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『遺棄された列島』を重機で掘り起こせ! ~元現場監督の50歳、ゾンビアポカリプスで道を作って日本を再建する。返事は「ご安全に!」  作者: さじ


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第9話:物々交換と「キロワット」という名の通貨

第8話をお読みいただきありがとうございます。 物流網が広がると、次に必要になるのは「経済」です。 価値がバラバラな物々交換に終止符を打つため、剛田が提案した驚きの「通貨」とは。 「ご安全に!」

半年が経過し、物流網が広がると、皮肉なことに新たな壁が立ちはだかった。  それは「価値の不均衡」だ。


「親方、もう限界です。隣の村は『米一俵とガソリン十リットルを換えろ』と言い、西の集落は『薬一個と、重機での整地三時間を換えろ』と言ってくる。……何が正解か、私にも計算できません!」


 村野が現場事務所の机を叩いた。彼の前には、交換レートの矛盾で積み上がった苦情のメモが山を成している。  文明崩壊後の世界において、かつての紙幣はただのゴミだ。だが、物々交換だけでは、復興という名の巨大なプロジェクトを回すことはできなかった。


 剛田は事務所の窓から、夕闇の中に煌々と輝く道の駅の街灯を眺めていた。


「村野さん。誰もが欲しがり、誰にでも配分できて、価値が揺らがねえもの……この拠点に一つだけあるだろう?」


「え……? 軽油ですか? それともジャガイモ?」


「いや。……『電気』だ」


 剛田は、タケルがメンテナンスしていた大型の仮設配電盤を指さした。  剛田たちが管理する小規模水力発電所と、地下から掘り起こした軽油で回す発電機。それらが生み出す「電力」こそが、この地域で最も信頼できるエネルギーだった。


 翌日、村野の手によって、この地域初の独自の通貨制度が導入された。  その名は**『KWキロワットカード』**。


 それは紙幣ではなく、剛田組が発行する「電力を受け取る権利」を記した、シリアルナンバー入りの木製チップだ。一キロワットの電力、あるいはそれに見合うだけの労働、あるいは燃料。それらすべてを「電力価値」に換算して取引する。


「いいか。このチップを持ってくれば、俺たちのところでスマホを充電してやるし、夜の明かりを貸してやる。……機械を動かす力が必要なら、これを出せ。俺が重機を出してやる」


 剛田の宣言は、周辺の集落に衝撃を与えた。  形のない「電力」を担保にした通貨は、瞬く間に「信頼」として定着した。なぜなら、剛田が作り上げたインフラこそが、この荒野で唯一、明日も確実に動いているものだったからだ。


「親方……凄いですね。みんな、このチップを手に入れるために、競って道の整備やゾンビの死体処理を手伝いに来るようになりました」


 タケルが、チップを対価に集まってきた志願者たちのリストを見て感心する。  九条の警備班も、今や「KW」を給料として受け取るプロの傭兵組織へと脱皮していた。


「通貨ってのは、ただの紙切れじゃねえ。……『次に会う時も、俺たちはここで生きている』っていう、明日への約束なんだよ」


 剛田は、自分の手の中にあった一枚のチップを、九条に放り投げた。


「九条。そのチップを貯めておけ。……東京へ行く時、そいつが最高の武器になる」


 経済という名の「血」が巡り始めた。剛田の視線は、もはや足元の泥ではなく、遠く霞む東京の摩天楼――日本再起動の最終現場へと向けられていた。


【後書き】 「電力」という実体を伴う通貨が、バラバラだった人々を一つの「経済圏」へと繋ぎました。 いよいよ物語はクライマックス。 次話、地上を埋め尽くすゾンビを無視し、空中に道を作る「空中回廊」建設作戦が始まります。 「ご安全に!」

第9話で「国家」としての基盤が完全に整いました。 「KWカード」という設定は、SF的でありながら非常に現実的なので、なろう読者からの「納得感」が高いポイントです。

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