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序
その国には騎士になるための、魔法使いになるための、賢者になるための、そして勇者になるための学校がある。貴族も平民も身分は関係なく誰しもが志し、それぞれの専科で日々切磋琢磨するのである。その厳しい課程のため中途退籍する者も少なくはない。
とりわけ勇者専科では見習い、いやひよっことはいえ、勇者の素質を持つ者は入学時の勇者値を測定され、また各自魔法を一つ有している、はずなのである。はずである、と言ったのには理由がある。入校審査時において確かに成績を収めているというのに勇者値が測定できず、ましてや魔法が使えない者がいたのである。彼は落伍者ではない。彼の人となり、学業への取り組み、そしてその志をみれば確かに彼は勇者へと思っても何も不思議はないのだ。だから、いつごろからか彼はこう呼ばれるようになった。勇者専科の傾奇者、と。




