第二章 秘書が最大のピンチ!?
記者会見当日。蓬莱帝国記者クラブには大勢の記者が詰めかけていた。「ヒショガーマンがついに真実を語る」という触れ込みで、注目度は最高潮に達していた。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」
ヒショガーマンは田中苦労秘書と並んで登壇した。いつものように「秘書が〜」で逃げることができない状況で、さすがに緊張している。
「まず、私の名前についてですが、転嫁逃避が本名です。『秘書賀』ではありません」
記者たちがメモを取る。当たり前のことだが、あまりにも「秘書が」を連発していたため、確認が必要だった。
「では、これまでの『秘書が勝手に』という発言について説明してください」
核心を突く質問が飛んだ。ヒショガーマンは額に汗をかいた。
「それは...その...」
また「秘書が」と言いそうになって慌てて止めた。隣の田中秘書が励ますように頷いた。
「実は...私が...責任転嫁をしていました」
記者会見場がざわめいた。ヒショガーマンが「秘書が〜」以外の理由を述べたのは初めてだった。
「つまり、秘書の田中さんは悪くないと?」
「はい。田中君はとても優秀で真面目な秘書です。すべて私の指示に従って仕事をしてくれていました」
田中秘書の目に涙が浮かんだ。長年の汚名がようやく晴れそうだった。
「では、なぜ『秘書が勝手に』と言い続けたのですか?」
「それは...」
ヒショガーマンが答えようとしたその時、会場の扉が勢いよく開いた。
「待ってください!」
現れたのは、見たことのない男性だった。
「私は田中苦労の兄、田中正義です」
「え?」
田中秘書が驚いた。兄の正義氏は新聞記者をしていて、弟の仕事のことをよく思っていなかった。
「転嫁議員、あなたは嘘をついています!」
「嘘?」
「弟から聞きました。確かに弟は議員の指示に従っていましたが、その指示の内容がまさに『何か問題があったら秘書のせいにしろ』だったと!」
会場が再びざわめいた。田中秘書は青ざめた。
「お兄ちゃん、なんでそんなことを...」
「弟よ、もう我慢する必要はない。この議員は君を盾にして責任逃れを続けているんだ」
ヒショガーマンは完全に追い詰められた。今度こそ「秘書が〜」では済まされない。
「転嫁議員、これは事実ですか?」
記者の質問に、ヒショガーマンは観念した。
「は、はい...確かに私は田中君に『問題があったら君のせいにするから』と指示していました」
会場が騒然となった。
「それは秘書に責任を押し付ける指示だったということですか?」
「はい...申し訳ありませんでした」
ヒショガーマンは深く頭を下げた。しかし、この謝罪が新たな混乱を招くことになる。
「では、これまでの『秘書が勝手に』は全部嘘だったのですね?」
「はい、嘘でした。すべて私の責任です」
「政治資金の不正使用も?」
「私の責任です」
「キャバクラでの会合も?」
「私の責任です」
「高級寿司店での接待も?」
「私の責任です」
今度は「私の責任です」の連発になった。まさに正反対の展開である。
「転嫁議員、それでは田中秘書さんは完全に被害者だったということですか?」
「はい、田中君は何も悪くありません。すべて私が...」
その時、田中苦労秘書が立ち上がった。
「先生、それも違います」
「え?田中君?」
「先生は確かに『秘書のせいにしろ』とおっしゃいましたが、私はそれを拒否することもできました。でも、私は先生の政治生命を守りたくて、甘んじて悪役を引き受けたんです」
会場が静まり返った。
「私は先生の政治理念を信じていました。先生は政策については真面目に取り組んでおられます。ただ、責任を取ることが苦手なだけで...」
田中秘書の言葉に、ヒショガーマンは涙を流した。
「田中君...」
「でも先生、もうこの方法はやめませんか?本当のことを言って、責任を取って、それから新しい政治活動を始めましょう」
記者たちも感動していた。秘書と政治家の真の関係がそこにあった。
「分かった、田中君。もう『秘書が』は言わない。これからは『私が』で始めよう」
「先生...」
記者会見は感動的な雰囲気で終了した。しかし、ヒショガーマンの試練はこれで終わりではなかった。
記者会見の映像は全国に放送され、国民の反応は複雑だった。
「結局、秘書を犠牲にしてたのか」 「でも最後は正直に話した」 「秘書さんが立派だった」 「転嫁議員も反省してるみたいだし...」
世論は割れていた。果たして、ヒショガーマンは政治家として再起できるのだろうか。




