授業後
「まあ気にしないでもいいんじゃないか?」
実技授業を終え、校内へと向かいながらユカブキの横で一応の励ましをしたのは、友人のゼッターだった。
「ちょっと、そんな言い方したら、ユカブキが変てことを肯定していることになるじゃない」
そのゼッターに文句を言うのはクゥエルだった。間に挟まれたユカブキは苦笑いをしながら、
「俺は気にしてないよ」
と短く言った。
「詠唱の発音の正確さやリズム、テンポなんかは、ゼッター、あなたよりもユカブキの方がずっと上なんだから」
「ユカブキの巧みさには文句が言い様がないんだが、なんでクゥエルがどや顔なのかの方が癪に障るんだが」
「何よ癪に障るって、私そんなにおかしいこと言ってる?」
「いや、言ってはないんだが。俺も別にユカブキがどうのって言ってるわけじゃなくてさ」
「はっきりしないわね。どういうつもりで言ったのか、はっきりおっしゃいなさいよ」
などとクゥエルとゼッターがやり合っているのを静かに聞きいていたユカブキは、
「二人ともまあそれくらいにして」
と当の本人が仲裁役的なことをしなければならなくなった。
「基本の練習が大事とはいえ、魔力の値が測定されるようになった方がいいのは間違いないだろ? なあ、ユカブキ」
「それはそうよ。目に見えた方が練習のし甲斐があるってものよ」
「俺はユカブキに聞いたつもりなんだが。でも、本当それだよな。あんだけ基礎がしっかりしてるのに、なんでだよって。俺なんかよりも上手いのに」
「魔力の値がユカブキよりも良いくせに嫉妬? 嫌だわ」
もめ事を回避したはずなのにすぐさま言い合いになりかけてしまうので、
「俺はやるべきことをやるだけだよ。エミール先生もいつかは、みたいなこと言ってたし。その時のためにも基本を大切にして繰り返すだけだよ」
ユカブキ自ら良い感じにまとめなくれはならなくなった。
「まあ、俺の言いたいことはまさにそこだったんだけども」
「それならそういえばいいのに、ねえユカブキ」
「それよりも次の授業急がないと」
三人はいささか速足になった。
清々しい晴天があった。暖かい日差しがあった。穏やかな風があった。夢に向かう、志を目指す生徒たちがいた。賑わいは決して騒々しさではなく、失敗しても前向きに生きる葛藤の熱い軽やかさでもあった。そんな中に、ユカブキやクゥエルやゼッターもいた。
下唇を噛んでそれを見つめる一人がいた。




