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最初の戦い

 3月5日 2108時 デンマーク


 βチームは地面に這いつくばった。頭上を銃弾が途切れること無く飛んでいるため、頭を上げることができない

「こちらβチーム!攻撃を受けている!クソッ、敵はそっちにもいるかもしれん!気をつけろ!」

攻撃されている最中、トラヴィスは無線で仲間に警告を送った。

「敵、10時方向!」

 キュルマリクが草むらの向こうに人影を見つけて、サブマシンガンで応戦する。MP-5SDからは機関部が動くカチッカチッという音と、飛び出した薬莢が空を切る音が微かに聞こえた。銃弾が木の幹にめり込んで、時折、顔にその破片が当たる。スタングレネードを使いたかったが、暗視ゴーグルを使っているため、投げることが出来ない。

「奴らが逃げるぞ!追え!追え!」

パーカーが叫ぶ。敵はAKと思しき銃を撃ちながら後退していった。

「敵が北の方へ逃走!繰り替えす!敵は北側へ逃走!自動小銃で武装している!」

『了解だ。追跡する!』

トリプトンが返事をしたが、パーカーにはしっかりと聞き取っている余裕は無かった。


 αチームはまだ交戦していなかったが、βチームの救援に向かうことにした。

「ブルース、座標を送ってくれ。援護する」

トリプトンが無線で指示を出す。

『了解だ。GPSにビーコン信号を設定した。見てくれ』

バーキンがGPSの画面を見た。青い点が北に向かって動いている。

「座標を確認した。追跡するから、それまで持ちこたえてくれ」

『無茶言うな!そっちが急いでくれ!』


「クソッ、甘かったな。今度からはもっと重武装で出かけないと」

 トリプトンがぼやく。今回はあくまでも後方支援任務のみと考えていたため、サブマシンガンと拳銃、特殊閃光音響弾(フラッシュバン)だけで済むと思っていたが、これが仇になったようだ。無線機越しにAKの銃声がだけ聞こえる。MP-5SDの減音効果は見事なもので、無線からは全く聞こえない。テロリストの正体は大方、予想が付いた。デンマーク海軍特殊部隊の突入をタンカーにいる仲間に通報した(チクった)奴らだ。恐らく、この森の中に隠れ、ヘリの出動を見て無線で知らせたのだろう。

「ああ、M-14かG-3が欲しいな。このままだとジリ貧だ」


 βチームは敵を追っていたが、最後尾にいたピーター・スチュアートがいきなりテロリストに組み付かれた。彼はこの奇襲を予想していなかったが、なんとか喉元に迫ってきたナイフを避けた。そして、背負投げで敵を地面に倒したが、ナイフの切っ先が頬を切りつけた。

 テロリストは再度突進してきて、スチュアートに切りかかってきた。銃を使う余裕が無かったため、彼は敵の顔面に思いっきり拳を叩き込む。仲間がすぐに格闘戦に気づいて銃を向けた、が、どうしてもスチュアートが射線に入り込んでしまうため、撃つことは出来なかった。テロリストはナイフを逆手に持ち、スチュアートの左目を狙った。しかし、スチュアートが敵の手首を掴み、攻撃を防ぐ。テロリストはナイフを突き立てようとし、傭兵はそれを防ごうとする。筋力が拮抗しているのか、暫くそのまま睨み合いが続いた。だが、そのおかげで、テロリストの周囲への注意が散漫になった。そして、スチュアートの仲間は、その隙を見逃さなかった。オリヴァー・ケラーマンが横からテロリストにタックルを食らわせた。テロリストが倒れ、手からナイフが飛ぶ。スチュアートが再びテロリストを組み伏せ、後ろ手にするとグロックを引き抜いて敵の後頭部に一発送り込んだ。凶悪なブラック・タロン弾を撃ち込まれたテロリストの頭から脳漿と頭蓋骨の破片が飛ぶ。

「助かった。一杯貸しだな」

「ああ。こいつは何者だ?」

 彼らは死体を少し調べた。顔を見た感じ、東南アジアか東アジアの出身者のようだ。肩からスリングでイングラムM-10を下げ、腰のホルスターにはスミス&ウェッソンと思しき自動拳銃が入っている。ナイフはドイツのアイクホルン・ゾーリンゲン社製のようだ。

「ポケットだな。財布かパスポートを持っていないだろうか」

 そう言ってキュルマリクは男の服のありとあらゆるポケットを探ったが、タバコが一箱とライター、そして小銭が幾つか、50ユーロ札と100ユーロ札が数枚出てきただけで、身分を明かすようなものは無かった。

「ううむ。偽造IDすら持っていないとは。DNA情報だけでも手に入れよう。こいつから髪の毛を何本か引き抜いて、袋に入れよう」

パーカーは男の頭から数本、髪の毛を引き抜いて持ってきた小さなプラスチックの袋に入れた。

「おい、これは何だ?」

 ケラーマンはテロリストがカバンを持っているのに気づいた。そこからから何か書類のような物を幾つか取り出した。そして、彼はその内容を読んで愕然となった。

「こいつは大変だ!」


 3月5日 2111時 北海


 タンカーからS-92ヘリが4機、飛んでいった。そのヘリのナンバーは張り紙状態で表示されている。このヘリは、中東の某チャーター会社からリースされたものであったが、借用主であるはずの会社は名前も所在地もデタラメで、その類の事に詳しい人間がちょっと調べたらダミーカンパニーであることはすぐにわかったであろう。ヘリにはテロリストが乗り込み、脱出していった。


 3月5日 2113時 デンマーク コングシュレ海軍基地


「おい。奴ら、逃げていったのか?くそっ!なんて失態だ!核物質を奪われた上に、テロリストをみすみす逃がすとは!」

 シュレーゼンはとうとう怒りを爆発させた。怒号が基地の司令室に響き渡り、各部隊と連絡を取っていた通信兵たちが一斉に振り返る。しかし、そのうちの一人は無線機から流れてくる声を聞いていた。そして、セッドへットを外して「中佐!緊急事態です!」と叫んだ。

「何事だ?」

 ストラウトが振り返る。

「我らが友人が敵のアジトを急襲して、資料を見つけたようです。ここからは、直接聞いたほうがよろしいかと・・・・」

ストラウトがヘッドセットを身につけた。

『ストラウト中佐、トリプトンです。奴らの書類と思しきものを見つけました。それによると・・・・奴らはタンカーから核物質を奪う代わりに時限爆弾を積み込んで、北海油田に突っ込ませるつもりのようです!タンカーがそんな所に突っ込んだら最悪です!』

「なんだと!確かに、核物質は奪われてしまった・・・。クソッ!ところで、テロリストはどうしたんだ?」

『何人か仕留めましたが、逃げられた連中もいます!』

すると、情報部の大尉が駆け込んできた。

「大佐!大変です!」

「どうした?次は何事だ?」

「タンカーがいきなり動き始めました、このまま真っ直ぐ進むと・・・・北海のゴルムフィルド・オイルリグに直撃します!」

「なんてこった!首相に連絡してくれ!」 

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