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砂漠の夜空

 3月20日 マリ バコマ・セヌー空港 2214時


 ここ数ヶ月、殆ど使われた試しのないこの滑走路にC-160輸送機が着陸した。それに続いて、G-650ビジネスジェットが着陸する。エプロンへとタキシングして、エンジンが止まり次第、傭兵たちは準備に取り掛かった。マリ陸軍の兵士が既に出迎えに来ており、トリプトンらに状況の説明を行った。ここから油田までの間に、陸軍がヘリの給油地点を設営しているようだ。既に現場の半径約50kmは軍の機甲部隊が封鎖して、誰も接近出来ないようにしているらしい。突入の計画は練っているが、経験が不足しているのか、なかなか思うような計画が練られないらしい。トリプトンは旧宗主国のフランス軍に頼んでみてはと提案したが、そもそも、最初に助けを求めた国がフランスであったが、支援を却下されたそうだ。


 輸送機から引っ張りだされたHH-60Gに燃料が入れられる。出発まで暫くかかるため、再度作戦計画を練ることにした。

「ヘリである程度までは進出できるが、あまり近づき過ぎると奴らに気づかれる。よって、ヘリが飛んでいけるのは現場から7km程のところまでだ。そこにマリ陸軍がヘリの補給・整備拠点を作っている」

 トリプトンが説明を開始した。

「そこからは、残念ながら陸路になる。現場から800メートル離れた場所で狙撃陣地を造る。338ラプア・マグナムなら十分な射程距離だろう。計画通り、それぞれのチームで2人が狙撃を担当し、他は周辺警戒。マリ陸軍の兵士か警察官以外の武装した人間は、基本的に脅威とみなせ。現場は一応、封鎖されているが、民間人に注意しろ。突入が始まったら、敵を一人一人排除していけ。くれぐれも誤射はしないように。ようし、今回使う弾は・・・・」

 トリプトンは2つの弾薬箱を開いてみせた。338ラプア・マグナムと7.62ミリNATO弾が並んでいる。パッと見た目は普通の弾丸に見えるが、少し違う点がある。真鍮の被覆が先端部で剥がされて、鉛がむき出しになっている。

「ソフトポイント弾だ。テロリストを撃ちぬいた弾が貫通して、突入部隊や人質に当たるのは避けなきゃならん」

 そこへ、マリ陸軍のフィリップ・ヌベベ大佐がやって来た。彼はマリ陸軍の特殊部隊隊長で、今回の人質救出作戦の指揮を取っている。

「ミスター・トリプトン、ご支援感謝します。我々だけでは、このような事態には対処する能力には限界がありまして・・・・」

 マリ陸軍は、基本的には旧宗主国であるフランス軍から訓練を受けている。しかし、本格的なテロに対してどこまで実力を発揮できるかどうかは未知数だった。


 3月20日 マリ プレム郊外 2219時


 テロリストはまだ拘束している人質を殺してはいなかったが、襲撃の時に死亡した警備員の死体が地面に転がっている。テロリストは死亡した警備員からも銃を鹵獲し、武装を強化していた。人質は1箇所に集められ、目隠しをされている。先程、記者会見を見たが、どうやら向こうには金を払う気は無いらしい。そこで、4人、人質を処刑することにした。現地の作業員を3人と本社から来たと思われる白人1人を並ばせると、AK-74で一人一人の頭を撃ち抜き、更にその様子をビデオで録画していた。そして、録画していたテロリストはビデオカメラからSDカード引き抜くと、仲間の1人に「これを送りつけろ」と命じた。


 ジープが1台、油田から離れていく。そして、速度を上げて砂漠の地平線の向こうへと走り去っていった。


 3月20日 マリ バコマ・セヌー空港 2234時


 HH-60Gが離陸し、砂漠へと飛び去っていった。ここから一度、補給地点で給油した後、現場近くで地上部隊を降ろす予定だ。暗視ゴーグルはバッテリー節約のために、ヘリでの移動中はパイロット以外は使わなかったため、外を見回しても真っ暗であるため、GPSを利用して飛行した。もっとも、現場までは昼間であっても目印になるようなものの無い、広大な砂漠であったため、そこまで変わらなかったであろう。


 3月20日 マリ 砂漠 2241時


 パーカーはヘリの窓から外を見てみた。何も明かりは無く、暗視ゴーグルを使って様子を見てみたかったが、バッテリーを節約しなければならなかったため、それは諦めた。だが、コックピットの方を見てみると、MFDにGPS地図が表示されていたため、なんとか、ある程度は自分たちがどこにいるのかを把握することが出来た。

「テロリストだけじゃなく、ライオンやチーターにも注意しろ。これは冗談で言っている訳じゃないぞ」

 ケラーマンのこの警告は、確かに冗談のように聞こえるが、実際、アフリカでは猛獣に人間が襲われて命を落とすという事は起きている。

「クソッ、それから毒蛇やサソリなんかにも注意しないとな。血清は持ってきたか?」

キュルマリクは心配そうに言った。

「大丈夫だ。ええーと、これだこれだ。コブラ用、マムシ用、その他諸々・・・・」

ケラーマンはバッグパックの中から、注射器が並んだ箱を取り出して見せた。

「それなら問題なさそうだな」

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