第7話:重機農法 —— ゾンビごと土をひっくり返せ
第6話をお読みいただきありがとうございます。 燃料を手に入れ、電気が灯った道の駅。次なる課題は「胃袋」です。 通常の農具では太刀打ちできない荒れ地を、剛田が重機のパワーで強引に「農園」へと作り替えます。 「ご安全に!」
電気が戻り、夜の恐怖が和らぐと、次に突きつけられたのは「胃袋」の限界だった。 村野が管理する備蓄倉庫の棚は、日に日にその隙間を広げている。缶詰やレトルト食品といった「過去の遺産」を食いつぶすだけでは、復興という名の長期戦には勝てない。
「親方、これ以上は無理です。近隣集落との物々交換も、向こうの不作で滞っています。……あと二週間で、配給を半分にするしかありません」
村野が悲痛な顔で帳簿を叩いた。 道の駅の裏手、かつてはのどかな田園風景が広がっていた場所は、今やセイタカアワダチソウが背丈ほどに伸び、ゾンビたちが潜む「緑の迷宮」と化している。
「村野さん、そんな顔すんな。……土があるなら、飯は作れる」
剛田は愛機、PC200の操縦席に飛び乗った。 バケットを「スケルトンバケット」――格子状の網目があるタイプに付け替える。土をふるい、大きな石やゴミを取り除くためのプロの道具だ。
「タケル! 九条! 現場の掃除を始めるぞ! 今日からここは農園だ!」
剛田がアクセルを吹かす。 耕作放棄地へ突き進む重機の前には、雑草に紛れていた数体のゾンビが這い出してきたが、剛田の操作に容赦はない。
「どけ。そこはこれからの苗床だ」
重厚なバケットが地表を根こそぎ掬い上げる。雑草も、不法投棄されたゴミも、そして立ち塞がるゾンビも――すべてを「障害物」としてまとめて一掬いだ。剛田はそれを安全な場所まで運び、穴を掘って埋め立てた。死体に敬意など払わないが、それが未来の肥料にすらならないほど、この地獄は乾いている。
その後が、剛田の真骨頂だった。 通常の耕運機では刃が立たないほどガチガチに固まった粘土層。剛田は重機の圧倒的な油圧パワーで、深さ一メートルまで一気に「深耕」していく。
「見てろ、タケル。土をひっくり返し、酸素を吸わせる。……そうすれば、死んだ土も生き返るんだ」
重機が唸るたび、黒々とした豊かな土が地表に現れる。 かつて農家が手作業で、あるいは小型機械で数週間かけて行った作業を、剛田はわずか数時間で終わらせていく。
重機の後ろからは、タケルや村野たちが総出で石を拾い、九条たちが周囲を警戒する。 夕暮れ時。そこには、一ヶ月前までゾンビの巣窟だったとは思えないほど、美しく整えられた「黒い大地」が広がっていた。
「……親方。これ、本当に畑になるんですね」 タケルが泥のついた手で、新しく返された土に触れる。
「ああ。村野、近隣の肥料会社から『徴用』してきた石灰と肥料を全部ぶち込め。来月にはジャガイモの芽が出る。……半年後には、この道の駅を『野菜のハブ』にしてやる」
剛田は操縦席から降り、泥だらけの靴で地面を踏みしめた。 道を作り、電気を通し、そして今、大地を耕した。 文明の崩壊とは、人が土から離れること。復興とは、再び土と繋がることだ。
剛田の背中は、夕日に照らされ、これまでで一番大きく見えた。
重機による「開墾」が完了しました。 次話、物語はいよいよ「半年後」へ。 拠点は「村」から「都市」へと飛躍し、剛田の野望はさらなる高み、物流の再建へと向かいます。 「ご安全に!」




