第10話:空中回廊 —— 首都高を「現場」に変えろ
首都高を工事現場へと変え、剛田たちはついに東京の深部へと到達しました。 次話、第11話。いよいよ六本木ヒルズの再起動。 「電気が灯る」ことの本当の意味を、世界に叩きつけます。 「ご安全に!」
「……正気か、親方。地上は死体で埋まってる。戦車でもなきゃ、都心へ入る前にガス欠で食い殺されるぞ」
九条が、偵察ドローンの映像を見ながら低く呻いた。 画面に映るのは、かつての国道246号線。そこには、数え切れないほどのゾンビが黒い波となって蠢き、アスファルトが見えないほどに埋め尽くしていた。
「だから言ったろ、九条。……地上を走るなんて、一言も言ってねえ」
剛田は、地図の上に引かれた赤い線――『首都高速道路3号渋谷線』を指差した。
「この高架の上だ。ここは地上から十数メートル浮いている。入り口さえ封鎖すれば、そこはアイツらの手が届かねえ『空中国道』だ」
剛田の作戦はこうだ。 重機で高速道路の入り口にある放置車両を「清掃」しながら進み、通行を妨げる損傷箇所には仮設の橋を架けていく。地上を無視し、空中のコンクリートロードを繋ぎ直す「空中回廊」建設作戦。
「タケル! 先頭のPC200に予備の燃料と鉄板(敷鉄板)を積め! 九条の班は、高架下にいるアイツらが登ってこないよう、ランプ(出入り口)の完全封鎖を任せる!」
「了解!」
剛田組の重機艦隊が、ディーゼルの黒煙を上げて首都高へと駆け上がる。 そこは、かつての喧騒が嘘のように静まり返った廃墟の道だった。剛田は先頭の重機に乗り込み、バケットを「フロントショベル」のように構え、放置された高級車やトラックを次々と路肩へ、あるいは高架下へと弾き飛ばしていく。
ガガガガッ! と金属が軋む音が、死の街に響き渡る。 音に反応した地上の数万のゾンビが、届かぬ獲物を見上げて咆哮を上げるが、剛田は目もくれない。
「いいか、ここはもう高速道路じゃねえ。……俺たちの専用通路だ!」
途中、地震で崩落した数メートルの切れ目に差し掛かると、後続のトラックから巨大な鉄の板が下ろされた。剛田は操縦席から、その重さ数トンの敷鉄板を、まるで紙細工のように精密に、かつ豪快に崩落箇所へ渡していく。
「……道がつながったぞ! 次へ行け!」
剛田が咆哮する。 一歩、また一歩と、黄色い重機たちが東京の心臓部へと迫る。 地上のゾンビたちがどんなに叫ぼうと、剛田が引いた「空の道」は揺るがない。
やがて、夕闇に包まれた六本木のビル群が、墓標のように姿を現した。 その頂には、かつて東京の繁栄を象徴したあの場所がある。
「親方……見えます。六本木ヒルズです!」
「ああ。……今夜、あそこに『火』を灯す。日本の連中全員に、現場監督が帰ってきたってことを知らせてやるんだ」
物語は最高潮に突入しました。 第10話は「重機で車をなぎ倒しながら進む」という、読者が最も見たかったカタルシスが詰まっています。




