VS カエントカゲ
カエントカゲは王都から南にあるパレート荒野に生息している。
ここから更に南にいけば砂漠の国ラヴィータがあるが、今は用はない。
カエントカゲは繁殖力が高い上に頻繁に旅人を襲うから定期的に討伐依頼が出されている。
こいつは名前の通り、火に強い耐性がある。
【ファイアボールLv10】をもってしても大したダメージを与えられない。
そこで必要になるのが【アイシクルLv1】だ。
【ファイボールLv10】と違って多段ヒットの魔法じゃないから、威力はそこまで高くない。
ただしこっちは攻撃範囲と射程が広い。
ちょっとした範囲攻撃として活用できるから、Lv【1】でも習得しておけば役立つ。
後はこの【アイシクルLv1】で討伐しつつ、【魔力アップLv1】を上げていくのが近い目標だ。
【アイシクルLv1】で大丈夫かと問われると問題ない。
ウィザードなら魔法は満遍なく覚えたほうがいいと思っているプレイヤーが多かったけど、すべて習得しようとするのは悪手だ。
各属性が弱点の魔物が満遍なくいるわけじゃないし、微妙な魔法まで習得する必要はない。
現状、【ファイアボールLv10】だけでも基本的に戦えて、たまに【アイシクルLv1】がほしくなる程度だ。
火と氷の二つに耐性を持つ魔物なんて今は相手にする気はない。
カエントカゲ程度なら動き方次第で討伐できるはずだ。
オレは岩陰から奴らを見張っていた。
五匹まとまられているのはさすがにきつい。
あいつらの【ファイアブレス】は地味に多段ヒットだから、前衛クラスでも死ねる。
物理攻撃力と物理防御力もそこそこ高くて火傷状態にしてくるものだから、冒険者協会にいた奴らが恐れるのは当然だった。
前衛クラスが戦うなら火耐性装備は必須だろうな。
そう、前衛クラスは確かに強い。
だけどそれはお金を使えばの話だ。
中級者以上で装備が充実してくると確かに普通のウィザードはいらない子になる。
逆に言えば装備が整っていないと、なかなか格上を狩りにくい。
ウィザードなら魔法のおかげで近づかれる前に仕留められる。
もちろん状況を見極めないと即死だけど。
(よし、あいつだけ離れたな)
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カエントカゲ
Lv :45
HP :640
MP :0
使用スキル:【火属性攻撃】【ファイアブレス】
弱点:氷
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【アイシクルLv1】が範囲攻撃とはいえ、何匹もまとまられているのはきつい。
一匹だけになったカエントカゲに向けて【アイシクルLv1】を放った。
ダメージは大体三分の一ってところか。
攻撃した後、カエントカゲがこちらに気づいた。
のそのそを向かってくると同時にオレは障害物の陰に隠れる。
そして反対側の障害物からカエントカゲの後ろに回り込んで、更にもう一撃。
「キィアアァーーーー!」
「すげぇ鳴き声……止めだッ!」
オレはすかさず最後の【アイシクルLv1】でようやく仕留めた。
カエントカゲは物理防御は高いものの、魔法防御はそうでもない。
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ウィムはLv【32】 → 【34】に上がった!
クラスLvが【11】 → 【17】に上がった!
【火の鱗】をドロップした!
【トカゲの尻尾】をドロップした!
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ポイズンキャタピラーと違ってクラス経験値がおいしい。
しかし狙ったあれはドロップしなかったか。
準レア枠だからしょうがない。
リクがいれば簡単にゲットできたんだろうけどな。
いや、あいつのLvと装備じゃ危なすぎるか。
せめて装備を整えた上でLvが【40】以上はほしい。
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素早さ:3【+2】 → 【5】 UP!
SPを【5】消費して【魔力アップLv5】を習得した!
魔力補正が【+5】された!
【魔力アップLv5】以上習得により、新たに【術式研究Lv1】を習得可能になった!
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よし、きたこれ。
【術式研究】は弱点を突くと更にダメージが上がるスキルだ。
もちろんスキルLvを上げれば、よりダメージが上がる。
個人的にウィザードの要といってもいいスキルだ。
ステータスは引き続き素早さに振る。
動きの速さとしてはそこまで劇的な変化はない。
だけどほんの少しの差がウィザードの生死を分ける。
敵のモーションや動きを見切っても、素早さが足りてないと回避できないからな。
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SPを【1】消費して【術式研究Lv1】を習得した!
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【術式研究Lv1】で弱点を突くと追加で【1.2倍】のダメージが入る。
敵の耐性はそれぞれ200%、150%、100%、75%、50%、25%、0%の順で設定されていた。
通常の弱点ダメージでは150%か200%のダメージが入るところに【術式研究Lv1】による補正がつく。
【術式研究Lv1】だけでも相手によっては確殺数が変わるから、これを習得するかしないかではだいぶ違う。
更に【魔力アップLv5】になったことによって魔力も上がったからな。
こういう相乗効果があるのがウィザードの強さの一つだ。
引き続き岩陰に隠れながら、カエントカゲを狙う。
するとすぐにカエントカゲがいた。ただし二匹だ。
【アイシクルLv1】の範囲で同時に攻撃できるな。
確殺数は変わらないけど、素早さが上がったおかげでいけるはずだ。
意を決して【アイシクルLv1】で二匹同時に攻撃すると一斉に振り向く。
(うおぉぉ! 迫力あるぅ!)
二匹がのっしのしと向かってくるから、この距離でもう一発【アイシクルLv1】を放った。
さすがにもうこの距離で三発目は危ないな。
奴らが怯んだ隙にオレは旋回しつつ、時々一瞬だけ止まった。
【ファイアブレス】を撃たせるためだ。
隙を見せれば必ず放ってくるはずだ。
オレがピタリと止まった時、カエントカゲが口をかすかに開ける。
今だ! 下がれ!
その直後、二匹同時に扇状の【ファイアブレス】を吐いた。
すかさずオレは【アイシクルLv1】を二匹に放って止めを刺す。
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ウィムはLv【34】 → 【36】に上がった!
クラスLvが【17】 → 【21】に上がった!
【火の鱗】を2個ドロップした!
【トカゲの尻尾】を2個ドロップした!
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ふぅ、狙い通りだったな。
【ファイアブレス】は強力だが、放っている最中は身動きがとれない。
つまりこいつを討伐するには誰かが囮をしつつ、あえて【ファイアブレス】を撃たせるという戦術が有効だ。
ただし直撃したら無事じゃすまないから、囮役にも高いプレイヤースキルが求められる。
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素早さ:5【+2】 → 【7】 UP!
SPを【4】消費して【術式研究Lv5】を習得した!
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これでカエントカゲの確殺数が変わったはずだ。
カエントカゲの氷耐性は200%、つまり超弱点となっている。
こんなにもわかりやすい弱点があるのにウィザードがお呼ばれしないのがオレとしては納得がいかなかった。
薄々気づいていたけど、どうもウィザード冷遇に関してはこれでもかというほど情報が偏っているな。
ひょっとしてウィザードの強さに気づいた奴がこっそりと情報統制を行っている? なんてな。
そんな陰謀論なんて妄想してもしょうがない。
オレはオレのやれることをやるだけだ。
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