座学の講義
魔法科の授業と言えども、屋外で個々各々が行使するばかりではない。現に現在は座学の講義が行われている。今の時間帯は魔法使い、賢者、勇者の専科合同の授業形態となっており、大講堂で行われている。
教師エミールは教科書を淡々と抑揚もつけずに読み進めていた。一同静粛に教師を傾聴していた。もう間もなく授業が終わるというタイミングであった。エミールは読んでいた途中で教科書を教壇に置き、詰襟を緩めてから、
「まあ、つっても魔力はそう簡単に集められるもんじゃねえから」
生徒たちはざわめいた。教師たる威厳は皆無になり、良く言えばざっくばらんな口調、別の言い方をすれば悪態をついたような感じは当校の校風らしからぬと言ってしまえば、彼はきっと注意やお咎めがあってしかるべきのものであった。
「ちょこっと習って魔法が使えるなんて物語の中の話しだ。そんなメルヘンはとっとと捨てるこったな。そもそも魔力ってのは……」
終業のチャイムが鳴ったのはその時だった。頭を掻いた教師エミールは軽くため息をついたかと思うと何も言わず大講堂を出て行ってしまった。次の講義に起立する者、隣の生徒と一体何事だったのかと話す者など喧騒の大講堂の中、勇者専科の一人ユカブキは静かに席を立った。




