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追撃戦-1

 3月14日 1114時 マルタ バレッタ市


 マルタ軍と"ブラックスコーピオン"合同部隊とテロリストとの銃撃戦は続いていた。警察は後方支援と負傷した市民の救護活動を優先し、後方に下がっていた。市内のあらゆる所に規制線が張られ、そのすぐ外でマスコミの中継車やカメラが待機している。ヨーロッパで化学兵器テロが起きたのは史上初のことで、しかも複数の種類の毒ガスが使用されたことも有り、とんでも無い騒ぎになっていた。ニュース番組では、もう20年以上も前に東京で発生した化学兵器テロを引き合いに出していたが、その時は銃撃戦が起きるようなことは無かった。


 "ブラックスコーピオン"は二手に分かれてテロリストを挟み撃ちにする作戦に出た。αチームは市内の東側に回りこんで迎え撃ち、βチームはそのまま追撃を続けた。

「これならSUVを持ち込むんだった。ところでヘリは奴らを追跡してくれているのか?」

 トラヴィスがボソリと言う。

『バッチリ見えてるぜ。だが、ミニガンを使っちまうとお前らや他の警官までミンチにしちまうから撃てないだけさ』

 パークスが無線で答える。

「なら問題ないな。この調子で頼む。あと燃料は大丈夫なのか?」

『あと4時間は飛んでいられる。3時前までに奴らを捕まえられなかったら、一旦空港で補給しないとな。頼んだぜ』

「ああ、通信終了」

『通信終了』

「で、どうだって?」

 ケラーマンが訊く。

「4時間は上で見てくれるみたいだ。それまでに奴らを捕まえないとな」

「全く、ドツボに嵌っちまったな。こりゃ報酬上乗せしてくれないと釣り合わないぜ。おまけに、テロリストを倒すか捕まえるかしても、街の除染もしなきゃならん。マスタードはしつこいからな。放っといたらいつまでたっても残ってる」

「ええい。早くなんとかしないとな。それから、できれば1,2人くらいは捕らえたいな。奴らが何者なのかを知る必要がある」

「敵だ、2時の方向!」

 ファルコーネがサブマシンガンの銃口を上げた。すると、前方にいた集団がAKの銃口をこちらに向けてくる。

「クソっ!隠れろ!」

 傭兵たちは一斉に路上駐車しているトラックやビルの後ろに隠れた。7.62mm弾が建物の壁や道路のコンクリートを削る。

「フラッシュバン!」

 キュルマリクがM84スタングレネードを投げて牽制しようとした。街中でフラググレネードは市民を巻き添えにする危険性が高いため。どうしても使うことは出来ない。凄まじい閃光と爆発音が響き渡る。最後尾にいたテロリストがその衝撃でよろめく。リピダルはその隙を見逃さず、3点射を顔面に撃ち込んだ。だが、敵は怯むこと無く、銃口をこちらに向けようとする。テロリストがフルオートでAKを撃った。だが、傭兵たちは物陰に隠れて、なんとか銃撃をしのいだ。


 一方、βチームは銃撃戦には巻き込まれずに進んだ。時折、外を歩いている市民を見かけたため、すぐに建物の中に入るように合図した。


 3月14日 1119時 マルタ 首相官邸


 レネ・ルピアッジョ首相はニュース中継を見ていた。負傷した警官や市民を軍が救助している一方で、PMCの隊員がテロリストを追いかけている。

「国防大臣を呼んでくれ。それから、警察長官も。この事態を打破したら、軍と警察に国内テロに対処するための、緊急展開部隊を設立させよう」

「わかりました。訓練はどこに頼みますか?」

「イギリスかイスラエルを候補にしている。ところで、市民の避難はどうなっている?」

「完了しました。建物の中から出ないように呼びかけ、少しでも体調の異常を感じた場合は、警察官または軍の兵士に知らせるように伝えます」

「うむ。だが、くれぐれも近くの病院には行かせないように」

「了解です。では、軍に命じて、救護所を設置させ、傷病者はそこで治療します」

「うむ。急いでな」


 3月14日 1131時 マルタ バレッタ市


 スチュアートの放った弾丸がテロリストの頭を直撃した。段々とテロリストは傭兵に包囲され始め、逃げ道が無くなってきた。だが、こうなった時が一番危険である。何を始めるかがわからない。可能性として考えられるのは、市民を巻き込んでの自爆だ。だから、そうなる前に排除しておく必要がある。

「できれば、あいつの死体をすぐに調べたい」

 スチュアートが隣で応戦しているリピダルに話しかけた。

「ん?どうしてだ?」

「持ち物。特に運転免許証かパスポートをだな」

「それは警察の仕事だろ」

「それともう一つ。何か隠していないかと思ってね」

「どういうことだ?」

「これだけの事をやった奴らだ。多分、まだ次の手を隠し持っているだろう」

「なるほど、ただじゃ死なない、ということか」

「そうそう。おおっ、なんてこった!これは・・・・」

 テロリストのセーターをめくり上げると、なんと白燐手榴弾が数個、テープで貼り付けられている。しかも、全てのピンに紐が括りつけられ、それらを束ねた部分を引くだけで起爆状態になるようになっていた。

「クソッ、こいつら、タイミングを見て自爆する気だな。急いで軍と警察に知らせないと!」

 リピダルは無線機のスイッチを入れた。

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