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 3月5日 1956時 デンマーク 海岸


「"ホークネスト"へこちら"スパロー"、今のところは異常無し。引き続き監視する」

『こちら"ホークネスト"了解。少しでも変な動きがあれば知らせろ。以上だ』

 テロリストの監視所は地面に掘られた穴にあり、落ち葉や枝葉で巧妙に偽装してあった。周囲にはクレイモアやIEDが仕掛けられ、襲撃に備えている。テロリストはこのタンカー乗っ取りをかなり前から計画していたらしい。塹壕の中の大きなビニール袋には、空になったペットボトルや缶詰、レトルト食品の容器が入れられており、何日もここにテロリストが潜んでいたことを表している。先程、デンマーク海軍特殊部隊の侵入を知らせたのも彼らだった。すぐ目の前でヘリがダイバーを海中に降ろしたのを確認すると、無線でタンカーにいる仲間に知らせたのだ。

「クソッ、いつまでこんなことをするんだ?もう何日この穴蔵に篭っているんだ?」

「我慢しろチュロン、あともう少しだ」

「しかし、タンカーを手に入れて、その後はどうするんだ?石油を売りさばくのか?」

「色々取引材料には使えるさ。原油を奪って闇市場で売って金を稼ぐのは勿論だが、北海に全部ぶちまけると脅して、色んな要求ををイギリスやノルウェーの政府に突きつけることもできる」

「ふむ。で、どうして人質をいきなり殺したんだ?まだ生かしておけば、取引材料に出来たんじゃないのか?」

「さあな。ボスの命令だが、どうしてなのかはわからん。まあ、当分は、またコマンド部隊が侵入してくるかどうかを見張るだけさ」


 3月5日 1958時 北海 タンカー


「そう言えば、なぜ他の仲間にプルトニウムの事を知らせない?かなり重要な事のはずだが・・・・・」

「まあ、焦るな。奴らには後で実物を見せてびっくりさせてやるのさ。あまりペラペラ喋るのは利口じゃない」

「ふむ。それで、計画通り仲間とは早ければ日付が変わるまでにには合流か。これからは?」

「あと30分で海岸の見張りとは、無線を完全に封鎖する。天候は?」

「雨雲が近づいてきた。そろそろ降りだす」

「合流の方法は?」

「奴らにはゾディアックのゴムボートを用意させた。GPS無線も用意させているから、こっちで座標を指定する。では、指示があるまで待機していてくれ」


 3月5日 2003時 デンマーク βチーム


「ビンゴ。奴らだ。見ろ」

 暗視ゴーグル越しに、トラヴィスはウージ・サブマシンガンをスリングで肩から下げ、無線機を持った男の姿を確認した。

「で、どうするんだ?いずれは奴を片付けなきゃならんが、いつやるんだ?」

 マグヌス・リピダルが訊く。

「待て・・・・どうやら引き上げるようだ」

「どれどれ・・・本当だ。奴ら、荷物を片付けている」

「どうする?やるか?」

ピーター・スチュアートがMP-5SDのストックを肩付けした。

「まだ待て。奴らを追跡しよう。それから、奴らの写真を撮れ。本部に送信するんだ」

「了解だ」

 トラヴィスはスマホを取り出すと、無音モードでテロリストの写真を撮り、データベースにアップした。


 3月5日 2031時 ユーロセキュリティ・インターナショナル本社


 デンプシーが仮眠からオフィスに戻ると、自分のパソコンにメールが届いているのを確認した。

「ん?何だ?」

 差出人はジョン・トラヴィスで、説明を読むと、デンプシーはその写真の顔をデータベースの検索にかけたが、1件も引っかからなかった。


 3月5日 2039時 デンマーク βチーム


「ううむ。やっぱりな。だが、奴らは、あと少しで始末しなきゃならんぞ」

 トラヴィスは困り顔で言った。

「始末したら、すぐに指紋を採らなきゃな。あと、髪の毛も」

「それは警察の仕事だろ」

「我々が独自にやっても問題ないだろ?」

「確かに、法的には問題は無いが・・・・・」

「おい、見ろよ」

 トラヴィスは前を指さした。テロリストが2人、AK-74と思しき銃とバッグパックを持って出てきた。

「奴ら、移動するな。追跡するぞ」

「了解だ。間隔はどのくらいにする?」

「350メートル。それ以上は近づくな」

「わかった。だが、あそこに他に仲間がいるかもしれん。ちょっと覗いてからでもいいだろう」

「そうだな。ただし、何も触るな。何か仕掛けているかもしれん」

「ああ。足元にも注意しな。置き土産にクレイモアが置かれていないとも限らんからな」


 結局、テロリストの隠れ家はもぬけの殻で、ガムの包み紙1つ残っていなかった。奴らは間違いなくプロだ、とトラヴィスは確信した。

「ここから北西に向かったな。ところで・・・・・」

ケマル・キュルマリクが自分のサブマシンガンを使い、足跡の歩幅を測り始めた。

「人数は二人で間違い無さそうだな。他にここに出入りした人間はいなさそうだ」

「さて、どうする?」

「後は地元警察や軍に任せよう。俺達はあいつらを追跡することだけを考えよう」

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