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リゾート-1

 4月1日 0817時 モナコ公国


 モナコ公国はフランス南東部、ラ・テュルビーの隣りにある、国連加盟国の中で最小の国だ。この国は、観光産業で成り立っており、またタックスヘイヴンとして、世界中から億万長者が移住していることでも有名だ。年に1度開催されるF1グランプリでは、市街地の一部の公道がサーキットとして封鎖され、この日は20万人近い観客が、小さな都市国家を訪れる。ポート・エルキュルには連日、金持ちをたくさん載せた豪華客船が入港し、バカンスを楽しむ人々をこの国に送り込んでした。


 入国ゲートを通ったバスがバス停に停車し、多くの観光客が降りていった。その中に、大きな荷物を抱えた14人の白人、黒人、アジア人が混ざった、屈強な男たちのグループがいた。彼らは銀色のミラーサングラスで完全に目を隠し、他人から何を見て、何を考えているのかわからないようにしている。時折、彼らの事を奇異なものでも見るような人がいたが、多くの人は彼らのことを全く気にしている様子は無かった。やがて、2人組の警察官が、彼らの近くへと歩いていった。

「ムッシュ・ハワード・トリプトンとムッシュ・イチロー・カキザキですか?」

 警察官はその男たちのグループの中の、黒人とアジア人の1人に話しかけた。

「ええ。そうです」

「アンリ・トゥルデ警部です。モナコへようこそ。彼は相棒のアベル・シャモン警部補です」

 トゥルデは背が低いが、がっしりとしたレスラーのような男だ。一方、シャモンの方は、スラリと細いが筋肉質の、陸上選手のような体格をしている。

「どうも」

 トリプトンらは、彼らと握手を交わし、警部たちの案内で警察署へと歩いてった。

「あなた方の装備は、既に外交行嚢で警察署に届いています。それにしても、何故、クウェートの王族一行がターゲットになったのかは、我々でも答えを出していないところです」

 実は、現在、クウェートの第2王子とその一行が、この国に休暇で訪れるているのだ。ここ数日、彼らには脅迫と思しき手紙やメールが執拗に届いており、SPは警備を強化していた。その上で、先日のモナコ攻撃計画が発覚している状況だ。関連性は不明だが、モナコ警察は同一犯の可能性で捜査を続けている。しかし、テロ攻撃とVIPの護衛の両方をこなせないのが現状だ。そこで、ユーロセキュリティ・インターナショナル社にテロ攻撃への対処を依頼したのだ。


 この小さな都市国家の警察署は小規模で、たいていの業務は交通整理、苦情処理、遺失物の保管など、どの国の警察でも日常的にやっているようなもので、テロ対策部隊のようなものはフランスの国家憲兵隊介入群(GIGN)が肩代わりをしている。しかし、現在、フランスとしても自国のテロ対処を優先させるため、GIGNは一部の後方支援部隊と連絡班を除き、フランス国内へ戻していた。そこで、モナコは"ブラックスコーピオン"にテロ対策を依頼したのだ。

「滞在中はこのアパートを使ってください。必要な物は連絡してもらえれば、すぐに用意します。食べ物、日用品。ただ、武器弾薬は用意まで多少は時間がかかります」

「わかりました。必要になりそうになったら、早めに連絡しましょう」

 トゥルデはトリプトンに書類の入ったA4サイズの封筒を渡した。トリプトンが封筒を開けると、アパートの住所と外観の写真、緊急時の連絡先が記載された書類が入っていた。どうやら、暫くはここが自分たちの本拠地になりそうだ。


 4月1日 1208時 モナコ公国


 トリプトンたちは装備を貸しアパートに運び込んだ。今回の武器は市街地での戦闘になることを考え、メインにH&K UMP-9。サブにはシグザウエルP228を選んだ。他にはスタングレネード、テーザーガン、CSガススプレー、ブラックマリーンのコンバットナイフを個人携行する。また、トリプトンとパーカーはサブマシンガンの代わりにソウドオフしたM870MCSを近接戦闘用に用意していた。モナコとフランス政府から発行された、警備会社社員向け武器携帯許可証も忘れない。この任務では、隠し持てる武器が必要だった。

「この時期で良かったぜ。夏のクソ暑い時にこんなコートを着ていたら、見るからに怪しいからな」

 パーカーはカーキ色のコートでスリングで吊った散弾銃を完全に隠しているのを鏡で確認して言った。予備の弾は内側のポケットに入れておいていある。

「で、これからは何をするんだ。武器を持ってバカンスというわけにはいかんだろ」と、柿崎。

「俺たちの任務は警備だ。ちょっと周りの様子を見に行ってもいいだろ。それに、警備をするならこのあたりの状況を確認したほうがいいし、物資の調達もしないとな」

「ううむ。だが、誰かがここに残ったほうがいいな。一応は、作戦上の拠点だし・・・・・」

「最低でも2人はここに残そう。さて、まずは食料と日用品を買いに行こう」

「うむ。で、まずは誰が行く?」

「ハワードと俺が残ろう。後のみんなで行けばいい。買わなきゃならないものも多いし」

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