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Air Raid-2

 3月14日 1052時 バレッタ市内


 ハインドとペイブホークのドッグファイトは続いていた。しかし、攻撃ヘリ相手に救難ヘリでは非常に分が悪い。なので、ペイブホークは建物の陰に隠れつつ、敵の姿が見えた時に銃撃してすぐにまた隠れる、といった戦法を取らざるをえない。胴体には防弾板を追加装備させているが、それでも限界がある。

「畜生!これじゃ負けるのは目に見えている!どうにかしないと!」

 パークスは操縦桿をスロットルレバーを巧みに操り、敵の攻撃を避ける。

「おい、奴の真上に出られないか?」

 リースが訊く。

「どうするんだ?撃ち落とすのか?」

「ああ。一気に上昇してくれ。そして、川か海の真上に誘い出してくれ。市街地に奴を落とす訳にはいかない」

リースはファストロープに使う長く太い、頑丈なケブラーのロープを取り出した。


 ペイブホークは降下しながらスピードを上げ、海上に出た。ハインドが後ろから機銃を撃ちながら追ってくる。パークスは巧みな操縦で敵の攻撃を避け、海岸を目指した。


 3月14日 1102時 マルタ バレッタ 海岸


 海岸ではテロ事件が起きた事を思わせないほど賑わっていた。バカンスに来た観光客が呑気に釣りやマリンスポーツを楽しんでした。地中海特有の温暖な気候は、この時期のヨーロッパでは考えられない状態だった。だが、そんな平和な時間もあっという間に打ち破られた。突然、2機のヘリが機銃を撃ちながら飛んできた。人々は悲鳴を上げて逃げ出した。焼けた薬莢が空から降ってきて、それに当たった数人の観光客が火傷を負った。しかし、ヘリの戦いを見る観光客の反応は様々だった。多くの人間が走り去ったが、中にはカメラを取り出して、その様子を写真に撮ろうとする者まで現れた。


「ようし、洋上に出たぞ!何をするんだ?」

 パークスが後ろのクルーチーフに再度訊いた。

「奴の真上に出てくれ。撃ち落としてやる」

リースはケブラーでできた、ファストロープ用の太いロープの束を抱えて、放り投げる準備をしていた。それを見たパークスは、即座に彼の意図を悟った。

「任せろ!」

 スロットルレバーを全開にすると、ヘリを一気に急上昇させた。リースはキャビンのドアを開けると、真下にハインドのメインローターがあるのを確認した。

「そうれ、FOX2だ!」

 リースは戦闘機のパイロットが空対空ミサイルを発射したことを知らせる符号を叫んでロープを放り投げた。真っ直ぐにハインドのメインローター目掛けて落ちていく。


 ロープは見事にハインドのメインローターに絡まった。ギアとトランスミッターが破壊され、ハインドが錐揉み状態になり、地中海に水柱を派手に立てて激突した。

「1機撃墜!」

 リースは周囲を見渡して、他のヘリを探した。どうやら、警察のヘリと自分たち以外のヘリは1機も飛んでいないようだ。

「他のヘリはいないみたいだ。だが、また飛んでくるかもしれないから油断するなよ」

「それにしても・・・・何で奴らはハインドなんて持っていたんだ?」

 パークスが最大の問題を口にした。

「そりゃあ、今やブラックマーケットに旧ソ連製の兵器なんていくらでも流れているさ。ちょっとコネとカネさえあれば・・・」

「言われてみりゃそうだな。だが、後で調べる必要がありそうだな・・・・」


 3月14日 1111時 マルタ バレッタ市


 テロリストの乗ったMi-8は後部キャビンを開き、ドラム缶を転がしながら落とした。ドラム缶は地面に衝突すると破裂して、中から刺激臭のする薄っすらと黄色味のかかった煙が漏れ出てきた。


 そのすぐ近くにいた警官はニンニクとも硫黄とも付かない匂いに顔をしかめた。しかし、すぐに目にと喉、皮膚に焼け付くような激しい痛みを感じ、その場でのたうち回った。


 軍の部隊はNBC防護装備を持っていたが、警察官は持っていなかったため後退を余儀なくされた。しかも、警官の何人かが不用意に汚染地域に入ってしまったため、更に被害は拡大した。

「くそっ、どうしたらいいんだ?テロリストは排除しなきゃならんし、除染もしなきゃならん」

 そこにガスマスク姿でM16を持った軍の部隊がやって来た。

「どうだ?状況は?」

「これ以上は近づけない。硫黄かニンニクみたいな匂いの毒ガスがばらまかれて、触れた仲間が火傷を負った」

「マスタードガスか。後で街中を洗い流さないとな」

「なんてこった。どうするんだ?」

「通りを次亜塩素酸ナトリウムや水で洗い流す。できることはそれしか無いな。次亜塩素酸って軍に備蓄があったかな?無ければ、NATOを通して取り寄せてもらうか」

「それなら、急いで手に入れなきゃならん。本部に連絡して、すぐに取り寄せてもらおう」

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