GVG VS鉄人団 4
大将はあのビルキットとかいう奴か。
守備についてるのはブランタークとデッセン、いいねぇ。
特にデッセン、オレはお前に用があるんだ。
「お、お前ッ! ガーディアンとトラップはどうした!」
「あんなもん動きさえ知ってりゃ余裕だ。トラップもすべて位置を把握してりゃ問題ない」
「把握だと! そんなことできるのか!?」
「できるんだよ。お前みたいにろくに経験がなけりゃ想像できないだろうけどな」
あそこで吠えているビルキットぼっちゃんの装備を見てよくわかった。
どれも高級装備には違いないが統一性がなく、目的が見えない組み合わせだ。
支援特化型なのか殴りなのか不死殲滅型なのかハッキリしない。
オレの予想が合っていればたぶんこいつは養殖産だ。
誰かにくっついてレベリングしたのはいいけどプレイヤースキルが伴わない役立たず。
特にヒーラーやプリーストは支援の腕を磨かなきゃいけないから、養殖産はガチパーティやガチギルドだと嫌われる。
身に着けているのはドラゴンローブか。
豊富な耐性があるいい防具だけど、支援特化型なら選択肢には入らない。
かと思えば兜は賢王の冠、魔力とヒールの回復量が増える優れもの。
アクセサリに至っては、いや突っ込んでもしょうがないな。
「ト、トラップを把握……何者だ……そんなもの、上位ギルドにも何人いるか……」
「ブランタークさん、あんたも薄々気づいてるんだろ? 自分が乗ってるのが泥船だってな」
「ぐっ……!」
ブランタークが悔しがりながらも武器を構える。
まぁやるしかないよな。
ブランタークに対してシェリナさんとユユルがつく。
実力的にはシェリナさんだけでいい勝負をするだろう。
だけどあっちにはビルキットという支援役がいる。
あのお坊ちゃんがヘタクソだろうと、回復を考えたら二人がかりが妥当か。
「ユユル! 貴様、拾ってやった恩を忘れおって!」
「ろくに装備もLvもないのに無茶な支援ばかりさせて罵倒されて食事も少ないしどこに恩を感じればいいんですか!」
「こ、こいつ! なんて口の利き方を!」
「もうあなたに怯えていた私はいないんですぅ! てりゃあぁーーー!」
「うおぉ! な、殴ってきた! 殴ってきたのかぁ!」
ブランタークの奴、殴りヒーラーにびびってるな。
ブランタークは片手剣の重装型のナイトだけど、【ヘヴィストライク】が直撃したら只じゃすまないぞ。
それにシェリナさんの猛攻に加えて耐えられるかな?
「おい、クソウィザード! 調子に乗るのも大概にしろや!」
「おう、落ち武者野郎デッセン。お前にはまだ謝罪してもらってないな。覚えているか?」
「カエントカゲの時のことかよ! 根に持ちやがって!」
「お前にとっては大したことなくてもオレはムカついてんだよ」
シェリナさんと事前に話していた通り、こいつはオレがやる。
地竜の剣なんか装備しやがって。
対人戦の適正としては低くはないが他になかったのかよ。
それに魔石が何もセットさせてないな。
「こいよ、デッセン。謝罪の仕方もわからないならオレが教えてやるよ」
「ほざけぇッ!」
デッセンが勢いよく斬りかかってきた。
オレは体を逸らして回避して、足を引っかけると盛大に転ぶ。
「ぐわっ!」
「ウィザードなら楽勝とでも思ったか? 本気でこいよ」
「クソッタレェ! 【ヘヴィスラッシュ】!」
こいつのヘビィスラッシュは異様に遅い。
発動もスキル自体の速度も遅い。
後ろに下がって軽くかわすと、デッセンが意外そうに睨んでくる。
ゴブリンレイドの時から思った通りだな。
「お前、力以外ほとんど振ってないだろ。器用さも素早さもほとんど初期値だな?」
「だったら何だってんだ! 前衛なんて力さえありゃ十分だろ!」
「知ってるか? どんな攻撃だろうと当たらなければどうということないんだよ」
「うるせぇッ!」
遅い【ヘヴィスラッシュ】の連発なんてウィザードのオレでも回避可能だ。
何せこいつ、今は致命的なデメリットを抱えてしまっている。
「あ、当たりさえすれば……!」
「お前さ。その地竜の剣の適正Lvにとどいてるか?」
「なにッ!?」
「確かそれの適正Lvは60だったはずだ。足りてないと素早さが大きく落ちる上に攻撃力も落ちたはずだ」
オレの言葉にデッセンが愕然としている。
こいつ、マジで何も知らなかったんだな。
こんなものを押し付けた奴も悪いが、自分の頭で考えられないこいつにも責任がある。
装備の効果はきちんと調べないとな。
「ク、クソッ……じゃあ、今のオレは……」
「だから言っただろ。お前が気をつけないとなって。じゃあ、そろそろこっちから行くぞ。アイシクルッ!」
「づああぁッ!」
デッセンを氷が覆った。
冷気によってダメージを受けたデッセンを少しだけ放置しているけど、まったく支援がない。
ビルキットを見るとブランタークへの回復で手一杯みたいだ。
「ビルキット様! か、回復をお願いします!」
「またか! いつになったらそいつらを倒せるんだ!」
「おーい、ビルキット。デッセンもピンチだぞー」
シェリナさんとユユルによる攻撃でブランタークが追い詰められている。
ブランターク一人の回復すら満足にできていないのか。
ビルキットがしっかりしていればこの戦い、まだ勝機はあったのにな。
どう見てもデッセンを回復している余裕がない。
「ううっ……ビ、ビルキット様……」
「デッセン、オレのファイボールはLv【10】だからクソ痛いぞ。ちなみにお前のHPなら【10】は耐えられんな」
「わ、悪かった! 謝る! オレがバカだった!」
「言えたじゃねえか。よし、止めだ」
デッセンがビルキットのほうへ逃げていくけど遅い。
「ファイアボール」
「うぎゃあぁぁーーーー! チクショオォーーーーーー!」
【ファイアボールLv10】がデッセンに浴びせられて光となって飛んでいく。
思った通り、あいつの装備には魔法防御力がほとんどない。
せっかくの地竜の剣も当たらなきゃ追加効果が発動しないんだよな。
「さて、あっちはどうかな?」
シェリナさんとユユルの二人が善戦している。
ユユルがシェリナさんと自分を回復しつつ【ヘヴィストライク】でたまにスタンさせているのがでかいな。
シェリナさんの単体の槍スキル【トリプルトラスト】は多段攻撃で、しかも武器には人型特攻の魔石がセットされている。
対してブランタークは他の連中よりまともな組み合わせの装備だけど、人型対策はしていない。
二人の攻撃がもろに直撃してブランタークはスタン状態でふらついていた。
「ううう! ヒ、ヒールを……!」
「ファイアボール」
「うぎゃぎゃあぁぁ!」
ビルキットが【ファイアボールLv10】を受けると、もだえ苦しんで転がった。
痛いだろうな。特に甘やかされたお坊ちゃんには耐えがたいだろう。
「いたいぃ! へ、平民のくせに僕に何をしたぁ!」
「ブランタークに加えて自分の回復もしないとな」
「あ、あ、あう!」
ビルキットが混乱している間、シェリナ、そしてユユルがブランタークに武器を向けた。
ビルキットとしてはどっちを回復していいのかわからず、結局なにもできずにいる。
これだから味方の支援は難しい。
「ユユル! 待て! 話し合……」
「てええぇりゃああぁーーーーー!」
「がっはぁぁ!」
ユユルの【ヘビィストライク】がブランタークの頭に直撃した。
ふらついた後、ブランタークが倒れる。
光になって飛んでいく様子をビルキットがオレ達と一緒に見守っていた。
「いや、お前はぼーっとしてちゃダメだろ」
「え? あ、あ……」
「残るは大将のお前だけだな。TPが許す限り回復していいぞ。こっちはまだ余力がある」
「こんな、こんなことが許されていいのか! 僕はブルデロン家の長男だぞ!」
「うるせぇ!」
戯言をのたまっているビルキットにオレとシェリナさん、ユユルの三人で襲いかかった。
「歯を食いしばりやがれッ! ファイアボール!」
「ヘビィストライク!」
「トリプルトラストッ!」
ビルキットに回復する余裕なんてあるはずもなく、オレ達の猛攻を浴びた。
さすが上位クラスだけあってHPが高くてなかなかしぶとい。
だけどこいつの心はとっくに折れているみたいで、ほとんど無抵抗だった。
「痛い……助けて、よぉ……」
最後は情けない一言を残してビルキットがようやく光になった。
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鉄人団の大将が倒れました!
クロスホープの勝利となります!
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「よっし!」
「二人とも、やったな!」
「ウィムさん、シェリナさん! わ、私達、勝ったんですね!」
勝利のアナウンスが流れた途端、オレ達三人は抱き合って喜びを分かち合う。
無事クロスホープのGVG初陣の初勝利を飾ることができた。
ここにいない仲間達も喜びを噛み締めているに違いない。
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