第33話 スカウト
「へぇ~…スカウトね…」
「……いつから見てたんや」
光一と深紅は青年を見て胡散臭そうな顔で言った。
「ついさっきだよ? てか、疑ってるようだけどさ…そんなに信用ならないかな?」
「おん」
「神埼。 ……すまんな、どうも俺達の周りが年上だと思いにくい人ばかりが知り合いで疑い深いんだよ」
困ったように笑う先輩にきっぱりと頷く深紅の隣で光一が申し訳なさそうに謝る。
彼らの周りには年上でも子供ぽい奴もおり、同い年なのに子供みたいな小柄な子がいるので、どうも疑い深くなるのだ。
「ああ、高峰さんや九条院さんのことだね。 気持ちはわかるよ」
「なんや、知り合いなんか?」
「いや、案外同じクラスなんじゃないのか?」
二人の会話の内容に当て嵌まる人がいたのか遠い目で見つめてから元の顔に戻して苦笑を浮かべて言うと深紅が質問し、光一は予測していた。
「やで!」
「同感」
みっくーとこうも光一と深紅の発言に同意するように頷いている。
それぞれの反応に若干へこみながらも彼はぷにっこを珍しそうに見てから深紅と光一を見た。
「同じクラスなんだよ。 だから、いつも被害にあうことが多くてね」
「なんというか、コメントしづらいな」
「せやね、わっちらも同じことになりかねないさかい」
先輩の反応に憐れみと同時に同情したくもなる二人。
二年での苦労生はこの先輩なのではないだろうかと思われるほど、不幸な先輩ではなかろうか。
「まあ、雑談はさておき。 そろそろ本題はいっていいかな?」
「せやね、その方がダメージもすくなくてえぇやろ」
「俺もそう思う」
気をとりなおした様子の先輩を見て頷く光一と深紅に気をよくして笑みを浮かべた。
「それで……単刀直入にいうけど、君たちさ。 ライフル射撃部に入らない?」
「ほんまに単刀直入やな」
「いっそすがすがしいほどにな」
にこにこ笑顔で先輩が言うと若干引きながらも苦笑を浮かべる二人。
こうとみっくーも若干引いているようだ。
「それが僕のポリシーだからね! んで、どうかな? できれば入部してほしいんだよね」
「ちゃちなポリシーやね。 ん~…どないする?」
「そうだな……俺達がその部にはいってもメリットはあるのか?」
自身まんまに言う彼に呆れつつ深紅が光一に尋ねると光一は顎に手を当てて考え込みながら先輩を見た。
「そうだね……ライフル射撃部の練習場だけじゃなくてここも自由に使えるなんてのはどうかな? 君たちには悪くないことだと思うんだけど」
「へぇ……悪くないで」
「そうだな…」
先輩がニヤリと笑い提案すると深紅は目を細めてつぶやき、光一も悪くないといったふうな笑みだ。
それでもまだ悩んでいるようにも見える。
「後、はいってくれるなら……弾薬補充もつけてあげるよ」
「おいおい、いいのかい? そんな大サービスして」
「せやで、こちらにはよくてもデメリットが大きすぎやで」
笑顔の先輩に驚愕した様子で光一が見つめて言うと深紅も同じなのか驚いて目を見開いている。
「いいんだよ、君たちみたいな才能ある子に出会えて僕も嬉しいしね」
「あんたはそれでえぇかもしれんけど、顧問が文句いうんじゃないかえ?」
微笑んで言う彼にじと目で深紅が告げると
「あれ、心配してくれるの? 大丈夫だよ、顧問の先生も許可してくれるから」
「なにをそんな根拠もって言えるんだ?」
驚いていたが、嬉しそうに笑って言った彼に光一が目を細めて問いかける。
「顧問の先生は学年主任の知り合いだから、かな?」
「ああ、あの先生のですか」
「それなら納得やね」
にっこりと笑う先輩が述べた人に心あたりがある二人は納得していた。
「ここまでされて、拒否するわけにもいかねーか」
「せやね、譲歩された以上はライフル射撃部に入るで」
「本当に? ありがとう!」
あまりの熱心な先輩の勢いにおされて深紅と光一はライフル射撃部に入ることにした。
それを聞いて嬉しそうに笑い、彼らの手をつかみ勢いよくゆらして感謝された。
もちろん、こうもみっくーもなぜか感謝された。
なぜかは不明である。
「あ、自己紹介が遅れたね。 僕の名は犬神健二。 君たちより一つ年上になるよ
これからよろしくね、えーと」
「俺の名前は久遠光一です。 こちらこそよろしく」
「わっちは神埼深紅や。 よろしゅうな、先輩」
ふと、自己紹介してないことに気づいて笑顔で告げると光一と深紅も自己紹介をして握手を交わした。
この後、光一達は先輩につれられてライフル射撃部の様子を見に行くことなったのだ。
雅達がいる職員室では…
「ん~、じゃあ…僕はこの料理部の顧問になろっかな♪」
「大丈夫なのか? 学年主任も兼任してるのによ」
希望アンケートを見ながら職員室の椅子に座って笑う雅に陵が呆れた様子で見つめて問いかける。
「黒き勇者なら、どれもあっさりとさばききるから大丈夫だろ?」
「そうですね、悠先生でもあっさりとさばきますし」
「にゃはは♪ 私達もうまくすれば兼任しても問題ないしね~」
話を聞いていた悠が二人を見て言うと凛と風も同じ考えのようである。
ちなみに、全員希望部活アンケートのプリントを見て会話をしているのだ。
「ねえ、ところで…みんなはどうするの? 早めに決めないといけないってことだったから」
雅がにこにこ笑顔で問いかけると
「うーん……俺様は保健医だな。 そこならカウセリングもできるだろうし」
「そこで医薬品とか作るなよ? あー…俺は特に決めてないな」
「…私も特には」
「にゃはは、私も~♪」
陵達がそれぞれ問いに答える。
その様子を雅は相変わらずだなぁと満面の笑みで見つめていた。
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