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惨状

 5月23日 1105時 アテネ


 ハワード・トリプトンらは武器を持ち、ニコ・メノウノス警部の後に続き、現場へ向かって走っていった。歩道橋の下を見ると、パトカーと軍の車両が道路を封鎖し、警察官と陸軍兵士が一般人やマスコミ関係者の避難誘導をしているのが見える。数名の撮影スタッフは、見事な勇気を出して、現場へ戻ろうとしていたが、兵士や警官に制止されていた。今のところ、銃声や第2、第3の爆発音が聞こえていない。が、テロリストが他に爆弾を仕掛けていないとも限らない。そして、それは、大抵の場合、数分の時間差をつけて爆発するものだ。


 カルチャーセンターの階段には、炎上する外相と財相が横たわり、取り残されていた。やがて、軍の兵士と警察官が消火器を持って、真っ白な粉を吹きかけ始めた。だが、VIPを救うには、遅すぎた。彼らは、今日から数日はバーベキューを食べられなくなるだろう。


「2次攻撃に気をつけろ!どこに爆弾が仕掛けられているか、わからんからな!」

 メノウノスは部下に次々に指示を出していた。その傍らで、ブルース・パーカーが生物検知装置と化学剤検知装置を取り出し、反応を調べていた。

「BC兵器の反応無し。マスクは必要ないか・・・・・」

 周りでは、パニックになった群衆が逃げ出し、警官や兵士が手招きする方へと向かっている。オリヴァー・ケラーマンとマルコ・ファルコーネが、転んで動けなくなった女性を助け起こし、避難誘導をしている警察官の方へ運んでいった。

「この人を頼む」

 ケラーマンはそう言うと、武器を手に、現場へと戻っていった。


 5月23日 1007時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社


 ジョン・トーマス・デンプシーとカート・ロックは、テレビ中継でこの惨状を目の当たりにしていた。最初は、何が起きているのか、全く理解できなかった。

「クソッ、なんてこった・・・・・・」

 即座に電話が鳴り、ロックが受話器を取った。

「ユーロセキュリティです。はい・・・・はい、わかりました」

 ロックはデンプシーに受話器を差し出した。

「国防省からです」

「すぐ行くと伝えてくれ」

 デンプシーはホルスターに収まったワルサーを点検し、オフィスを出た。

「ヘリを用意してくれ。行き先は国防省だ・・・・」


 アメリカ海軍出身のパイロットと海上自衛隊出身のパイロットが、MH-60Lのエンジンを始動させた。パイロンには燃料タンクとヘルファイアミサイルのランチャーを下げている。やがて、ヘリポートにデンプシーとロックが姿を現した。


 5月23日 1107時 ギリシャ アテネ


 HH-60Gが上空を旋回していた。キャビンに乗ったネタニヤフらはレミントンACRを手に、地上の様子を観察していた。群衆が警察官や消防士、兵士の誘導に従い、臨時の避難所へと向かっている。

「こちら"ブルーホーク"。状況は最悪だ!そこらじゅうが炎上して、人もバタバタ倒れている!」

 デイヴィッド・ネタニヤフは、注意深く地上の様子を観察し、不審な人物が現場を離れようとしていないかどうか見ていた。特に、このような場合、軍服や警察官、消防士などの制服を着ていないにも関わらず、落ち着き払って行動している人間が一番疑わしい。


 メノウノスはG-36Kを手に、部下を連れて現場を奔走した。無線機を使い、他の部下たちに指示を出した。

「いいか、まずは負傷者の救護だ。これはB班がやれ!A班は不審者の捜索と追跡、C班は現場を封鎖し、D班とE班は待機して、その時の指示に応じて行動しろ!」

 メノウノスはトリプトンの方を振り返った。

「あなた方は、不審者の捜索をお願いします!まだそれほど遠くへ行っていないでしょうから、まだ間に合う可能性があります」

「わかりました。みんな、行くぞ!」

 トリプトンとパーカーは部下を連れ、街の方へと走っていった。


 警察の特殊部隊員がMP-5を手に、ロケットが発射されたと考えられる地点へと向かっていった。まずは、証拠品の操作だ。ロケット発射機は、逃走するときには邪魔になるから、その場に捨てられているだろう。

「こちらF班、ロケットの発射地点のアパートに到着。突入する」

『了解。慎重にしてくれ』

 特殊部隊員は、開け放たれた窓の部屋を確認した。なんともお粗末なことに、ベランダには発射された後のロケットランチャーが転がっているのが見える。

「ロケットランチャーを確認。押収のため、突入する」


 特殊部隊は、テロリストがいた部屋に足を踏み入れた。玄関を通り、最初に目に入ったのはトイレ。ベランダは、玄関から見て左手の方にあるはずだ。

 隊員は、G-36Kを手に、慎重に部屋の中に入った。リビングルームを見ると、中にテレビ、ソファ、テーブルがあり、窓の外はベランダになっており、そこに無造作にRPO-Aのランチャーが置いてある。他の隊員は、他の部屋に入り、その場に何か残されたものが無いかどうか、捜査を開始した。引き出しを開け、クローゼットの中も確認する。一人の隊員が、テーブルの下を確認すると、タイマーと起爆装置にコードで繋がったセムテックスが置かれているのを確認した。そのカウントダウンは、既に2秒前の表示になっていた。  

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