第12話(最終話):終わらない「現場」
ついに最終回です。 10年以上読み専だった私が、どうしても読みたかった「重機と職人の復興物語」。 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。 剛田組、最後の現場です。 「ご安全に!」
十五年後。
かつて「遺棄された列島」と呼ばれた日本は、今や「復興の奇跡」としてその名を世界に轟かせていた。
六本木ヒルズの周囲には、今や巨大な空中庭園と物流ターミナルが築かれ、かつての「空中回廊」は強固な永久橋へと作り替えられている。地上のゾンビは組織的な清掃作戦によって完全に制圧され、かつての廃墟は、再び数百万人が生活するアジア最大の経済都市へと蘇っていた。
その再開発エリアの一角。
最新鋭の電動重機がひしめく現場で、一人の青年が鋭い笛を吹いた。
「よし、第一工区の埋め戻し完了! 次、二号機入れ!」
指揮を執るのは、三十代半ばになったタケルだ。かつての弱々しさは微塵もなく、その顔には「復興省・現場総責任者」としての貫禄が備わっている。
彼の傍らでは、スーツを纏った村野がタブレットを片手に、忙しなく資材の調整を行っている。
「タケル君、九条さんからの連絡だ。名古屋方面の幹線道路、完全に舗装が終わったそうだ。これで中日本経済圏も『KW』の流通に乗る」
「最高ですね。……アイツ、今はもう『再興軍』なんて物騒な名前はやめて、『首都圏道路警備公社』の理事長様ですからね。似合わないったらありゃしない」
二人は顔を見合わせて笑った。
その時、現場の端に置かれた古い、しかし手入れの行き届いた油圧ショベル――PC200の傍らに、一人の老人が立っているのに気づいた。
白髪混じりの頭に、年季の入ったヘルメット。
剛田(65歳)は、完成間近のビルを見上げながら、静かにタバコを燻らせていた。
「……親方。もう、現場に出るのは控えてくださいって言ったじゃないですか」
タケルが苦笑しながら駆け寄る。剛田はゆっくりと振り返り、皺の刻まれた顔を綻ばせた。
「タケルか。……いい現場になったな。地盤も固い、歪みもねえ。これなら、百年は保つ」
「全部、親方が教えてくれた通りですよ。……親方、これからヒルズの最上階で、日本の完全復興宣言の式典があるんです。一緒に行きましょう」
剛田は、午後の陽光を反射して輝くガラス張りの巨塔を見つめた。
あの夜、命がけで灯した一本の光の柱が、今や数千万の明かりとなって日本中に広がっている。
「……式典なんてのは、政治家の仕事だ。俺はただの土木屋だよ。現場が綺麗に終われば、それでいい」
剛田は愛機のレバーにそっと手を触れた。
この十五年、休むことなく道を繋ぎ、大地を耕し、国を掘り起こしてきた。
彼が作ったのはコンクリートの構造物ではない。人が再び前を向いて歩くための「勇気」というインフラだった。
「タケル。……次は、どこを直す?」
その問いに、タケルは胸を張って答えた。
「日本中、どこまでもですよ。親方が作った道の続きは、俺たちが広げていきます」
剛田は満足げに頷くと、ヘルメットの鍔を指で弾いた。
「……そうか。なら、俺の出る幕はもうねえな」
老いた職人は、軽やかな足取りで現場を後にした。
彼の背中には、後を継ぐ若者たちの活気に満ちた声が響いている。
空はどこまでも高く、青い。
日本再起動。その壮大な「現場」に、終わりはない。
「――ご安全に!」
これまで10年以上「読み専」だった私が、AIというパートナーを得て、初めて自分の理想を物語にすることができました。 剛田という不器用な男の旅路を最後まで見守ってくださった読者の皆様に、心からの感謝を捧げます。
道があれば、人はどこへでも行ける。 この物語が、読んでくださった皆様の「明日への道」の一助になれば幸いです。
また、次の現場でお会いしましょう。 本当に、ありがとうございました!
「ご安全に!」




