8 訪問者
「本当に…信じてくれるんですか?」
「あぁ、もちろんだよ。証拠がない限り嘘だなんて言えないからね」
怪しげに口角を釣り上げながら一条は応えた。
午前10時。一条の住処兼探偵事務所にて、一条、水無瀬は先程尋ねてきた女子高生から話を聞いていた。
机の上では珈琲とココアがゆらりゆらりと湯気を立てており、女子高生は緊張しているのか、その湯気をただひたすらに眺めていた。時々視線を合わせると、すぐに下を向いてしまう。尋ねてきた時の勢いが嘘のようだ。
「それで…信じられない事件ってなんだい?死体でも見つけたのかな?それでもう一度見たら消えていたとか…」
「いえ、違います。そもそも事件なんて起きていません」
はっきりと、女子高生は否定した。
「ふぅん。じゃあここに来た要件はなんだい?」
本の山の頂上に置かれたハンマーをソファの隙間に戻しながら、一条は問うた。
女子高生は、「なぜそこにハンマーが?」とでも言いたげな顔をしながらも答えた。
「私の友達が…本気で殺されるって言っているんです。ごめんなさい、信じてくれませんよね…こんな話」
両腕で体を抱きしめ、声を震わせながらいった。
「だからさっき言ったでしょ?証拠がない限り嘘か本当かなんてわからない。少なくとも君は本当だと思っているみたいだしね、これで嘘だったらなかなかのものだよ、役者になれる。まぁ、嘘か本当かは置いておいて、その子、怪しい所から金でも借りたのかな?それともストーカーされているとか…」
「いえ、そんなことはありえません。私の友達…かほ、夏に帆で夏帆って言うんですけど、夏帆はお金に困ってはないはずですし、あまり大きな声では言えませんが…私と同じでストーカーされるような顔ではないんです。学校ではあまり人と話さなくて、仲のいい人は私くらいですし、女子校なので男子とは縁がないです」
髪の触覚を指に巻きながら言った。
一条の隣に座っていた水無瀬は、「別にストーカーするのが男子だけとは限りませんが、その線は薄いですね」と呟いた。
「完全に無いとは言い切れないけど、他の可能性の方が高い。君は心当たりがないのかな?夏帆さんから何か聞いてない?」
「特に聞いていません。夏帆は本当に、普通の女子だったんです。どこにでも居るような。特にストレスを感じているような事もなかったですし。一週間前くらいに、突然学校を無断欠席したので、心配になって見に行ったら、「殺される」って言い出して…私にも当たってきて…」
女子高生の様子から察するに、大分当たりが強かったのだろう。今にも泣きそうな表情である。
一条は唇に指を当て少しばかり黙考すると、突然立ち上がり、こう言い放った。
「まぁ、私も医者ではないから精神病だった場合は何も出来ないけど」ニィッと唇を横に引いた。
「これは何かあるぞ。よし、夏帆さんに会いに行こうじゃないか」
ようやく探偵小説らしくなってきたかと思います。
なにせ小説を書くのが初めてなものですから、矛盾点等々たくさんあると思います。幼稚な文章で申し訳ありませんが、ぜひ、これからも本作品をお楽しみください。