表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/125

動物を買おう! 2

「さて、どの動物を買う?」

「え?」


お昼ご飯を食べ終わり、動物屋の店内へ戻った途端、アーガイルさんがそう尋ねてきた。

突然だった事もあり、私は首を傾げた。

そんな私を見て、アーガイルさんも首を傾げる。


「ん? 今日は動物を買いに来たんだろう?」

「あ、はい。でも、今はまだ、営業時間外、なんですよね?」


お昼休憩をとる為に、1時間お店を閉めていると、さっきアージュは言っていた。

お昼ご飯は食べ終わったけど、営業再開まで、まだ少しだけ時間がある。


「ああ、そういう事か。はは、構わないよ。店を開ければ、途端にまた忙しくなるから、ゆっくりクレハちゃんにつき合えなくなるからな。それに、クレハちゃん、さっきは人が多すぎて動物を見る事も出来なかっただろう?」

「あ……はい」

「またああなるから、今のうちに見て、買ってしまいなさい」

「わ、わかりました。ありがとうございます、アーガイルさん」

「どういたしまして。それで? どの動物を買うんだい?」

「あ、ええと。モオとメエを一頭ずつ。それから……」


あのウサギみたいな子とアルパカみたいな子は、なんていう動物なんだろう?

私は店内を歩いて、まずウサギみたいな子がいるガラスケースの前へ行く。


「この……ラピ、を一匹と、あっちの……えっと、フエ?を一頭です」

「え、そんなにかい? セール中とはいえ、それだけ買うとなると結構いくよ?」

「あ、はい。でも大丈夫です、お金はあります」

「はあ……そうか。ならいいが……う~ん」


アーガイルさんは顎に手をあて、何かを考えるしぐさをした。


「アーガイルさん? どうか、しました?」

「あ、ああ……いや。……聞いていいかな。クレハちゃんが、錬金術士見習いだというのは前に聞いたが……お兄さんは、何をしている人なんだい?」

「……お兄さん……?」


えっと……誰の事だろう?


「ん……? ……お兄さん、だったよな? ほら、初めて店に来た時……ウォンを買った時に一緒にいたろう?」

「……あ!」


ラクロさんの事だ!

そういえば、兄という設定だった!


「そ、そうです! お兄ちゃんです! ……お兄ちゃんは、えっと……」


ラクロさんの職業……困った、何て言おう……?


「……ま、魔法使いです!」

「魔法使い?」

「はい!」


……ラクロさんは、魔法が使えるんだから、これはきっと嘘じゃない。

……嘘じゃ……ない、よね?

……うう、ごめんなさい、アーガイルさん。


「そうか……魔法使いか。……なら、相当腕がいいんだろうなぁ」

「え?」

「だって、それだけの動物が買えるだけのお金を、ぽんとクレハちゃんに渡したんだろう? ならお兄さんは、高額報酬が出る難しいギルド仕事をこなせる、凄腕の魔法使いなんだろうと思ってな」

「……あ……」


そっか……親代わりに養ってる小さな妹に、あっさり大金を持たせる程余裕のある、高給取りだと、そう思われたんだ。

……いや……う~ん……なんか本当、ごめんなさいアーガイルさん……。

全ては設定なんです……。


「……。……まあ、いい。……あまり人様の事を詮索するのは良くないしな! クレハちゃんがいい子なんだから、育ててるお兄さんもきっと悪い人じゃないだろう!」

「え……?」

「モオとメエとラピとフエだな? どの子がいい?」

「あ、はい、えっと~……」


私はラピのいるガラスケースを覗きこんだ。

ガラスケースの中には、薄いピンクの毛のラピと、淡いオレンジの毛のラピが数匹ずついる。

うん、どの子も可愛い。


「ああ、これ、迷うなぁ……」


じっとガラスケースを見ていると、薄いピンクの毛をした子と目が合った。

するとその子はピョンピョンと跳びはねながら、私の目の前に来て、私をじっと見つめた。


「え……」

「おや。どうやらこの子は、クレハちゃんを気に入ったかな?」

「え、私を?」


薄いピンクの毛のラピは、私を見つめたまま動かない。


「……。……あの、この子にします」

「はは、そうだな! これだけじっとアピールされたらそうなるよな! 良かったなラピ、お前さんにしてくれるらしいぞ!」


アーガイルさんはそう言って笑いながらガラスケースを開けた。

すると薄いピンクの毛のラピはすぐにガラスケースから飛び出して来て、私の足に頭を擦り寄せた。

うわぁ、可愛い……!!


「おお……熱烈だな」


思いがけないラピの行動に、さすがのアーガイルさんも苦笑いを浮かべて言った。


「次は、フエかな」


私はラピを抱き上げ、フエのいるガラスケースに移動した。

ガラスケースの中には、白、茶色、そして黒いフエがいた。


「ああ、この子達も可愛い……」


でも、フエはやっぱり白い子かな。

またお金が貯まったら、茶色の子と黒い子も買いたいけど。

あと、淡いオレンジのラピも。

……ああでも、あんまり動物増やすと一人じゃ世話が大変かなぁ。

畑もあるし……う~ん。

……まあ、これに関してはゆっくり考えよう。


「アーガイルさん、白い子をお願いします」

「ああ、わかった」


あとは、モオとメエ。

この子達に関しては、色も模様も、どの子も大差ない。

地球には、牛も羊もそして鶏も、ジャージーとかサフォークとかウコッケイとかもいたけど、ラザルドールではモオもメエもコッコも一種だけらしい。

前にそうアージュが教えてくれた。

ただ、『よーーーく見ると、どの子も少ぉしだけ違うんだよ!』と力説してたっけ。


「クレハ、お待たせ! いい子いた?」


モオのガラスケースに移動すると、アージュとジュジュさんが店にやって来た。

二人は食器の後片付けをしていたのだ。

ご馳走になったのだから私も手伝おうとしたけど、ジュジュさんに遠慮され、アーガイルさんに店に連れ出されたのだった。


「うん。あとはモオとメエだけだよ」

「あっ、モオとメエも買うの? なら、お薦めの子がいるよ!」

「お薦め?」

「うん! えっと、モオはね、あの子! それからメエは、えっと……あ、あの子!」


私はアージュが指差す子を見た。

……えっと……うん、他の子との違いが、わからない……。


「……そ、そっか。アージュのお薦めなら、その子達にしようかな」

「うん、そうしなよ! この子達、絶対お薦めだから!」

「うん。アーガイルさん、お願いします」

「よし、わかった」


アーガイルさんはガラスケースを開けて、モオとメエを出した。


「あの、それと。一度に全員は運べないので、何往復かしますから、その間、預かって戴いていいですか?」

「ああ、そうだな。わかった。売約済みのガラスケースに入れておくよ」

「ありがとうございます。お願いします」


その後、代金を支払った私は動物屋を出て、一度街門をくぐり、そのすぐ横で魔法のじゅうたんを広げ、買った荷物と動物を乗せ、家へ向かって出発する。

わざわざ街門をくぐるのは、身分証を提示して街の出入りを記録して貰う為だ。

2度目に街へ来た、魔法のじゅうたんを初めて使ったあの日、街門を通らず広場に降りたら、あの騎士のお兄さん、セイルさんが走って来て、やんわり怒られたという出来事が、実はある。

街の出入りの記録は、必須らしい。

平謝りしたのは、苦い記憶だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ