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靑い鳥

〈苛つけば全てのものが寒くなる 涙次〉



【ⅰ】


「安保父サン、僕ニモ* 寄與美サンミタイナあんどろいどノ戀人ヲ造ッテ下サイ」とロボテオ2號は云ふのである。彼は、彼のオリジナルであるテオの艶福家振りが羨ましかつた。でゞこと云ふ正室がゐて、更に** 市上馨里と云ふ人間の側室(?)迄ゐる。安保さん、それもさうだなと思ひ、2號に精巧な♀猫のアンドロイドを造つてあげた。2號は大喜びで「ナナ」とそのアンドロイドに名を付け、これから交際を始めやうと云ふ矢先、余りに精巧過ぎたか、「ナナ」は「お外」の逞しい♂猫にかつ攫はれてしまつた。2號にとつては、稔らぬ初戀だつたのである。



* 當該シリーズ第64話參照。

** 當該シリーズ第82話參照。



【ⅱ】


落胆する2號。彼を元氣づけやうと、杵塚、「2號、ぢやあ*『neko猫ふれ愛ハウス』行つて戀人探しゝやう」。愛車の一台、スズキGSX-R125の後ろにケージを括り付け、2號を「ふれ愛ハウス」へ連れて行つた。

ハウスの猫逹が、わらわらと2號の周りに蝟集した。だが、無骨な金属製のロボットである彼に、生身の猫逹は好畸心こそ抱け、戀、と云ふ雰囲氣はまるでない。2號よりも、客のゲイの皆様方に、杵塚がモテる始末。

「たろうチャンニサヘ** 玉乃チャンッテ戀人ガイル。*** 映画ニ迄ナッタノニ...」



* 當該シリーズ第153話參照。

** 前シリーズ第104話參照。

*** 前シリーズ第158話參照。



【ⅲ】


2號の戀は絶望的なのか。テオは「猫の世界なんてそんなもんさ。殘酷なんだよ意外と」と云ふ。「だうしても諦めが付かないやうだつたら、カンテラ兄貴の*『秘術・雜想刈り』を受けて、その戀心を刈り取つて貰ふしかないよ」



* 前シリーズ第81話參照。



※※※※


〈元カノの云ふにぐちやぐちやしてるもの駄目なのよねとカレーライス避く 平手みき〉



【ⅳ】


「殘酷なのはテオ、きみの方ぢやないか。『橋の下なる目々雜魚だにも獨りは寢じと上り下り』つて云ふぢやない?」-とじろさんは飽くまで優しいのだ。「『閑吟集』スかじろさん。流石つスね」。テオにじろさんが云ひたかつたのは、2號の戀に憑かれた有り様は、例へロボットであつても、生きとし生けるもの皆、獨り寢は厭なのだ、と云ふ事を示してゐる。その點、2號の思ひは「雜想」などではない。



【ⅴ】


折しも、* タイムボム荒磯が肝戸力子を連れて、事務所に遊びに來てゐた。テオ=谷澤との次回作の腹案を練る為でもある。

力子、「なんだか2號ちやん元氣ないよ」と荒磯に云ふ。荒磯「だつこしてあげな、力子」



* 當該シリーズ第71話參照。



【ⅵ】


2號は其処に、猫の本分を見た氣がした。暖かい膝があつて、其処に丸くなる猫。僕ラハ皆、暗闇カラ生マレ、暗闇ニ去ッテ行ク。ソノ為ノ假ノ宿リ、倖セハ自分デ探サナクチャ。そんな哲學めいた思ひも湧いた。



【ⅶ】


力子の膝は、まるでメーテルリンクの『靑い鳥』であつた。倖せは案外近場に轉がつてゐるものだ。信頼する人間の女の子。それは氣紛れな猫の世界には、欠けてゐるものだつた。「てお兄サン、僕戀ヲ摑ミマシタ。僕ノ戀人ハ當面、力子チャンデス」



※※※※


〈山形や芋煮は寒き空ばかり 涙次〉


テオ「???」-だがじろさんには分かつてゐた。猫の事は、或ひは人間の方が良く知悉してゐるかも知れないなあ- テオはさう思つた。



Everybody hates sleepin' alone

This night I'm gonna finally miss you

Can't you listen in a mind? The city

Counts the sheep and baby finally reach you

Loose where I am

And rule what I am my baby

We hate nobody but truth, truth

We make no sense usin' youth, youth

The only weight's here to pass all the way.



そんな流行歌がテオの脳裏をよぎつた。「靑い鳥」を(ロボットだらうが何だらうが)誰もが持つ。素晴らしきかな人生! お仕舞ひ。


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