プロローグ
志村くんと加藤さん。どこにでもいる小学生です。
ごくふつうの二人は、ごくふつうに出会い、ごくふつうに仲良くなって、ごくふつうに遊んでいます。
でも、一つだけ普通と違ったことがあります。
女の子の名は、DQNネームだったのです。
プロローグ
僕には血の繋がらない、妹みたいな女の子がいた。
うちに初めて来た時、その子はチャイムの連打を伴ってやってきた。
ピンポーンピンポーンという音に、はーいと声をあげて母が玄関に出ていく。
がちゃり。母がドアを開けると、ドアの向こうには気持ち悪い笑みを浮かべたお姉さんと、小さな女の子がいた。
「こんにちはぁ。ここん家、たしかうちの姫と同じくらいの女の子いたよね?」
頭の悪そうな声でお姉さんが言う。
「男の子だっけ?まあいいや、うち隣の棟に引っ越してきたんだけど、ここん家の子、うちの姫と仲良くさせたげる」
それだけなら、礼儀のない女の引越しの挨拶に聞こえなくもない。
「あたしこれからダンナとデートなんで、うちの姫が遊び相手になったげるからさ」
母は、困りますと言っていたような気がする。
僕はといえば、まだ幼稚園にも入っていない歳。お友達が増えるのがなんで困るのかは、これっぽっちもわからなかった。
それ以来。ほとんど毎日、その子は僕の家に預けられて、母親はどこかに遊びに行ってしまうようになった。
これから始まるのは、それからの十数年。僕と、妹みたいな女の子との物語。
ことわっておくけど――妹だからといって必ずしも仲がいいわけじゃない。それだけは覚えておいてほしい。