表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

初めてのお出かけ


「これでいいのか・・?」


颯太に渡された服を着たが、これで合っているのだろうか。

颯太によると、白いパーカーに黒いジャケット、黒のパンツというものを着ているらしい。


「僕はすごく似合ってると思うけど、どう?」

「どうって…」


なんとなくいつもより男らしくなった気がする。

いつもは服を着るのが面倒くさいので、着慣れてきたロンTにジーパンしか着ていない。

今日もそれで行こうとしたのだが、颯太にオシャレしてみたらと渡されたのだ。


「奈々ちゃんに変って思われないかな?」

「思われるわけないじゃん!」


颯太はそう言って、ジャケットのゆがみを直してくれる。


「かっこいいって思われるんじゃないかな」


最高じゃないか。


「これで行く!」

「よし、じゃあ行こうか」


颯太が鞄を持って玄関に向っていく。

なんだかその背中が暖かく見える。

颯太は、優しくて誰でも受け入れてくれる。

猫の僕でさえも…


「あのさ、颯太」

「ん?どうした?」


「いつもありがとう」


「どうしたの?突然」


「なんかすごい世話になってるなって思って。ちゃんと言っておきたいなって思ったから」


「いや、俺こそクロバくんに感謝してる」

「僕に?」


「最近は一緒に過ごすのが、楽しくなってきてるからさ。最初は正直一緒に住むことになってから、ちょっと不安だったんだよね。でも、クロバくんって純粋で素直で、何事も一生懸命でさ、今の俺にないものたくさん持ってて、気づいたら俺の方がたくさん教わってるし、救われてるよ」


颯太は恥ずかしそうに頭を掻いて、笑った。


「・・・で、クロバくん、なんで頭をこっちに向けてるの?」


「あ、ごめん」

また猫の時の習性が出てしまった。


颯太はクスクス笑うと「ほんとクロバ君は面白いな」と言って、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。



「こっちー」

奈々ちゃんが少し離れたところから手を振っている。

水色のワンピースに白のカーディガンを着ている。

近づけば近づくほど、奈々ちゃんの笑顔が見えてきて、ドキドキする。

ひらりと揺れるスカートが可愛すぎる。

その上に恥ずかしそうにはにかんだ笑顔が、たまらない。


「じゃあ行こうか」


今日は一緒にお昼ご飯を食べて、お買い物に行って、ケーキを食べる予定だ。

ケーキは僕のリクエストだ。

前から奈々ちゃんが家で食べていて、すごくいい匂いがしていた。

僕がどれだけちょうだいとねだってもくれたことなかったから、この機会に食べたいとお願いしたのだ。


お昼は、颯太のおススメのいたりあんに行った。

奈々ちゃんと颯太がぱすたというものを頼んでいたので、同じものを頼んだのだが、フォークが上手く使えない。

お箸だけでも大変なのに、人間は色々面倒くさい。


「クロバくん、口の周りすごいよ」


奈々ちゃんが笑っている。

颯太におしぼりを渡されて、口の周りを拭くと、おしぼりがオレンジ色だ。

恥ずかしいけど、奈々ちゃんが笑ってくれているならそれでいい。


「そういえば、クローバーは見つかった?」


奈々ちゃんは静かに首を横に振った。


「すごく心配だけど、あの子は外での生活も長かったし、大丈夫って信じて待つことにしたの」


(奈々ちゃん・・・)


奈々ちゃんが、無理やり笑って辛さを堪えているのがわかる。

僕がいなくなったせいで、泣いたりしているのだろうか。

胸の奥がズキンと痛む。


僕はここにいるのにー


「クローバーには、希望や幸福、愛情という意味があるんだ。だからきっと大丈夫だよ」


颯太がそう言って励ますと、奈々ちゃんの表情が少し和らいだ。


(僕の名前には、そんな意味があったのか)


「そういえば、クロバとクローバーって名前似てるね」


颯太にそう言われてドキっとする。


「確かになんだかクローバーに似てる気がする」


そういって奈々ちゃんまでふふと笑った。


「ぼ、僕は人間だよ」


「それはわかってるよ」

2人同時にそう言うと、くすくす笑った。

奈々ちゃんが楽しそうで、それを見るのが嬉しかったはずなのに、なぜか気持ちが落ち込んでしまう。

きっとまだお腹がいっぱいじゃないからだ。

無理やりパスタを口へ放りこんだ。


ご飯を食べた後は、海の近くのショッピングモールに出かけた。

ここにはたくさんの人がいて、圧倒されてしまった。

颯太がお手洗いに行くというので奈々ちゃんと2人きりになった。

奈々ちゃんが隣で機嫌よさそうな顔で立っている。

あと10センチくらいの距離のところにいる。

猫の時はくっついていたのに、どうして今はくっつけないんだろう。

恥ずかしくなってきて、逆方向を見ると、カップルが手を繋いでいる。


(僕といつか奈々ちゃんと…)


「クロバくん?」

「わっ!あ、えっと、何?」

奈々ちゃんが不思議そうな顔をしてこっちを見ている。

「驚かせてごめんね。話しかけても返事がないから心配になっちゃって」

「ううん、僕がぼんやりしてたから。どうしたの?」

すると奈々ちゃんが耳元に口を寄せた。

奈々ちゃんの息が耳をくすぐり、フワッといい匂いに包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ