詩 彼女の髪を切る
掲載日:2026/05/14
「前髪、切る」
「え?」
放課後、教室で彼女が急に言い出したので、俺は慌てて言う。
「美容師にやってもらえよ。そのほうが可愛いと思うし」
「駄目。お金がかかるし、いつものことだから」
チチチと指を振り、彼女がカバンの中から、ハサミを取り出す。
「それは?」
「100円ショップで買った髪切りバサミ」
あとは鏡を取り出し、くしを持つ。
「とりあえず、まっすぐに揃えて…」
彼女が前髪を切ろうとするので、慌てて止める。
「待った。俺がやってやるよ」
「え」
そう言うと思わなかったのか、彼女の動きが止まる。
自分でも何でそう言ったのか、不明だった。
「ちょっと貸してみて」
くしとハサミを受け取り、彼女の髪に触れる。
絹のように、さらさらした感触。
ずっと触っていたいと願うが、彼女が言ってくる。
「ハサミ、縦にいれるんだよ」
「縦ね。どこまで切ればいい?」
「このくらい」
彼女が教えた通り、髪を摘む。
急にドキドキしてきたが、えい!! とおもいきって切る。そこを中心に、周りの髪もカットしていく。
最後にくしで整えて聞く。
「どう?」
「待って。鏡を見て…」
彼女が鏡を見て、頬をほころばせる。
良かった、OKらしい。
「またお願いね」
「おう」
2人で見つめ合い、視線だけのキスをする。
最高の気分だった。




