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ポイズンキャタピラーの繭

━━━━━━━━━━━━

名前   :ウィム

クラス  :ウィザード

Lv   :27

クラスLv:9

HP   :156

TP   :298  クラス補正+5

力    :1

体力   :1

器用さ  :27

魔力   :8  クラス補正+3

速さ :1


装備 :布の服


スキル:【ステータス】【ファイアボールLv10】【ブラインLv1】

━━━━━━━━━━━━


 ポイズンキャタピラーでレベリングしたおかげで、魔法の詠唱速度が速くなった。

 詠唱速度が速くなるってことは接近される前により迅速に処理できるようになったということ。

 それだけじゃない。

 魔力には一切振っていないのにほぼ一撃で倒せるようになっていた。


 【ファイボールLv10】になり、ヒット数が【10】になったおかげで威力が格段に上がっている。

 ポイズンキャタピラーの火が弱点のおかげで、【1】ヒットごとに判定があるからよりダメージが大きい。

 これがウィザードの強さの一つだ。


 敵の弱点さえ把握しておけば、同レベルの前衛クラスが相手にしにくい魔物を狩ることができる。

 少なくとも序盤に限れば前衛クラスじゃこうはいかないだろう。

 武器や防具をきっちり揃えたとしても、ポイズンキャタピラーを倒すには更に回復アイテムが必要になるからな。

 プレイヤースキル次第ではカバーできるが、そんな奴は少ない。


 オレの場合、素早さには一切振っていないから動きがかなり遅かった。

 素早さにも最低限、振る必要があるな。

 最低限の動きさえできれば、後はオレのプレイヤーとしての勘でカバーできると信じている。


 この狩場の唯一の難点はクラスLvの上がりにくさだ。

 ポイズンキャタピラーのクラス経験値が低いから、このままだとLvとどんどん引き離される。

 とはいえ、上位クラスへの転職なんてまだまだ先の話だから問題はない。


 アイテムのほうも溜まったな。

【ねっちょりした体液】が【8】個、【グリーンハーブ】が【5】枚か。

 これを売れば金策になるはずだ。


 売った金で最低限の装備を整えて魔力を上げよう。

 理想で言えばレア装備や装備に組み込むレア魔石を考えると気が遠くなりそうだが一歩ずつだ。


「ん? 他の冒険者が戦っているな」


 町へ帰ろうと歩いていると、誰かが戦っている。

 頭にバンダナを巻いたオレより年下の少年だ。

 短剣で素早く何かを斬りつけている。


 あれはもしかして――


「おいっ! そのペースじゃ孵化が始まるぞッ!」

「え……」


 オレが叫ぶと同時に少年シーフが攻撃したものが揺れる。

 まずい。オレは走って少年シーフの腕を引っ張った。


「な、なにすんだよ!」

「お前、ポイズンキャタピラーの繭を攻撃してただろ! こいつが孵化すると面倒だぞ!」

「孵化!?」

「離れろ!」


 オレは少年シーフの手を強引にとってこの場から離れた。

 できるだけ走ったところで呼吸を整える。

 ウィザードの体力で無茶してしまったな。だいぶ苦しい。


「ハァ……ハァ……おい、お前もしかしてあれのレアドロップ狙いか?」

「そ、そうだよ。オイラにはどうしても必要なんだ」

「確かにシーフなら【盗む】のスキルがあるが、残念ながら魔石は盗めないんだよ」

「えぇーー! そうなの!?」


 この反応からして【盗む】のスキルで少年シーフは魔石を狙っていたようだ。

 魔石とは魔物が稀にドロップするレアアイテムで、様々な効力がある。

 例えばあの繭の魔石の効果は鎧につけるもので【HPが+500される】だ。


 これを前衛クラスの鎧に組み込むとかなり頼もしくなる。

 市場価値もあるのでかなりの額で売れるし、魔石狙いで狩るプレイヤーも多かった。


「あの繭は基本的に何もしてこないけどな。モタモタしていると孵化するんだ」

「孵化したらどうなるの?」

「それは……あ」


 遠くから蝶の魔物が飛んでくる。

 逃げるのは簡単だが、オレとしてはそうしたくない理由がある。

 

「な、なんだよ、アイツ!」

「あれはベノムフライ。Lvは【41】、回避率が高い上に広範囲に毒をまき散らしてくる。おまけに緩慢な動きで回避もしにくい」

「や、や、やばいよ! どうしよう!」

「もっとも性質が悪いのは繭の時に攻撃をしかけた冒険者を追跡する習性がある。やるしかないな」


 腰を抜かした少年シーフを放置して、オレは立ち向かう決意をした。

 オレだけならともかく、こいつと一緒に逃げるのは無理だ。

 それにあれを放置したら他の冒険者が襲われる。


 前の世界でのゲーム内で孵化させるだけ孵化させてトンズラこく奴がよくいた。

 おかげで狩場が蝶だらけになり、中級者以上のパーティが討伐に向かう始末だ。

 ここでオレが逃げたら他の冒険者に対して迷惑行為をしてしまうことになる。


 ハッキリ言ってあいつはおいしくない。

 そこそこ強い上に何がもっともひどいかって、あいつは魔石含めてドロップアイテムがあまりおいしくない。

 【蝶の羽】と【鱗粉】はそこそこの金になるけど、これらはこいつ以外もドロップする。

 魔石の効果は鎧に対応したもので【素早さ+3】、舐めてんのか。

 このように魔石が必ずしも役立つとは限らない。もちろん市場価値もほぼないに等しい。


 これはトラベルファンタジーの残念な点の一つだ。

 近年ではかなりマシになったものの、まだこういう存在意義がわからないものが多い。

 この世界でどの程度情報が共有されているかわからないけど、これを初めてドロップした人はどんな顔をしただろうな。


「お前、Lvは?」

「えっと、【21】かな」

「さすがにそのLvじゃ無謀だ」

「でもオイラ、ギルドの役に立ちたいんだ。オイラのギルド、悲しいことがあってガタついてて……」

「そうか。でもお前がここで無茶をして死んだら、もっと悲しいことになるだろ」


 少年シーフは反省した。

 そうこうしているうちにベノムフライが近づいてくる。

 あと少しでファイアボールの射程圏内だ。


 幸いあいつの弱点は火、今のステータスなら何発か打ち込まなきゃいけないな。

 問題はあの動きだ。ああいうヒラヒラと飛んでいる魔物の動きに対応できるかどうか。

 こんなことなら素早さにも少しくらい振っておけばよかったか。


「お前は逃げろ。ここはオレがやる」

「え!? でもウィザードだよね! 無理だって!」

「無理な事態を招いたのはお前だし、オレが尻ぬぐいをしてやるって言ってんだ。『オイラが戦う!』はなしな。お前ならたぶん一発で死ぬ」

「ゾゾォーーー!」


 少年シーフの前に立って、バッサバッサと飛んできたベノムフライを見据えた。

 射程圏内に奴が来た時、ファイアボールを浴びせる。

 オレの先制攻撃でベノムフライがばたついて、あちらこちらが燃えた。


「さぁこいよ。お前の動きは知ってるんだよ」


 こうなったらあいつの動きを予測しながら動くしかないな。

 緩慢な動きでやりにくいけど、オレなら素早さ初期値の速度でギリギリやれる。

 廃人の力を見せてやろう。

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