表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛍影  作者: 紅玉
12/20

第11話 店主の妻

「あのぅ、仕事貰えません?」

彼女の唐突さに店主は目を点にし、しばらくの間言葉を口にできなかった。

「…ここで働きたいの?」

「はい」

彼女は、こっくりと頷いた。

「あんた、何やってんだい!」

店主に負けてない身体の持ち主の女が現れた。

「いや…あの…」

店主は口ごもり、妻の顔色を見ている。

「ん?何だい。お客さんじゃないか。しっかりしとくれよ!ここは私の店じゃなくて、あんたの店なんだからね!!」

僕らに気付いた店主の妻は、店主に口うるさく言っている。

「いや…客じゃないんだ」

「客じゃないって!?」

妻がヒステリックな声を上げ、店主はどうにも縮まらないその身体を小さくしながら、ビクッと肉の塊を揺らした。

「冷やかしかい?!」

店主の妻は、小さな目を吊り上げて僕らを睨んだ。

「いや…それも違…」

「あ?何だいあんた!もごもご喋ってないで、はっきり喋ったらどうだい!?じれったい人だねぇ!!」

口ごもる夫に妻は、怒鳴りつけるように苛々した様子で言う。

「私、ここで働きたいんです。お仕事貰えませんか?」

ほたるは、夫に助け舟を出した。夫の顔と強張っていた身体は緩み、だらし無い身体はさらにだらし無く緩んだ。

「ふぅーん、あんたウチで働きたいの」

店主の妻は彼女を注意深く眺めながら、彼女の周りをぐるりと回った。そして顎に手を当て、考え込んだ。

「このご時世、花を買っていく人なんか滅多にいなくてね、ウチは破綻寸前なのよ。本当は、人を雇う程の余裕なんてないんだけど…」

店主の妻の小さな唇がさっきとは違ってゆっくりと、ぶっきらぼうな感じだがそれでいていて、優しく言葉を放っていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ