表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/125

新生活開始 3

家の中を見て回り、いくつかある部屋の中から、二階の、陽当たりのいい部屋を自分の部屋に決める。

すると突然その部屋にタンスが出現した。

近づいてそのタンスを見ると、上部分が開き扉になっていて、下部分が四段の引き出しになっている。

開き扉を開けると、数枚のワンピースがかけられていた。

いや、ワンピースにしては丈が少し短いのもある。

ロング丈の服かな?

どうやら色ちがいの物が2着ずつ入っているみたいだ。

次に引き出しを開けてみる。

すると1枚の紙が服の上に置かれていた。

私は紙を手に取り、書かれている文字を読んだ。


『これらはラザルドールの服です。畑仕事や動物の世話などの事柄を考慮し、動きやすい物を入れておきます。貴女の好みではないかもしれませんが、当面は我慢してこれらを着て下さい。ラクロ』

「……我慢だなんて、とんでもないですよラクロさん。どの服も可愛い色じゃないですか」


ほとんどが無地のシンプルな物だが、女の子らしい色の物ばかりだ。

色を組合せてコーディネートを考えるのもまた、楽しそうだな。

あとでラクロさんにお礼の手紙を出さなきゃ。

私は開き扉と引き出しを閉めると、部屋を出て倉庫へ向かった。


倉庫には地図、種、ジョウロ、鍬、鎌、大きな籠、大量のガラス瓶、そして釣竿が置いてあった。

ガラス瓶は、調合で作った液体状のものを入れる為にあるんだろう。

あと、釣竿。

これがあるということは、近くに川でもあるのかな?

でも魚釣りってやった事ないんだよね。

ああでも、お魚食べたくなったらチャレンジしてみるのもいいかな。

魚はさばけるし。

釣竿を見てそんな事を考えながら、私は種とジョウロを手に取り、倉庫を出て畑へ向かった。


耕された場所に穴を開け、種を蒔き、土を戻し、水をかける。

それだけの単純作業は、わりとすぐに終わってしまった。

まだ陽は高い。


「う~ん。……家の回りを散歩がてら、錬金術の材料採取しようかな。ラクロさんによると、草花なら回りに自生してるらしいし……うん、よし、そうしよう」


何しろ、材料がなければ調合が始められない。

私は家に入って倉庫にジョウロをしまうと大きな籠を手に取り、リビングの本棚から調合図鑑を取りだし、再び家の外へと出た。

家を目印に、周囲をぐるっと歩いて回る。

すると基礎中の基礎、中和剤の材料である赤い草、青い草、緑の草、白い草が自生しているのを見つけ、採取する。


「中和剤は必須だけど、植物栄養剤も早めに作りたいなぁ。野菜を1日も早く収穫する為にも……」


そう思った私は、その場に立ち止まって調合図鑑を捲った。


「植物栄養剤、植物栄養剤……あ、あった」


植物栄養剤。

植物の成長を助ける。

材料ー緑の草、蒸留水、緑の中和剤。


「え、これだけ? ……緑の草は採取したし、蒸留水は水があれば作れるし、緑の中和剤も緑の草で作れるから……やった! 作れる!」


早く帰ろう!

……とと、駄目だ、落ち着け私。

帰るのは家の回りを一周して採取できる物を全て採取してからだ。

どこかにまだ採取してない新しい材料があるかもしれないんだし。

見落として作れる物の種類をはばめたら元も子もない。

私は逸る気持ちを抑え、家の回りを一周してから家へと戻った。








家に戻った私は早速調合に取りかかった。

時間短縮(スキップ)スキルを使い、次々とアイテムを作り出していく。

そして気づけば材料がなくなっていた。


「あれ……もう使い切っちゃった?」


そう呟いて後ろを振り返れば、そこには中和剤各種と植物栄養剤の山ができていた。


「え? あれ? ……私いつの間にこんなにたくさん作ったんだっけ……?」


調合に夢中になってて全く気づかなかった……。


「ま、まあ、中和剤はいくらあっても困らないだろうし、植物栄養剤は畑に使えるしね。問題ない問題ない。うん」


とりあえず、今日の調合は終わりにして、これらは倉庫にしまおう。

そういえばお腹すいたなぁ。

片付けたらご飯にしよう。

私は倉庫と調合部屋を何度か往復して、中和剤類と植物栄養剤を倉庫にしまった。


「さぁて、ご飯ご飯~…………え?」


キッチンへ移動した私は冷蔵庫を開けて……フリーズした。

冷蔵庫の中は、空っぽだった。


「……え。え? 何これ? 何で? どうして何も入ってないの? 食材は? 私のご飯は?」


ラ、ラクロさんに手紙……!

そう思ってリビングのテーブルに置いてある便箋を見たところでーー気づいた。

倉庫の、あの釣竿の意味に。

ラクロさんは、後ほど倉庫を確認して下さい、と言っていた。

あれは、この為だったんじゃないだろうか?

つまり、釣竿を見て、魚を釣りに行くように、という事だったんじゃ?

今日のご飯は、魚を釣って食べるようにって……。

……あああ馬鹿!

私の馬鹿!

それに気づかず、調合に没頭しちゃったよ!

と、とにかく、今からでも釣りに行かなきゃ!

早くしないと夕飯まで食べられなくなるよ!

あっ、でも川の場所……は、地図に書いてあるか!

よし、急ごう!

川へ向かって急いで出発~!!

……でも、ラクロさん。

欲を言えば、それならそうと、さっききちんと言っておいて欲しかったよ……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ