第16話 好きだから
僕は今までとは違う何かに怯えていた。僕は青ざめた顔で、自分の場所へと戻った。
「お帰り」
と、ほたるは僕を笑顔で迎えた。
僕に光の粒が降りかかる。
初めて会った時には恐ろしく思えた光なのに、僕はその光にしがみつくように彼女を抱きしめた。
彼女の体は小さくて、僕が強く抱きしめると壊れてしまいそうな気がした。でも彼女は、僕を強く抱きしめ返してくれた。
彼女は囁くように言った。
「大丈夫だよ。クロ」
彼女は、僕の事を何でも見透かしているようだった。
彼女の光が僕へと差し込み、僕の闇を壊す。優しく、ささやかな光で…。
僕達は、一緒にいる事が当たり前になった。
それがいけなかった。
僕の中には今でにない不安ができた。
彼女がいなくなる事に耐えられない自分がいた。
彼女無しでは生きていけない。
今まで独りで生きてきた僕にとって、それは恐ろしい事だった。
彼女がいなくなったら、自分が壊れてしまうんじゃないかという不安が僕に押し寄せる。
彼女を想えば想うほど愛しく感じて、それでいて不安は僕の心を締め付ける。時々苦しくて、彼女をまともに見れなくなる。だけど、そんな事を知らない彼女は、いつも僕に溢れ出る光を降り注ぎ続けてくれる。
僕はいつしか、そんな彼女と距離を置くようになった。
「最近、嬢ちゃんと一緒に居ねぇなあ。それに、ここにもあんまり帰って来てねぇみたいじゃねぇか」
赤鼻の爺さんは、相変わらず酒臭い息を吐きながら、久しぶりに集落へと帰って来た僕に話しかけてきた。
「そうかな?」
僕は、素っ気なく答えた。