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Operetion Spring Britz-4

 5月8日 2253時 西サハラ某所


 ヘリが目標地点に到達し、ホバリングを開始した。中から特殊部隊員たちがファストロープで地上に降り立つ。彼らは素早く予定通りの地点へ走っていき、機関銃や狙撃銃の銃口をテロリストキャンプに向けて、そのまま待機した。ヘリの方は、そのまま低空飛行で目標の近くまで飛んでいった。


「ようし、予定通りだな。パーティーが始まったら、一気に攻撃するぞ」

 シャルル・ポワンカレとディーター・ミュラーはバレットM95を構えた。マグヌス・リピダルはM240B機関銃に弾薬ベルトを装填し、ハワード・トリプトンと柿崎一郎はSMAWを肩に担ぐ。

『パーティーの時間まで10分。用意はいいか?』

 フランス軍パイロットの声が無線から聞こえてきた。ブルース・パーカーはそれには一切答えず、送信ボタンを素早く2回、押した。


 5月8日 2303時 西サハラ某所 テロリストキャンプ


 EC-665がテロリストキャンプを射程内に捉え、70mmハイドラロケットを2発ずつ、連続して発射した。思わぬ攻撃に、テロリストたちはあっという間に大混乱に陥った。監視塔が30mm機関砲で破壊され、ロケットの榴散弾が建物や車両、人間を引き裂く。更に30mm機関砲が火を吹き、地上のあらゆるものを破壊し始めた。


「始まったな。やれ!」

 トリプトンと柿崎はSMAWの引き金を引いた。サーモバリック弾が真っ直ぐ飛んでいき、炸裂する。リピダルが機関銃から弾幕を張り、ポワンカレとミュラーはテロリスト一人一人に狙いを定め、引き金を引いた。"ブラックスコーピオン"が陣取った場所から600m程西に行った場所からも曳光弾の筋が伸び、ロケットが発射される。燃料か弾薬に引火したのか、凄まじい火柱と共に爆発音が響き渡る。傭兵部隊とフランス軍、イギリス軍、ドイツ軍は徹底的に砲火をテロリストキャンプに浴びせた。ドイツ兵がパンツァーファウスト3と次々と放ち、イギリス軍はカール・グスタフ無反動砲から対人弾や対装甲弾を繰り返し発射する。L7A1やMG-3、M249の銃声が響き渡り、暗い砂漠の上を曳光弾の輝きが断続的に伸びていく。向こうからは、9mm拳銃弾1発すら飛んでこなかった。やがて、KSKの部隊指揮官が「撃ち方やめ」と指示を出した。


 EC665がゆっくりと標的のテロリストキャンプへと近づいていった。傭兵部隊とフランス・ドイツ・イギリスの兵士たちが、その後を追うように歩いて行く。敵からの反撃を警戒し、しゃがんだ状態で、ノロノロと進んでいくしか無い。ここにいた特殊部隊員全員が、装甲車両を持ち込まなかったことを酷く後悔した。広大な砂漠の中では、遮蔽物は何一つ無く、向こうが狙い撃ちしてきたらオシマイだ。

「畜生。ボクサー装輪装甲車を持ってくればよかった」

 トム・バーキンは地面を這いながら呟いた。装輪装甲車に爆発反応装甲とトロフィー・アクティブディフェンス・システムを取り付ければ、RPGによる攻撃も防ぐことができる。

 トリプトンは、これに関しては、完全なる失敗だと思った。ボクサーならば、A400MかC-17Aに1両積むことができ、現地には空挺用パレットに載せてパラドロップすればよい。2両あれば、チームを片方ずつに載せて、乗員を銃弾から守りながら機動できる。また教訓ができたな、とトリプトンは思った。しかし、敵が動く様子は無いのか、上空で警戒しているEC665は一切弾を撃っていない。

「全くだ。何で誰もそれに気づかなかったんだ?」と柿崎。

「俺のミスだ。生きて帰ったら、作戦要項に書き加えておこう」

 トリプトンが低い声で言った。が、この事を考えていたのは、SASやKSKも同じであった。


 5月8日 2346時 西サハラ テロリストキャンプ


 立って歩けば10分でたどり着く距離を、特殊部隊員が匍匐前進で40分もかけて移動した。奇跡的にも、銃弾は1発もこちらに飛んで来ることは無かった。やがて、テロリストキャンプがようやく目の前に見えてきた。そこらじゅうが燃えていて、焦げた死体や銃などが転がっている。KSKの隊員が立ち上がり、素早くキャンプの敷地へ入っていった。他の特殊部隊員も後に続く。予め決められていた手順に従い、チームごとにそれぞれが調べるべき場所へと駆けて行った。


「クリア!」

「クリア!」

「クリア!」

 特殊部隊員たちは、そこにあるものを調べていった。しかし、ヘリによる攻撃で、書類やディスク、USBメモリ、パソコンなどは燃えてしまい、情報を手に入れることは困難だった。

「何か司令部が喜びそうなものはあるか?」

 ピーター・スチュアートが近くにいたKSKの隊員に言った。

「さあな。それどころか、何もかも燃えちまったみたいだ。あれだけロケットやミサイルをぶち込んだからな」

「やれやれ。司令部は文句タラタラだろうな」

「なあに、いつものことさ。あの低脳ども、俺たちが何をやっても文句を言うからな」

「全くだ。それにしてもこいつは参ったな・・・・・」

 スチュアートが真っ黒焦げになったUSBメモリをつまみ上げた。多分、中身まで燃えてしまっているだろう。

「おおい、そっちはどうだ?」

 山本肇の声が聞こえてきた。

「駄目だ。何もかにも燃えて、残ってねぇよ。そういうそっちはどうなんだ?」

「全部燃えたみたいだぜ。こりゃ、情報を集めるとか、そういうレベルじゃないな」

 そこにトリプトンがやって来た。手には真っ黒になったタブレットを持っている。

「まあ、俺たちの目的は、ここを全部ぶっ壊すことだったが・・・・・お偉いさんたちは納得しないだろうな」

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