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鉄と砂

 4月27日 0916時 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社


 情報部の巨大なスクリーンの前に、情報部と特殊現場要員のメンバーが立っている。次なる作戦は、これまでのテロに対処するものと違い、こちらからテロリスト集団に攻撃を仕掛ける、というものだ。既にターゲットはイギリスとフランスの情報部員や特殊部隊が追跡をしており、後は攻撃のタイミングだけであった。

「ターゲットは全部で6つ。我々は、そのうちの1つを攻撃する。場所は西サハラで確認された小さなテロリストキャンプだ。他はSASやSBS、コマンドー・ユベル、フランス陸軍第2外人空挺部隊、KSKがやる。武器は各自の判断で、好きなのを選んでくれ」

 デンプシーは言葉を切った。

「正確な場所は、ドーラ市から西へ行ったところだ。我々は、まず、スペインのジブラルタル空港へ行く。そこでヘリに給油し、沖で待機している揚陸艦"ミストラル"に降りる。ミストラルで数日航海した後、西サハラ沖へ展開。作戦決行のサインと共に、ヘリで出撃。一旦、FOBで給油した後に再び飛び上がり、同時多発的にテロリストどもを制圧する」

 トリプトンは、作戦に必用な武器を頭のなかで選定した。自動小銃とグレネードランチャー、機関銃、スナイパーライフル、そしてロケットランチャー。この作戦の目的は、徹底的にテロリストの拠点を破壊することにある。捕虜は取らない。夜間に奇襲し、竜巻のように攻撃するのが一番だと考えた。

「よし。スナイパー・チームと機関銃手が必用だな。それと、ロケットランチャーも」

 トリプトンはそこで、一旦、言葉を切った。

「個人携行するのはグレネードランチャーを取り付けたSACR-Mk16がいいだろう。マシンガンはM240B。スナイパーライフルは、バレットM95だな。機関銃手はジョン、スナイパーはシャルルとディーターがやってくれ。機関銃手の援護はマグヌス、スナイパーの援護はハジメでいいか?」

 誰も何も言わなかった。異存なし。

「ロケットランチャーはSMAWに対戦車HEAT(ヒート)とサーモバリックの二種類。機関銃と狙撃銃、ロケットで遠くから弾を徹底的にぶち込んだ後で、確認に行く。遊牧民のキャンプと間違えないように気をつけろ。そうなる前に、フランス海軍のスペルウェール無人機で偵察して、確認する。俺らが出撃する前にも偵察をするが、攻撃を仕掛けるのは、位置について、再び無人機で確認した後だ。以上」


 5月1日 1347時 ドイツ レーゲンスブルク陸軍基地


 ここ数日間、"ブラックスコーピオン"のメンバーは、拠点攻撃の予行演習を繰り返し行なっていた。ヘリでミサイルとロケットによる攻撃をした後に機銃掃射、あらかた片付けたら、ファストロープで降下し、一人一人を斃していくというやり方だ。訓練はKSKとSASがアドバイザーとオブザーバーを努め、問題点を洗い出していく。この作戦は、NATOの最高幹部たちは強く後押していた。と、言うのも、ここ数ヶ月でヨーロッパではテロリストが好き勝手に暴れている、という印象を諸外国に植え付けてしまっている。そこで、強気の姿勢を見せる必用があると、NATOは考えたのだ。DGSEとMI6が共同してテロリストの拠点に関する情報を集め、攻撃することを決定した。


「やれやれ。外まで出て攻撃する作戦をするのは久々だな」

 ブルース・パーカーはMk16から弾倉を外して言った。接近戦になる前に機関銃や狙撃銃、ロケットで徹底的に叩く計画なので、できるだけ敵の数を最初に減らしておきたい。

「夜明け前の攻撃なら、東から太陽を背にすべきだな。それと、ヘリはできればグレイルやスティンガーの射程外に出しておきたいが・・・・・ギリギリだな」

 ネタニヤフが顔をしかめる。

「ヘリファイアならスティンガーの射程外から攻撃できるが・・・・・・30mmやロケットだとそうもいかない」とロバート・グレインジャー。

「なら、ヘルファイアを8発だな。距離を考えると、予備燃料タンクも必用だ。作戦拠点はどうなっています?」

 パークスがデンプシーに訊く。

「ドイツ陸軍工兵大隊とスペイン陸軍が既にFOBを造り始めている。バラックとタンクローリーを持ち込み、急ごしらえだがヘリポートも建設中だ。それと、アメリカ空軍特殊作戦部隊が、MC-130Jを何機かアビアノ基地からも飛ばしてくれるそうだ」

「それはありがたい。燃料の心配が少ない程、作戦に集中できますからね」


 5月1日 1352時 西サハラ某所


 ドイツ陸軍の工兵部隊が急ピッチで急ごしらえのヘリポートを建設していた。300m四方程をコンクリートで固め、タンクローリーを何台も並べ、その近くにはバラックも並んでいる。工事のペースは驚くほど早く、あと2、3日もあれば小さなヘリポートが完成するだろう。周囲では、アメリカ陸軍のハンヴィーとストライカー装甲車が警備をしている。アメリカ軍は、この他にも、テロリストキャンプを監視するために、RQ-4Bグローバルホークを西サハラ上空に飛ばしている。現在の所、そこでおかしな動きがある様子は無かった。

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