第3話 サウ゛ェッヂ
しばらく歩くと、サウ゛ェッヂと呼ばれる僕らの集落がある。サウ゛ェッヂ(savage)とは、野蛮なという意味だ。街の人間は、僕らの事をそう呼ぶのだ。奴らにしてみれば薄汚い僕らなど、街を荒らす悪い害虫だ。
ガラクタの山の中に囲まれた集落は、個々が作った家がある。家と言っても、雨露をしのぐ程度の粗末なものだ。多くは、布の切れ端を集め、一本の支柱を立てた上にそれを被せて布を張る。そうすると、簡単なテントが出来るのだ。器用な奴なら、ガラクタを繋ぎ合わせたりして、家の形の物を作ってしまう。だが、あいにく僕にそんな器用さはなく、多くの中の一人だ。
「よう、クロ。今日は珍しく、べっぴんさん連れてるじゃねぇか。おめぇもなかなかやるなぁ」
自分のテントへと入ろうとすると、近くに居を構える赤鼻の爺さんが言った。
べっぴん?僕は後ろを振り向いた。サラサラな長い髪を風に揺らしながら、彼女は立っていた。
「望んだ事をしてくれるんじゃなかったの?」
僕は怪訝そうな顔をし、佇む彼女に言った。
「あんなの御礼をした事にはならないじゃない」
と、彼女は不満げに言う。どうやら、厄介なものにとり憑かれたようだ。
僕は手探りで、テントの中に積んであった焚火用の薪を取り出し、マッチを擦ってそれに火をつけた。火は赤々と燃え出し、僕のテントを照らす。
そして、次にボロ布を取り出すと、生活用水場へと向かった。集落のすぐ脇にある生活用水場は、雨水が貯まった池だ。この場所は雨が降ると、ちょうど水が貯まりやすい条件に整っているのだ。僕はズボンの裾を捲くり上げ、上に着ていたシャツを脱いだ。池の中に入り、水を浴びる。水は冷たく、肌を刺す。
「こんな処まで着いて来てどうしようっていうんだ?しかも、人の水浴びなんかにまで」
今まで無視していた女に声をかけた。