


 テロリストの4人組が、何食わぬ顔で、桟橋へと向かっていった。後ろからは、3人組のテロリストグループが、30メートル程離れて歩いている。彼らは、武器を隠し、一般市民のフリをしている。人相が割れているかどうかはわかってはいないが、他に市民がいないかどうか、慎重に周囲の様子を見回した。今までは、軍と警察の追撃を上手く躱してきた。これが最後の仕上げで、予め用意していたクルーザーを使って、地中海を渡り、リビアまで逃げるだけだ。


 テロリストたちは、一切言葉を交わさず、真っ直ぐに白い船体に青いストライプが入った、500トン級の大きなプライベート・クルーザーへと向かった、船籍はエストニアで登録してある。7人の凶悪犯たちは素早く乗り込み、もやい綱を解いた。やがて、エンジンを動かし、クルーザーを出港させた。


 ピレウス港の警備員が、突然、動き出したクルーザーに気づいた。警察と軍の要請で、今はピレウス港から船を出すことを禁止されていた。にも関わらず、出ようとしている船がある。

「おい!待て!止まれ!」

 警備員は警棒を手にして、無線機で勝手に船が出ようとしていると管理本部に連絡して、船を追いかけ始めた。


 テロリストの一人は、どうせ追っては来れないと考え、警備員を無視した。もうひとりは拳銃を手に撃とうとしていたが別の仲間が「余計なことはするな」と言って、制止した。


 5月23日 1404時 アテネ上空


「何?奴らが船で逃げた?特徴は?」

 ピーター・スチュアートが無線で連絡を受けた。どうやら、追いつけるのは自分たちしかいないらしい。

「白地に青いストライプ・・・・・名前は"サザン・ウィング"、船籍はエストニアか。わかった。持ち主は誰なんだ?場合によっては、無事に取り戻せるとは言えないからな」

 その会話を聞いたジョン・トラヴィスは、M134ミニガンを改めて点検した。敵が撃ってきたら、これを使うしか無い。

「よし、全速力でかっ飛ばすぞ!できれば何人か生け捕りにしてやりたいが、撃ってきたらそうも言っていられないからな」


 5月23日 1408時 サロニカ湾


 エストニア船籍のクルーザーがかなりの高速で南下していった。テロリストたちは、時折、上空を背後を見て、追跡してきている高速艇やヘリがいないかどうか、確認した。だが、連中は、一つ、重大なミスを犯した。AISを切るのを忘れていたのだ。


 5月23日 1409時 ピレウス港上空


「こいつだ。こいつだ。今、ピレウスから真っ直ぐ南下している。このまま進めば追いつけるぞ」

 ピーター・スチュアートがスマホの画面を見ながら、パイロット2人に指示を出していた。AISを使って、エストニア船籍の"サザン・ウィング"の航跡を追い続ける。

「まずは警告だ。船の前方の掃射して、動きを止める。そして、俺達が牽制して、沿岸警備隊や海軍が逮捕に来るのを待つ。但し、奴らが撃ってきたら・・・・・・わかっているな?」


 5月23日 1411時 サロニカ湾


 テロリストはクルーザーを前進させ続けた。今の所、沿岸警備隊にも見つかっていないようだ。だが、エンジンを全開にして爆音を立てて航行させていたせいか、忍び寄ってくるヘリの音に気づかなかった。


 HH-60Gは左右からクルーザーを挟み撃ちにした。船の移動速度に合わせて、ピッタリとついていく。やがて、ブリッジにテロリストの姿が見えた。

「今すぐ船を停止させろ!さもないと、攻撃する!」

 拡声器で、ヘリのキャビンから姿を見せた男が拡声器で怒鳴った。ふと、テロリストの一人が自分の胸を見下ろした。赤いレーザーの光の点が、ミニガンから伸びてきている。暫くすると、テロリストは観念したのか、クルーザーを停止させた。


 数分後、ギリシャ沿岸警備隊の警備船が3隻、追いついた。クルーザーをぐるりと囲み、自動小銃を持った警備隊員が、甲板から銃口を向けている。軍用ヘリは、その場で援護を続けた。敵が爆発物を持っている可能性があるため、迂闊には近づけない。

「全員、武器を捨てて、服を脱いで出てこい」

 沿岸警備隊の隊長が拡声器を使ってそう言うと、上半身裸の男が7人、出てきた。

「四つん這いになって、その場を動くな。妙な真似をするな。我々は武器の使用を許可されている」

 男たちが従うと、沿岸警備隊員たちは、手錠でテロリストを拘束した。警備艇に乗せられ、連行されていくだろう。

「上空のヘリ、援護を頼めるか?今から、こいつらを港へ連れて行く」

 コーストガードの隊員が、拡声器でこちらに言ったので、アラン・ベイカーはキャビンから親指を立てて見せた。

「よし。撤収だ。まだ奴らの仲間が残っていないか、念の為、港周辺を虱潰しにしないとな」

 警備船はクルーザーを曳航し、軍用ヘリの援護を受けつつ、港へと戻っていった。

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