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夜間演習-2

 7月12日 1943時 ドイツ レッツリンゲン 陸軍戦闘訓練センター


 2機のMH-60Lが森林が点在する陸軍の演習場でホバリングを始めた。ヘリのキャビンが開くと、太い1本のロープが垂れ下がってきた。そのロープを伝って、次々と特殊部隊員が降下してきた。彼らは着地すると同時にサブマシンガンを構え、防御態勢を取った。敵の人数は6人。だが、纏まって行動しているのか、それとも幾つかのグループに分かれているのか、全員がバラバラになって行動しているのかはわからない。だが、やることはいつもと変わらない。敵を排除するだけだ。

 ハワード・トリプトンはUMP-9から弾倉を抜き、ボルトを引いて引き金を引いた。カチッという音が鳴り、銃が正常に作動していることを示す音が聞こえる。ここには、テロリストに扮したユーロセキュリティ・インターナショナル社の教官部隊がペイント弾を装填したサブマシンガンを持って待ち構えているはずだ。

「よし。まずは、計画通りに行動する。基本的には、αとβに分かれて行動。定期的に無線で連絡を取る。"敵"を見つけた場合は、即排除すること。敵は訓練されたプロのテロリストだ。油断するな。所々に罠が仕掛けられている可能性も高い。足元と頭上に気をつけろ。逮捕されてから逃げ出したから、武器は看守から奪った拳銃程度だろうが、気を抜くな。行くぞ」


 テロリストを演じるユーロセキュロティ・インターナショナル社の教官たちが、手にしたMP-5A4と腰のホルスターに収めたグロック19を確認した。訓練なので、装填されているのはFX弾と呼ばれる訓練用ペイント弾だ。

「装備をチェックしろ。俺たちは、今日は逃走中のテロリストだ。但し、逃げ回って良いのは演習場の中だけだ。外に出るのは厳禁。安全手順はブリーフィング通り。訓練生を見つけたら、すぐにぶっ放さず、行動を確認しろ。以上だ」

「無線機はあっても、暗視ゴーグルは無しか・・・・・・」

「俺たちは、今日は看守の武器をその場で奪って逃げ出したテロリストだ。警察の護送部隊が、暗視装備なんて持っているはず無いだろ」

「それもそうだな。では、行こう」


 7月12日 1948時 ドイツ レッツリンゲン 陸軍戦闘訓練センター


 ブルース・パーカーはβチームのメンバーを率いて、所々林が点在する平原を歩き続けた。実際にはアサルトライフルを使うところだが、訓練用のFX弾を撃つことができないため、9mm口径の銃を使うことになる。そのため、交戦距離がお互いに250mも短くなる。他には、刃が柔らかいプラスチックでできた、訓練用のコンバットナイフ、プラスチック手錠も携行している。今回の訓練の交戦規定は、銃撃された場合、頭部か胴体に着弾した場合は死亡判定、それ以外にペイント弾が当たったら、当該箇所が負傷判定となる。この弾丸が開発される前の戦闘訓練では、空砲を撃つことで行われていたが、その場合、途中で『当たった』『外れた』という面で、訓練中にしばしば議論され、この方法に関して軍や警察の中では、疑問の声が上がっていた。だが、FX弾の登場により、撃ち合ったとしても訓練生を殺傷すること無く、より現実的な訓練を行えるようになった。

 "ブラックスコーピオン"のメンバーは、言葉を交わすこと無く、身振り手振りで意思を伝え合い、慎重に進み続けた。2人または3人ずつのグループに分かれ、15メートルずつ間隔を空けて前進している。予め、どのような行動を取るのかは、ブリーフィングでもお互いに知らされていない。なので、かなり実戦的な状況とみることができる。


 ディーター・ミュラーとシャルル・ポワンカレは、隊列の最後尾で警戒しながら移動していった。通常ならば、狙撃ライフルを持って途中で隊列を離れ、敵を狩るのだが、今回はそのようなことは想定していない。それをブリーフィングで聞かされたときは、二人とも少し不満の声を上げたが、FX弾を撃てる銃を使わねばならないため、渋々その決定に従った。

 暗く、木々で視界が遮られている場所もあるため、待ち伏せをするポイントにできそうな場所も幾つか点在している。

「あそこはどうだ?ディーター?」

 正面に、2つの岩が並び、隙間がV字型になっているポイントがあった。

「周りはどうだ?逃げ道になりそうな場所はあるか?」

「よし、見てみよう」

 ポワンカレは、無線のスイッチを押した。

「ハワード、狙撃にちょうど良さそうなポイントを見つけた。これから、そこに隠れて敵を狩る。いいか?」

 無線から2回、カチッカチッ、という音が聞こえてきた。隊長の了承は得た。

「隊長殿はそれでいいとさ」

「わかった。じゃあ、そこで待機しよう。退路を確認し、奴らが通過したら追いかけて狙撃。それで行こう」

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