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南東へ-1

 5月19日 0614時 ドイツ シュトゥットガルト空港


 ドイツ空軍のA400Mが2機とA310が1機、貨物エリアのエプロンに駐機している。まだ朝早い空港では、ようやく、この日最初の便の飛行機がタキシングを開始したところだ。そこへ、バタバタを羽音を立てて、HH-60Gがアプローチを開始した。

『シュトゥットガルトタワーより"ブルーホーク"へ。着陸を許可する』

「"ブルーホーク"了解。着陸する」

 無骨な軍用ヘリは、ランウェイ07からアプローチした後、そのままホバータキシーで貨物エリアへと向かった。ドイツ陸軍の兵士が、うっすらとした朝靄の中、旗を振って誘導する。ここからは、輸送機にヘリを積み込み、ギリシャのデケリア空軍基地を目指すことになる。

 ヘリから"ブラックスコーピオン"のメンバーが降りると、ドイツ空軍のクルーが大きな輸送機にヘリをトーイングし始めた。


「こんな朝早くに出かけるとは。こっちは夜間演習でヘロヘロだというのに」

 ディーター・ミュラーが飛行機に向かいながら言う。

「まあ、機内でゆっくり寝られるさ。武器はチェックしたか?」

 山本肇が話しかける。

「ああ。拳銃とアサルトライフル。それからショットガンだな」

 今回、持ち込むことになったのは、FN57拳銃と10.5インチバレルのレミントンACRだ。そして、トリプトンとパーカーは、カービンの代わりに14インチバレルのモスバーグM590を用意した。他には、スモークグレネード、スタングレネードを装備。これならば、大きめのザックの中に余裕で隠し持つことができる。フラググレネードや催涙ガスグレネードも持ち込みたかったが、ギリシャ当局が難色を示したため、却下となった。今回、攻撃のターゲットになっているとされているのは、ギリシャ、ハンガリー、チェコといった国だ。つい昨日のことだが、このことは、1枚のDVDがBBC宛に届いたことから始まる。


 レインコートで顔の上半分を隠した男が、夕方に無言でBBCの受付のデスクに、一つの封筒を置いて出ていった。不審に思った局員が警察に連絡し、通報を受けて出動したNBC装備に身を包んだ軍の兵士らが、封筒の中身を確認した(この時、一時的に、BBCの建物周辺が封鎖された)。中身は炭疽菌などでは無く、1枚のDVDだった。ウィルス検査をした後に再生すると、黒いマスクで顔を隠した男の画像が映し出された。男の声明はこうだった。

「お前たち西欧諸国は、アフリカや西アジアを3世紀に渡って搾取し続けた。お前たちがやっている資源開発援助とやらは、結局はアフリカや西アジアの資源を安く買い叩き、自分たちの良いように使っているだけだ。その裏で、現地の住民は貧困に喘ぎ、苦しみ続けている。それを、お前たちは見て見ぬふりをし続けた」

 そこで、男は言葉を切った。

「しかし、もう我々は、この状況を座視しているつもりは無い。今度は、我々がお前たちの国に乗り込み、搾取し、支配する番だ。さて、まずは、お前たちの住んでいる場所から、最も西アジアに近い場所を恐怖に陥れてやる。それがいつなのか、どこなのかは神のみぞ知るところだ・・・・・・」

 映像はそこから更に10分間続いた。BBCは、まずは警察に通報した。そして、イギリス政府を通じてNATOへと情報が回っていき、最後にユーロセキュリティ・インターナショナル社にたどり着いた。


 "ブラックスコーピオン"のメンバーが持っている大きなザックを、ベルトコンベアーでドイツ空軍の地上クルーがA310の貨物室へ運んでいった。機内に持ち込むのは、現金とブラックカード、アメックスのトラベラーズチェックが入った財布、ホルスターに入った拳銃と予備弾倉、その他小さな私物だけだ。


 5月19日 0659時 ドイツ シュトゥットガルト空港


 整備と給油を終えた3機のドイツ空軍機が、滑走路に向かってタキシングを始めた。ちょうどアメリカン航空のB777が着陸し、エプロンへ向かっていくところだった。朝早い時間なので、まだそこまで離着陸する飛行機は多くない。

『シュトゥットガルトタワーより"ゴート1"、離陸を許可する。"ゴート2"と"ゴート3"はその場で待機せよ』

「"ゴート1"了解。離陸する」


 A310が滑走路を走り、程なくして離陸した。続いて、ターボプロップの音を響かせながら、2機のA400Mが続けざまに飛び立つ。ここからは、ギリシャまで約3時間の空の旅となる。空は晴れ、絶好のフライト日よりになりそうだ。


 5月19日 0713時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社


 朝早い時間のため、ここにいるのは夜間当直の武装警備員と、泊まり込みを決めたジョン・トーマス・デンプシーだけだった。デンプシーはオフィスの目覚まし時計が鳴ると、苛立たしげにそれを止め、ソファーから起き上がり、迷彩服に着替えて、水を一杯飲んだ。そして、弾倉に9mmのハイドラショック弾が装填されているのを確認してから、グロックをホルスターに入れた。そして、施設内のトレーニング・ジムへと向かった。


 流石にこの時間では、トレーニング・ジムは無人だった。デンプシーは、重さ60kgもあるベンチプレス・バーベルを持ち上げ始めた。これを20分続けてから、拳銃の射撃をするつもりだ。今頃、部下たちは機内でゆっくりくつろいでいるはずだ。

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