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リゾート-5

 4月1日 1754時 モナコ公国


 アパートのドアを叩く音が聞こえたため、トリプトンはP228を手に、ドアノブに手を掛けた。

「俺は左手でドアノブを握っている。では、右手で持っているものは何だ?」

「勿論、鉛玉がたっぷり装填されたシグザウエルP228だ。すぐそこには、UMPを持った奴もいるんだろ?」

 正解の合言葉が聞こえたため、トリプトンはドアを引いた。紙袋を抱えた山本とネタニヤフが入ってくる。

「とりあえず、ベーコン、パン、コーヒー、紅茶、トマト、レタス、卵、その他諸々を買ってきた。今のところは、街では変わった様子は無いよ」

 ネタニヤフと山本は机の上に食料がたっぷり詰まった大きな紙袋を置いた。ついでに街の様子を写真に撮ってきたらしい。

「そのコーヒー、どういう代物だ?」

 マグヌス・リピダルはインスタントコーヒーの瓶を手にとって、顔を顰めた。

「さあな。だが、いつもオフィスで飲んでいる高級品とまではいかないのは確かだ」

 ネタニヤフは生鮮食品を冷蔵庫に入れていきながら答える。ユーロセキュリティ・インターナショナルでは、コーヒーに関しては、ブラジルまたはコロンビア産の高級豆を取り寄せている。

「この手の任務は退屈するよな。だが、このまま終われば万事問題ないけどな」

 オリヴァー・ケラーマンは窓の外を眺め、時折、双眼鏡で遠くの様子を窺っている。

「だが、敵が攻撃してくるとして、本当にカジノなんて襲うのか?」

 シャルル・ポワンカレは、ややこのテロ攻撃の情報には懐疑的だ。

「最初は疑ってかかるのは、我々の原則だが・・・・・だが、これ以上の情報が無いのは確かだ」

 柿崎はノートPCに向かい、キーボードを叩きながら言う。

「それにしても、この前の飛行機の事件の奴らの正体、掴めたか?」

 トリプトンがボソリと言う。

「いや、全く。病院送りになった奴は、搬送中に死んでしまったし、DNA情報も顔写真のデータも、どこ組織のデータベースにも無し。多分、使い捨て要員だろ」

 柿崎が答える。


 4月1日 1802時 ユーロセキュリティ・インターナショナル社


 他の文民職員がどんどん帰っていく中、デンプシーは一人、自分のオフィスで情報を確認していた。まるで、今までの続発テロが嘘のように、ヨーロッパは静まり返ってる。モナコ公国では、裏では引き続き、テロ警戒情報が出ているが、セキュリティ上の理由から、表沙汰にはなっていない。やがて、司令官は目を擦ると、これ以上のオフィスワークを諦め、パソコンの電源を落とし、荷物を纏めた。ここのところ、オフィスでの泊まり込みが続きすぎている。自宅に帰って、ゆっくり休んでもいい頃だ。デンプシーはパソコンの電源を落とし、ホルスターのグロックに弾丸が装填されているのを確認すると、立ち上がり、帰ることにした。


「おや?ここに来るのは何日ぶりですか?」

 正門の警備員が、デンプシーのIDを確認し、訪問者リストを渡した。

「さあな。もう数えるのをやめたよ」

 デンプシーは訪問者リストにサインと退門時間を記入した。

「さっさとシャワーを浴びて、着替えて、飯を食べて、寝た方がいいですよ」

「だな。アドバイスありがとう」

 デンプシーは駐車場に停めてある、自分のハマーへ向かった。


 デンプシーは車のエンジンを始動させ、駐車場から動かした。時折、すれ違う重武装の警備員が敬礼する。帰ったら、まずは風呂に入り、そして、街へ行ってうまいものでも食べよう。デンプシーはそう心に誓った。


 4月1日 1905時 モナコ公国


「つまり、だ。敵さんは、カジノ襲撃を計画している。ということは間違いない。だが、何を考えているのかがわからん。おまけに、その敵さんが何者なのかもわからん」

 ジョン・トラヴィスがピザを口に運びながら言った。

「なんとなくだが・・・・単なる強盗には思えない。何か目的があってここを攻撃するつもりだ。他にもデカいカジノがあるのに、ここを攻撃する意味がわからない」

 マグヌス・リピダルは一番の疑問を口にした。

「デカいカジノだと、警備体制も厳重だろ?わざわざそっちを攻撃するもんかね?」

 山本肇が即座に突っ込みを入れる。

「しかし、俺たちはこれに対してどう動けばいいって言うんだ?」

「ああ・・・・ちょっと待て」

 トリプトンの携帯が鳴った。どうやら、トゥルデが電話をかけてきたらしい。

「もしもし・・・?ええ、そうです。では、そっちにも・・・・はい。では、明日の朝に」

 トリプトンは携帯をポケットにしまうと、顔を上げた。

「明日の朝10時に迎えが来る。行き先は警察署だ」

「やっぱりか」

 ネタニヤフが顔を上げた。

「ああ。さて、どういった情報が回ってくるのやら」

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