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魔窟出現 5

今日一回目の更新です。

今日も楽しく読んで貰えますように。

……大丈夫、落ち着いて。

家の敷地に一歩でも入ったら、即、強制退去させられる。

一回で諦めてはくれないだろうけど、何回も繰り返せば、無駄だとわかって、諦めてくれるはず。

家の敷地にいる限り、私は捕まらない。

大丈夫、大丈夫……。

私は心の中でそう繰り返すと、再び口を開いた。


「……私を捕まえて、どうなさるんでしょう? 何か得があるとは思えませんけど?」

「あるさ! お前の作るアイテムは、どれもすげぇ質がいいって話だからなぁ。どんなにふっかけても買う奴はいるだろうさ。特に魔窟が出た今は荒稼ぎのチャンスだ。お前を捕まえて薬を目一杯作らせて売れば、俺達は何も苦労せず、あっという間に大金持ちってわけだ! ははっ、笑いが止まらねえぜ!」


……ああ、そういう事か……。

『嬢ちゃんは自分で身を守れたほうがいい』というおじさんの言葉を思い出す。

あれは、こういう意味だったんだ。

おじさんにもアイリーン様にも、私は今までどれだけの心配させていたんだろう。


「てわけで、だ。お前にはこれから一生、俺達の金のなる木になって貰うぜ。可愛い可愛い凄腕錬金術士のお嬢ちゃん」


そう言って、彼らは相変わらずにやにやと笑いながら、家に向かって歩いて来る。

……もう少し。

…あと、ちょっと。

今だ!


「強制退去!」


私がそう言い放つと、男達の姿がパッと消える。

そしてその姿は数メートル先に現れた。


「な、何だ!? 何なんだこりゃあ!?」


先頭にいた男は事態が飲み込めてないようで、顔を何度も左右に動かしている。

後ろの男二人も同じようにキョロキョロと辺りを見回していた。


「こ……このガキ! 何しやがった!?」


先頭の男はそう怒鳴ると、再び私の元へと駆けてくる。

……うん、やっぱり一回だけじゃ諦めてくれないね!

なら、諦めるまで繰り返すだけ!!

私を睨み付けながら向かって来る男達を見つめ、私は身構えた。

よし、敷地に入る。

さあもう一度!

そう思って口を開いた、その時。

バンッ!!


「ぐえっ!」

「……え?」


男達は、家と丘との境目で、何かにぶつかったような音を立て、止まった。


「な……何だ!? 透明な壁ができてやがる……!!」


え、壁?


「……くそっ、結界か! このガキ、ふざけた真似してくれるじゃねえか!!」

「結界?」


……え、つまり、何?

一回強制退去させると、その人は結界に阻まれて家の敷地に入れなくなる、って、事……?

……結界なんて、張ってあったんだ……知らなかった。

でもそれなら、この人達はもう何もできない。


「……なら、寝よう。……貴方達も、諦めて帰って下さいね。入れないんなら、捕まえられないんですから、いても無駄でしょう?」


そう言って私はくるりと踵を返した。


「ふ……ふざけんな!! 誰が諦めるか!! 家の敷地に入れねえんなら、他の場所で捕まえるまでだ! お前がたまに街に行く事はわかってんだ! 手下集めて、この丘と街を見張らせて、お前が現れたら、即捕まえてやるからなぁっ!!」

「えっ!?」


嘘、それ困る……!!

ど、どうしよう!?

明日はアイリーン様に会いに、街に行かなきゃならないし……!

ラ、ラクロさんに、相談しよう……!!

私は家に入り、部屋へ戻ると、手紙とペンを手に取った。







ラクロさんに状況を記して助けを求める手紙を出し、しばらく待っていると、机が光った。

……あれ、返事の手紙だけ?

できれば、話をしに来て欲しかったんだけど……忙しい、のかな?

私はラクロさんからの手紙を手に取り、書かれてある内容を読んだ。


『華原さん、状況は理解しました。ですが、申し訳ございません。ラザルドールの住人達とのトラブルに関しては、私は直接関わる事ができないのです。明日一番で、アイリーン・ハイヴェルに助けを求めて下さい。彼女なら全てを良きように取り計らえるでしょう。街の街門までは私が貴女を移動させます。支度ができたら、その事を告げて下さい。すぐにお送りします。……それが今回、私にできる精一杯です。街門についたら、セイル・クレベルにアイリーン・ハイヴェルの屋敷まで護衛を頼んで下さい。一緒に来て欲しいと言えば彼はおおよその事態を察し、同行してくれるでしょう。彼はアイリーン・ハイヴェルのお願いで、街での貴女の安全に気を配っていますからね』

「えっ!?」


何それ!?

そんな事全然知らなかったよ……?

ど、どうりで、街でセイルさんをよく見かけるわけだよ……!

セ、セイルさん、騎士のお仕事は大丈夫なんだろうか?

支障が出てなければいいけど……。

とと、それより今は、ラクロさんの手紙だ。

まだ続きがある。


『それと、今後は護衛を雇う事をお薦めします。貴女が自衛の術を身に付けたとしても、こういう輩が現れた以上、もう一人は危険です。この点も、アイリーン・ハイヴェルに言えば大丈夫でしょう。それではどうかお気をつけて。直接手助けができず、本当に申し訳ございません。ラクロ』

「ラクロさん……」


ラザルドールの住人達とのトラブルには、直接関与できない、かぁ。

それなら……仕方ないよね。


「今日は、もう寝よう……」


私はそう呟いて、ベッドに潜り込んだ。

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