第14話 温度
穴が開き、空き缶はクルクルと宙を舞う。
カラン、カランという空虚な音を立てて地面に転げ落ちた。
「クロ!!」
しばらく空き缶を見つめていた僕の前に、笑顔のほたるが顔を出して来た。
「仕事、終わったの?」
「うん!ねぇ、見てこれ!!」
彼女は、小さな植木を見せた。植木には、釣り鐘のように頭を垂れた白い花が咲いていた。
「これ、花屋のおじさんに貰ったの。古代種を復活させてるんだって。この花の名前、ホタルブクロっていうんだよ」
彼女は目を輝かせながら、僕に話す。
「気前がいいね」
「お仕事頑張ってるからだって。でね、ほたるって名前だからってくれたんだよ」
彼女は僕なんかより、生きるのが器用だ。何だか、彼女が恨めしく思った。
「…?」
彼女はいきなり黙り込むと、僕の顔をじっと見つめた。
「クロ、何か元気ないね」
彼女はそっと僕の頬に手を触れた。彼女の手は、温かかった。人の手って、こんなにも温かいものなのか…。
僕は無意識に、頬を触れる彼女の手に自分の手を重ね合わせていた。僕は目を閉じて、彼女を感じる。
「ほたるって不思議だね」
そう言った僕はまだ目を閉じていたが、彼女が優しく微笑んだ気がした。
カチャリ
静かに銃のハンマーを下ろし、ビルから出て来るターゲットに狙いをつける。今回のターゲットは、いかにも悪人面のおっさんだ。そのおっさんには、ボディガードが3人。高級車に乗り込もうとしていた。
僕は、現代の銃を使わない。
現代の物は正確に狙う為に、超音波認知やら、殺傷力の高い高熱レーザーなどが付いている。
だが、科学はあまりにも進歩し過ぎた。良かれと思った技術は、逆に他の技術を妨げるのだ。