GVG VS鉄人団 3
「遅すぎる……」
鉄人団の砦にてビルキットは苛立っていた。
彼が鉄人団のメンバーに買い与えた装備はどれも百万単位の高級品だ。
どれも上位のギルドで使われている装備ばかりで、クロスホープの資産力では到底揃えられない。
ビルキット自身もそれに相当する装備を身に着けており、クロスホープを完全に見下していた。
上位クラスがギルドマスターただ一人、他は下位クラスの上に弱くて有名なウィザードまでいる。
その時点でギルドマスターの見る目がないのは明白であり、取るに足らない相手と踏んでいた。
そんな弱小ギルド相手に未だ決着をつけられないことがビルキットは信じられなかった。
今回の鉄人団の大将はビルキットだ。
護衛としてブランタークとデッセンが残っており、砦の入り口にはLv【70】のガーディアンがいる。
守りとしては不足なし、後は攻めるのみ。
そう考えていたビルキットの下にはいつまでも勝利報告がない。
GVGは決着がついた時点で魔法空間内や観戦場にアナウンスされる。
鉄人団から攻めたのは六人。
ハイレベルの装備を身に着けた六人ならクロスホープなど敵ではない。
そう考えていただけに、ビルキットはついに壁を殴った。
「弱小ギルドの制圧にいつまでかかっているんだ! ブランターク! 説明しろ!」
「そ、そう言われても、私にも何がなんだか……」
「お前の手下は無能か! まさか逃げ出したわけじゃないだろうな!」
「て、手下とは……」
ビルキットの物言いにブランタークは違和感を覚えた。
横暴な振る舞いが目立つ彼であり、手下のように扱ってきたのは事実だが他の人間に言われると腑に落ちない。
ブランタークはビルキットに反論しかけたが言葉をのみ込んだ。
そんな時、デッセンがブランタークに耳打ちした。
「ブランタークさん、これまずくないっすか?」
「う、うむ。しかし砦攻めは時間がかかるのも事実である」
「だけどあっちの砦Lvはたった【3】ですぜ。あいつらの装備なら秒で倒せますよ」
「ううむ……もう少し待ってみるである」
無駄に時間だけが経過していき、ブランタークも焦っていた。
アナウンスがないだけではなく、ここにいるビルキットの機嫌を損ねるのも恐ろしかった。
彼を怒らせるということはウルデンを怒らせるに等しい。
王都のいくつもの店の経営権を握るウルデンに睨まれてしまえば、消耗品の入手などが厳しくなる。
ただし逆にウルデンに気に入られたら安く商品を買えることがあった。
つまりこれはブランタークにとってもチャンスのはずだった。
(そういえばあのウィムとかいう小僧、ビルキット様のお父上を怒らせていたであるな。身の程知らずめ)
心の中で悪態をついた時、ハッとなって気づいた。
ウルデンを怒らせておいて、ウィムのギルドは問題ないのか?
そんな疑問が湧いてしまった。
もしウルデンからの制裁を受けていればクロスホープの消耗品の供給先は絶たれる。
それにも関わらず獣の穴攻略を成し遂げたことがブランタークには理解し難かった。
ちらりとビルキットの顔を見るが何も答えは出ない。
「ブランターク。僕が大好きな言葉は予定調和だ」
「は、はぁ、そう、ですか……」
「高貴な身分として生まれた僕が恵まれた人生を送るなんて誰もがわかる。つまり予定調和でしかないだろう?」
「は、はい……」
「この僕がプリーストになれたのもそうだ。パパが用意した高Lvの人間が僕に奉仕したおかげだ。僕のような人間が下位クラスでいるなんて一瞬たりとも許されないからね」
何を言いたいのかブランタークにはわかっていたが聞くしかなかった。
要するに思い通りにいかなくて機嫌が悪いということ。
高Lvの人間のおかげで上位クラスになれたこと。
そこにブランタークのかすかな違和感への答えがあった。
(で、ではこのお方はまさか……)
考えたくなかった悪い予想が当たってしまったかもしれない。
ブランタークは冷や汗をかいた。
もしかして自分はとんでもない船に乗ってしまったのではないか、と。
「ところがこの惨状はどうなっている? なんで未だに鉄人団勝利のアナウンスが流れない?」
「それは……うちの者達が不甲斐無くてすみませぬ……」
「僕があれだけ高価な装備を買い与えてやったお前の手下が結果を出せなかった。つまり僕の失態だと?」
「いえいえ! 滅相もありませぬ! すべては我々の不手際であります!」
ブランタークはすでに理解していた。
装備がよければ勝てるほどGVGは甘くない。
ましてやあのクロスホープは短期間で目覚ましい成果を上げた。
それはまぐれでも何でもなく、メンバーの努力があったおかげだ。
そこにはウィムの影響が少なからずある。
見下していたウィザードの少年がクロスホープを変えた。
ブランタークはそう仮説を立てた。
(今まで何の噂もなかったクロスホープが台頭してきたと同時に、あの見慣れないウィザードの小僧が現れた……そう考えるのは不自然であろうか?)
ブランタークはかつてのギルドの光景を思い浮かべた。
先代は歯に衣着せぬ物言いでギルドメンバーを甘やかすようなことはしない。
時には手が出ることもあった。そんなギルドマスターに嫌気が差していた。
そんな先代が病死してギルドマスターに就任した時、ブランタークは内心喜んだ。
これからは自分の時代であり、鉄人団を思い通りに作り変える。
意にそぐわないメンバーはすべて追い出した。
残ったのはデッセンを含めたイエスマンばかりだ。
ブランタークはこれでいいと思った。
自分の思い通りにさえなれば鉄人団は更に強くなれる。
そう信じて行動した結果がこれでは先代の墓にどう報告すればいいのか。
ブランタークは次第に己の行動に対して疑問を抱いていた。
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鉄人団のガーディアンが倒れた!
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「なっ! 冗談だろう!」
ブランタークは狼狽した。
鉄人団勝利のアナウンスが流れないばかりか、Lv【70】のガーディアンが倒されてしまう。
逆に攻められているなどと、この段階をもってしてもブランタークは考えていなかった。
「おい! ブランターク! ガーディアンはLv【70】じゃなかったのか!」
「ご、ご安心ください! 砦内には数々のトラップがあります!」
「フン! まったく使えない連中だ! やっぱりこの僕が出るしかないみたいだな!」
「お待ちください! 大将はこの部屋から出ることはできません!」
「なんだと!?」
そんなことも知らないのかとブランタークは呆れた。
その時、部屋の扉が爆風に巻き込まれたがごとく破壊される。
ブランターク、ビルキット、デッセンの三人が入口を見た。
「さすが砦Lv【7】だな。扉もなかなか硬い」
「ウィムはマナポーションを飲んでおけ。私とユユルが粘っておこう」
「ブ、ブランタークさん! いざ、いい、い、いざ勝負でぇす!」
ウィムとシェリナ、ユユルが砦の最深部にまで迫った。
あまりに早すぎるとブランタークは思うも、口に出せない。
更にごついメイスを両手に持ったユユルが挑戦しに来たのだから、思考が追いつくはずもなかった。
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