これからのウィザード
GVGの後の行動指針について考えていた。
上位クラスを目指すとなれば、いずれは王都を発たないといけない。
ウォーロックの転職場所は魔法都市クラバース。
オレが心配しているのはこのクラバースがどうなっているかだ。
何せゲーム以上にこの世界ではウィザードが徹底的に廃れている。
オレ以外のウィザードをまったく見ないほどだ。
シェリナさんに聞いたところ、クラバースは一応存在しているらしい。
ゲームだとウィザード協会本部があって、ウィザードが集まっていた。
王都のウィザード協会の支部を見る限り、本部のほうはどうなんだろうな。
あそこがないとそもそも転職自体が不可能だ。
というわけでGVGが終わって自分なりに休暇をとったオレは情報収集することにした。
目指すはウィザード協会王都支部だ。
行くのはオレがウィザードになった時以来だな。
それはいいんだけど王都を歩いていると視線がどうにも刺さる気がする。
「あいつだろ……鉄人団を潰したウィザードってのはよ……」
「メンバーの一人が一撃でやられたらしいが本当か?」
「俺が見ていたから本当だ。魔法の威力があんなに高いなんてな……」
なるほど、そういうことね。
あのGVGではクロスホープだけじゃなく、オレの名前まで売れたわけか。
そりゃクソザコのはずのウィザードがうっかり無双したんだから話題にもなる。
だけどこれで気づいたんじゃないか?
ウィザードは強い、立ち回り次第と装備次第で前衛にも負けないってな。
元々親父の無念を晴らすためでもあったけど、オレのためでもある。
ゲームでウィザードを死ぬほどやり込んだ身としてはそれなりに思い入れがあるんだ。
ビクビクしている冒険者に話しかけてクラバースについて聞こう。
「なぁ、聞きたいことがあるんだが。クラバースにウィザード協会本部はあるか?」
「あ、あぁ、あると思うぜ」
「ウォーロックへの転職が可能かどうかわかるか?」
「それは知らん……」
あると思う、か。
あってほしいんだけどな。
「そうか。ありがとう」
「え? どう、いたしまして……」
なんで意外そうな顔をするんだ?
オレがそんなに慇懃無礼な奴に見えたか?
見えたんだろうな。多少の自覚はある。
ウィザード協会支部は確かこの辺りだな。
あったあった。え?
「なんか綺麗になってないか?」
錆びついていた看板が綺麗になっていて、周辺の雑草が消えてなくなっている。
ドアに取り付けられている窓がしっかりと吹かれていて中が見えるほどだ。
おそるおそる中に入ると思わず声が出そうになる。
「あ! ウィムさん!」
「めっちゃ綺麗になってる……」
ウィザードになる際に受付をしてくれた女性が笑顔で迎えてくれた。
カウンターがピカピカに磨かれているし、テーブルや椅子が新しいものになっている。
しかも何人かが待機しているな。
「ウィムさん、ご活躍しているみたいですね! 少しずつですがウィザード希望者がやってきてくれました!」
「それはおめでたいですね。あの人達がそうなんですか?」
「はい。転職を終えたのはいいんですけどスキルの振り方に迷っているみたいで……」
「じゃあ少し伝授してきます」
ウィザード希望者に話しかけると一斉に立ち上がった。
その勢いに思わずオレがびびるくらいだ。
「ビックリした! 本物のウィムさんだ!」
「GVG、見てました!」
「ウィザードがあんなに強いなんて思いませんでした!」
なんとも目が輝いている人達が年下のオレを敬っている。
ついこの前までゴミのような目で見られていた時からは考えられないな。
これはオレが望んだ結果ではあるんだけど、いざ畏まられるとこっちも恐縮してしまう。
「今はスキル振りで悩んでいるんだって?」
「はい。ウィムさんの戦いで【ファイアボール】が強いことがわかったんですけど……」
「最初は【ファイアボールLv10】を目指せ。その後はだな……」
オレがウィザード志望者達にこれからの成長プランをすべて教えてやった。
スキル、狩場、装備品。ただしオレと同じルートじゃない。
例えばいきなりポイズンキャタピラーに挑んだところで殺されかねないからな。
それを踏まえた上で超初心者にもやりやすいプランを教えると、三人とも呆然としている。
人が教えてやったのにどうしたってんだ?
「なんていうか……ウィザードって奥が深いんですね……」
「そうだろう? だけど大切なのは誰かとパーティを組んだりギルドに所属することだな。さすがにソロはお勧めしない」
「パーティやギルドですか。受け入れてもらえるんだろうか……」
「そこまでは面倒を見切れないな」
クロスホープにも枠がないからな。
それにこいつらがどんな人間かどうかわからない。
安易に誰でも勧誘すればいいってもんじゃないから、さすがにそこは慎重になる。
「おぉ! ウィム君じゃないか! 来てくれたんだね!」
「支部長、お久しぶりです」
「ここに来てとんでもないステータスの振り方をした時は正気を疑ったがな! いやぁ悪かった悪かった!」
「そのとんでもないステータスこそが正解なんですよ。ところでまずはこれをどうぞ」
オレは支部長に寄付金を渡した。
これはゲームでもあったシステムで、各協会に任意で寄付できる。
寄付すれば額に応じて様々な装備やスキルの書をもらえる。
各協会は転職手数料の他にこれで運営しているといっていい。
とは言ってもほとんどの人間は寄付なんかしない。
一部の実力者が大金を寄付しているおかげで協会運営ができている。
「十万ゼル! こんなにいいのかい!?」
「いいんですよ。それよりスキルの書をください。十万ゼルならあのスキルの書がもらえるはずです」
「あ、あぁ、よく知ってるね。ちょっと待っていてくれ」
支部長がスキルの書を持ってきてくれた。
本の表紙には【魔力暴走の書】と書かれている。
「よしよし、これが欲しかったんだ」
「魔法でクリティカルが発生するようになるパッシブスキルだが、確率は低かったはずだぞ」
「【ファイアボール】みたいな多段ヒットスキルなら判定が複数回あります。それにこれを覚えれば器用さによるクリティカル率が反映されるんです」
「マジかぁッ!」
唾を飛ばして叫ぶほど衝撃の事実だったらしい。
そう、器用さはわずかながらクリティカル率が影響している。
通常だと魔法のクリティカルは発生しない。
だけど【魔力暴走】を習得することによって物理攻撃と同じクリティカル判定がされるようになる。
器用さなんてちょっと振ったくらいじゃクリティカルにほぼ変化はない。
だけどオレは器用さにかなり振っているから、多少はクリティカル率が上がっているはずだ。
「はぁーーー! 驚いたなぁ……」
「ところで支部長。魔法都市クラバースの本部でウォーロックへ転職させてもらえるんですか?」
「もちろんだ。クラバースを目指すのかい?」
「まだ上位クラスへの転職条件を満たしていないので、いずれの話ですね」
「そうか。本当に頼もしいな。本部は君を歓迎するだろう」
それを聞いて安心した。
これでクラバースを目指せるな。
上位クラスを目指しているのはオレだけじゃない。
クロスホープの面々も着実に力をつけている。
そんな中、オレだけ無理でしたなんて考えただけで恐ろしい。
何にせよ止まっている場合じゃないのは確かだ。
これからも転生魔術師のオレが無双して見せよう。
fin
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