第15話 異変
現代の銃は、あらゆる機器から出る電磁波によって、たまに誤作動を起こすのだ。
そんなのが、暗殺に適しているわけがない。だから僕は、旧式型を使うようにしているのだ。
これも生きる為に得た知識だ。
引き金を躊躇いもなく、ターゲットの頭に向けて引いた。
パーン
いつものように、うまくいった。
ボディガード達は慌てて、辺りを見回す。僕は銃を懐にしまい、何食わぬ顔で表へと出る。
「畜生!!誰だ!!」
「何処から」
ボディガード達は騒いでいるが、何かそれ以上の事をする様子はなかった。
この街で殺しなんてのは、日常茶飯事。野次馬もたいしてはいない。
僕は数人の野次馬の中へと入って、ターゲットの死体を眺めた。
男の後頭部から流れ出る赤黒い血が地面を染めていた。
しばらくすると他の車がやって来て男の死体を車に乗せ、ボディガード達も死んだ男の車に乗り込むと、その場を去って行った。
後に残ったのは、ここで一人の男が死んだという証。
野次馬が皆掃けた後、僕はしゃがみ込み、男が流した血に手を触れた。それは、生暖かかった。
今さっきまで、男の体内に流れていたという事を証明していた。
この時、僕の頭にほたるの温かかった手が蘇り、赤鼻の爺さんの言葉が脳を揺らした。急に目の前がぐるんと回り、目眩がした。
何でそんなものが繋がったのかわからない。
僕は頭を振り、立ち上がる。
何度も何度も繰り返される赤鼻の爺さんの言葉、男の死体、生暖かい血。それらを振り払いながら、集落へと戻った。そして真っ先に、生活用水場へと行き、血がついた手を洗った。ゴシゴシと洗う。
綺麗に落ちた両手を見つめる。その手は、小刻みに震えていた。