隠世
目が覚めると神宮寺は和室に寝かされていた。
ここだどこかも分からず、先ほどの落下で記憶が混濁しているのか、何故自分がここにいるのかも分からないまま起き上がると、襖が開き、黒髪を長く伸ばした十代くらいの若い女性が出てきて、
「あら?、起きたのね」
と声をかけられた。
声をかけられたことがトリガーとなり、自分の身に何が起きたのかを鮮明に思い出すことができた。
「なあ、えーっと?・・・」
「永瀬椿、椿でいいわ。貴方は?」
「あ、あぁ、俺は神宮寺光だ、光でいい。それでここはどこなんだ?なんで、・・・俺はここに落とされたんだ?」
「落ち着きなさい、順を追って説明するわ。まずはここがどこかってことよね?ここは『隠世』、現世とあの世の狭間の世界よ」
「は!?あの世!?そんじゃあ俺し、死んだのか!?」
「言ったでしょう。狭間の世界と。貴方はちゃんと生きてるから安心しなさい。」
もう何が何だか分からなかった。
だが、神宮寺が混乱している間にも説明は続く。
「で、なんでここに落とされたかだったわね。貴方が遭遇したのは『神隠し』。現世とここの世界の間に時折開いてしまう空間の歪みみたいなもの、それに巻き込まれてしまったの。」
「マジかよ・・・ってかこれちゃんと元の場所に帰れんのか!?」
聞いた途端に長瀬の顔が曇り始める。嫌な予感しかしない顔はできればご遠慮願いたい。こちとら、まだ前提条件のインプットにすら手こずっているんだ。
「本当なら、きちんとした手続きをすれば通行できるんだけど・・・今、何故か分からないけど現世とここをつなぐ門が機能してないの」
「なんか原因とかってわかっているのか?」
「・・・それが何もわかっていなくて手詰まり状態なの。一応、原因を探っている際に倒れている貴方を発見して、何か知っていないかと思って保護したのだけれど・・・その様子なら、本当に何も知らなそうね」
と、その時何やらドタバタという大きな足音が聞こえ、襖が乱暴に開けられ勢いよく老婆が飛び出してきた。
「椿、椿はおるか!?」
「何?どうしたのおばあちゃん」
「この混乱に乗じて暴れ出す奴がいての。こうも同時多発的に暴れられちゃあ私一人では対処できん。少し手伝っとくれ」
「分かった。すぐに現場へ向かうわ。」
「あ、ちょっと待って、俺にも行かせてくれ。」
「何故?貴方がいても危険だし、正直足手纏いよ」
「まだ少し聞きたいことがあるんだ、それに囮くらいならできるだろ」
「・・・はぁ、分かったわ。でもいい?危なくなったら私を置いて逃げなさい。貴方がいない方が私にとって戦いやすいから、それでいいわね?」
「分かった」
事態を見守っていた老婆によって、神宮寺と永瀬は門付近に行くことになった。
それが大きな事件の火種になるとも知らず・・・
ちなみに永瀬椿の顔は大まかには決めていますが、主人公の顔は全く決めてません。