栗原先輩との映画館デート
週末はあっという間にやって来て僕は今、着替えている。
友達と映画観に行く感じのイメージでいいんだよな?多分。
【透君とデートできるなんて夢みたいだよ】
という栗原先輩からの文面は冗談だと思っておく。
家に迎えに来てくれるらしいけど何で知っているのだろうか?
まぁいいや。とにかく今日も楽しもう!
毎日を楽しむ事が幸せへの近道だって僕は思っているから。
インターホンが鳴り僕は家を出る。
「おはようございます!栗原先輩!」
そう言って笑いかけると彼も微笑み返してくれる。
「おはよう。透君」
穏やかな彼の声はとても落ち着く。
映画館に着き、ポップコーンを一つ買う。
そうして映画が始まり僕はとても集中してみていた。
僕ー栗原 晃は今、隣で映画を観ている彼を見つめる。
嬉しい。また夢が一つ叶ったよ。
そばにいる。彼が傍に居るだけで幸せなんだ。
あわよくば手を繋ぎたいとさえ思ってしまう。
伸ばした手は慌てて引っ込める。
心を落ち着かせポップコーンを取ろうとした時にー
彼と手が触れた。
透君は「あっ!ごめんなさい」と呟いた。
「全然!大丈夫だよ」と僕も小声で返す。
むしろ嬉しい。
そんな事をいえば透君は引いてしまうだろうか?
どうか引かないでほしいと思うのはわがままだろうか?
映画は着々と進み、透君との時間も終わりが近づいていく。
嫌だな。もっと、ずっと傍に居たいのにな。
ずっと隣に居たい。
僕の想いも虚しく映画が終わると彼は帰ろうとする。
とっさに「昼ごはんそこで食べない?」と目に入った店を指さす。
長い沈黙の後「そこ、本屋ですけど?」と透君が言った。
あ!ほんとだ…。僕ってば何テンパってんだよ!
だけど彼は笑って「じゃあ本屋寄ってから昼飯もそこら辺で食べましょうか」と言った。
天使…自然にそう思った。
この子は僕の天使だ。
手に入らないのは分かっている。
それでも…今、この瞬間は君と笑いあって居たいと思うんだ。
神様、わがままな僕を許してください。
透君の優しさに今は甘えて居たいと強く思った。