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火中の栗を拾う

 3月20日 マリ プレム郊外 2326時


 まだ目立った動きはないな、とサコーTRG-41の上に取り付けられた、リューポルド&スティーヴンズ社製Mk4-LRT-M3-TMRという狙撃スコープ越しに現場の様子を見たポワンカレは思った。ここから現場はだいたい750メートルで、この距離であればこのスコープでも事足りる。一方、他のメンバーが持つM-110にはもっと低倍率のサイトロンSIH3-9×40MDというものを取り付けている。しかし、ずっとスコープ越しに見ているわけではなく、基本的には首から下げたシュタイナーの双眼鏡での監視となった。

「こちら、ライフル・アルファ1、敵の見張りを4人確認。他に動きは無い」

 ミュラーが無線で状況を知らせる。少し離れた所でネタニヤフは双眼鏡で探った現場の地形、敵の動きなどを野帳に書き込んでいた。

『了解だ。こっちは敵の見張りは3人確認した。武器はどれもカラシニコフかそのコピー品を持っている。マリ陸軍の部隊はFN-FALか。接近戦になったら、有利なのは向こうだな。ん?あいつが持っているのは何だ?』

 無線から聞こえるネタニヤフの声が、少し裏返った?

「どうした?」

 ミュラーが返す。

『油田の東側にいる敵だ。妙なものを持っているようだ。こっちからはよく見えない。そっちからは?』

「ネガティブ。ライフル・アルファ2に確認させよう」


 マグヌス・リピダルは頭を振った。どうして奴らが持っている武器なんて気になるんだ?だいたい、小火器であれば、どれに撃たれたって同じである。だが、ミュラーによると、どうもそれは自動小銃や機関銃の類ではないそうだ。

「どれどれ・・・・RPGでは無さそうだな。こいつは何なんだ?」

「こいつはRPOだ。最悪だ。もしこれが燃料気化弾頭なら、俺達は全員、丸焼きだな」

 ケラーマンは唸った。最大射程はRPOの最大射程は1000mなので、こちらには楽々と届く。

「くそう。それにしても、どうしてこんな辺鄙な所にある油田の占拠事件がNATOと関係があるんだ?」

リピダルには、どうしてもそれが腑に落ちなかった。

「NATOからしてみたら、加盟各国が国ぐるみで莫大な投資をしている油田施設を失う訳にはいかないからな。だから、俺達が選ばれたのさ」

 

 3月20日 ドイツ ユーロセキュリティ・インターナショナル社 2331時


「スナイパー・チームが位置に付いたようですね。敵さんの方に目立った動きは無し。そろそろ、交代のユーロホークが現場上空にたどり着きます。画像があと、30秒程で・・・・・」

 カート・ロックがデンプシーに説明していると、すぐに映像が切り替わった。

「映像が届いたな。どれどれ・・・・・」

 スクリーンには、油田と包囲しているマリ軍部隊の様子が映し出された。

「あそこにいるのがマリ軍の部隊ですね。我々の部隊は・・・・恐らく、あの少し離れた所にいるあれですね」

「敵は思っているほど散らばってはいないみたいだな。それなら狙撃しやすいと言えばしやすいが・・・・」

「問題は、今回の件は例えデルタやSASでも強行突入は難しい、という点です。勿論、油田にテロリストが爆発物を仕掛けているでしょうし、銃弾が下手な所に当たったら大惨事は免れません」

「ここを占拠するということは、奴らは生きて帰る事は考えていないな。自爆覚悟で、何なら人質も突入部隊も巻き込む腹づもりだ」

「間違いなくそうでしょう。おまけに、リモコン操作でも爆破できるから、ここから撤収した後でも簡単に爆破できる」

「クソッ。しかも、目的は油田施設そのものを手に入れることだから、そこから移動するだなんて全く考えていないだろうな」

「当然です。そうなると、奴らの背後に何者がいるのかが気になりますね。油田を手に入れて、利益を手に入れられるとしたら・・・・」

「そんな人間、世界中どこにでもいるだろう。今も昔も天然資源の権益は儲かるのさ」


 3月20日 マリ プレム郊外 2337時


 マリ陸軍の部隊は突入の計画を練っていた。武器はFN-FALを持ち、弾倉をベルト・パウチに入れているが、人質を巻き込んだり、引火させたりする可能性があるため、発煙・閃光も例外なく手榴弾は携行していない。本来ならGOPLAT装備が必要なのだが、マリ陸軍にそんなものは無かった。そのため、作戦立案は難航していた。消防から耐火服を借りるという案も出たが、熱が篭もる上に動きにくいために却下となった。


 突入準備をしているという情報が傭兵たちの耳にも入った。だが、彼らは成功するとは思えなかった。

「どう思う?」

 山本はトリプトンに訊いた。

「突入は厳しいだろうな。遠くから狙撃するにしても、最初の1発が命中した途端、自爆するか人質を殺し始めるから、テロリスト全員を同時に狙撃して射殺しなきゃならない」

「難しいな。全員同時狙撃なんて訓練でもやったことが無いのが・・・・」

「ああ。理論上は出来なくもないが、訓練していない以上は、まずは無理だろう」

「で、考えられる最悪のシナリオが自爆・・・・と」

「そうだ。それに、どうも臭う」

「何がだ?」

「奴ら、石油利権を全部よこせと要求しただろ?何でわざわざ人質をと利用な真似をしたんだ?もし、油田を手に入れたいのなら、皆殺しにしたほうが手っ取り早いし、後で面倒事にもならない気もするが・・・・」

「なんと厄介な・・・・」

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