21 物体操作
「殺…す?何言っているのですか?!その人は組織とも一条さんとも関係ない一般人!!無駄な殺しはあなたが最も嫌うことのはず!それなのに何故!」
ハァハァと息を切らしながら水無瀬は叫んだ。
「…こうでもしないと一条くんは名乗り出てこない。彼女を生かしてはおけないんだよ」
死んだ魚のような目で訴えかけた。
手の中の小刀にグッと力を入れ、無関係な一般女性というていの一条に突きつける。
一条は落ち着いていた。その顔には微塵の焦りも見えなかった。当然である。小刀一つ突きつけられたくらいでパニックになっていては、裏社会で生き残ることはできない。
だがここまで平然としていては逆に疑われてしまう。
一条も同じことを考えたのか、途端に表情を変えて声を上げ始めた。
「ひゃ!や、やめて下さい!離して!だ、誰か!助けて!」
今にも泣き出しそうな迫真の演技。身をよじり手足をばたつかせどうにか拘束を解こうと試みるが、この程度首領は痛くも痒くもない。小刀を持つ逆の手で一条の両手首を掴み,頭の上に上げた。ついでに片足を絡めて固定し、一条は完全に動けない状態となった。
「離して!やめっ
「五月蝿いよ。あまり暴れないで」
冷淡な声で言うと、握っていた一条の手首を放し、体を半回転させて回し蹴りを放った。
「ぐはっ」
一条は軽々と吹き飛ばされ,壁に叩きつけられた。
真っ白な壁に赤黒い血が飛び散り,まだら模様を作る。
吹き飛ばされた勢いでしばらく上を向いていたが、やがてぐったりと項垂れ,銀の髪飾りが音を立てて床に落ちた。
身体は動いていないが意識はあるようで、見開いた目だけがこちらを向けている。
…気づけば、水無瀬は首領の方へ一直線に走り,殴りかかろうとしていた。思い切り振りかぶり,引きつけられるように拳は首領の顔面へと向かう。
「入った」
そう思った。
が。
拳は木の板により完全に止められていた。よくよくみると会場のバーカウンターにあるテーブルの天板である。足と固定されていた部分は折られ、宙に浮いていた。いつまで立っても落下しない。物理法則を無視した現象。
これはー
「異能力ですか」
「大正解だ」
首領はにいっと笑った。
非合法組織「残影」の首領、月夜野 零。
能力:物体操作
面白い後書きかきてぇよ!




