GVG VS鉄人団 2
クロスホープの二人、リクとフーイーはウィム達から離れて行動していた。
ウィムを本隊とした場合、二人は別動隊の役割を果たす。
正面から攻めてきた鉄人団の三人とは別に新たにやってくるメンバーを迎え撃つためだ。
木の上に陣取ったリクは注意深く周囲を観察する。
これもウィムから与えられた役割だ。
ウィムはクロスホープにやってきて日が浅いが、リクの特性を見抜いていた。
リクは直接的な戦いよりも他人の目を盗んだり潜むことに長けている。
圧倒的な物量での戦いだったゴブリンレイドで生き残ることができたのは、そのためだ。
敵味方の目を欺いて敵の死角から奇襲するなどはリクの得意分野だった。
ある時は人間を隠れ蓑にして戦場を移動していた。
ゴブリンレイドに挑むにはLv不足だったリクの戦いを見ていたウィムがいたからこそ、今の役割がある。
ウィムはシェリナにリクのことを話していた。
直接戦ってもらうよりも好きに動いてもらったほうがいい、と。
シェリナが承諾してリクには戦場を見てもらっていた。
ウィム達が無事に鉄人団の三人を倒したのを見届けると、新たにやってくる男を発見する。
(一人か。あいつもシーフっぽいな)
虐待する両親から逃げた彼は食べ物を得るために町で盗みを繰り返していた。
誰にも見つからなかった日々を送っていたがついにシェリナに腕を掴まれる。
こんなことを繰り返していたらいつか絶対に捕まると諭された。
クロスホープに入ってからは食事を与えられて、人間らしい生活を送ることが出来ている。
初めて人間らしい扱いを受けたことで、リクはクロスホープが自分の居場所だと確信した。
仲間を失う悲しい出来事があったものの、ウィムを初めとして自分を必要としてくれる人間がいる。
リクはそんなギルドメンバーに尽くそうと常に考えていた。
そして今、森をうろつく男を視界に捉えている。
木の上から素早く下りた後、林に潜んで男を待ち構えた。
リクは人をよく見ている。
彼は自分を痛めつける両親の機嫌をうかがっているうちに生きる術を身につけてしまった。
どんなことをすれば怒られないのか、どうすれば危険から逃れられるのか。
足運び、視線の動き、移動先。
それが泥棒となっても活かされる。
元々備えていた天性もあるが、ほぼ環境によって身に着いたといっていい。
男はクロスホープの砦へ向かっている。
ちょうどリクが隠れている横を通り過ぎた時だ。
リクが飛び出して背後から足首をナイフで斬りつけた。
「うぐあぁっ! ガ、ガキがぁ!」
「急所が丸出しだよっ!」
足を斬られたことで自重を支えられなくなった男が地面に膝をつける。
大人が相手でもこうなれば、男の首にリクのナイフが十分届く。
ナイフで首を斬ったところで、男が光となって魔法空間から飛び出していった。
(ふぅ……。あいつ、兄貴達が出ていって手薄になったところを見計らっていたなぁ。手薄になったら必ず少ない戦力で来るって兄貴が言ってたっけ)
一人倒したものの、リクは安心していなかった。
鉄人団のメンバーは全部で九人。
ウィム達が三人倒してここで一人、合計四人。まだ残り五人いる。
リクは慎重に移動を始めた。
クロスホープの砦にまでやや後退しつつ見渡すと、新たに二人を発見する。
ソードファイターとウォーリアの男だ。
さすがに奇襲したところで二人は無理だと判断したリクだが、近づくのをやめない。
二人とも高級な防具を身に着けているから、どこかに潜んでいるフーイーと二人で戦おうと決めた。
(それにしてもすごい装備だなぁ。ウォーリアのあいつなんか、だいぶ重そうだけど大丈夫かな?)
リクの疑問通り、ウォーリアの男は少しもたつきながら歩いている。
ソードファイターの男がそれにイラついている様子を見せていた。
「おい、もう少し早く歩けないのかよ」
「はぁ……はぁ……この装備が重くてな。だがその分、物理防御力は高いぜ」
「確かにな。あのクソウィザードと出くわさなきゃお前一人で片付く。あと少しで奴らの砦だ」
「そのクソウィザードは間違いなくオレ達の砦を攻めるぞ。ブランタークさんがそう言ってたからな」
ブランタークの読みは当たっていた。
ブランタークとデッセンに怒りを示していたウィムは必ず砦に攻める。
腐っても老舗ギルドのギルドマスター、その読みは冴えていた。
その様子を見ながらリクは疑問に思っている。
ウォーリアが重そうにしながら身につけている装備についてだ。
GVG開始前、ウィムが言っていたことをリクは思い出す。
――装備の中にはLv制限があるものがあってな。
指定Lv以下だと装備はできるものの、著しいデメリットが付与される。
デメリットは装備によって様々だけど、極端に重くなるものがあるな。
あいつらの中に高Lv制限の防具を身に着けていた奴がいたけど、Lvが足りてるのか?
まぁブランタークが止めないはずはないだろう、とウィムは続けていた。
しかしウォーリアの男を見て、Lv制限のデメリットを受けているとリクは考える。
だとすれば、とリクは二人に一気に距離を詰めた。
砦にはメルチャ一人だ。
攻められてしまえば一瞬で落ちて負けが確定してしまうということで、リクの心臓が高鳴っていた。
二人の死角を取りつつ、まずはソードファイターに接近を試みた時だ。
「ぐあぁっ! や、矢がッ!」
「なに! あ、あそこにアーチャーの女がいるぞ!」
ソードファイターの男が指した先には弓を構えたフーイーがいた。
リクですら直前までそこにいると気づかなかった。
「チクショウ! ぶっ殺してやる! ぐああぁっ!」
「オ、オレに任せろ! この鎧の物理防御力なら矢なんざッ! ぐぅっ!」
二人がフーイーに接近しようとするが、次々と放たれる矢に阻まれてしまった。
先に倒れて光となって退場したのはソードファイターの男だ。
「クソッ! オレ一人かよ! だが、ここまで近づけたぜぇ!」
ウォーリアの男が血だらけになって矢が刺さりながらも、フーイーに接近していた。
男が斧でフーイーに攻撃を試みるが、直前で矢が刺さる。
「う、ぐ……あと、少し……だったのに……」
ウォーリアの男が魔法空間から退場した。
ギリギリで仕留めたフーイーだが顔色一つ変えずにまた周囲の観察を始める。
「フ、フーイーねーちゃん。危ないところだったね」
「そうでもないよ」
普段はオドオドしているフーイーだが、今は静かにハッキリとそう答える。
リクは理解した。
フーイーはギリギリ仕留められる距離だとわかった上で攻撃した、と。
相手の耐久力などを考慮して仕留められる距離を取るのがどれほどの離れ業か、リクでもわかる。
それも一度に二人を仕留めたとあって、リクはフーイーを見上げながら生唾を飲んだ。
「ね、ねぇ。フーイーねーちゃんって前はどこにいたの?」
フーイーは答えない。
気がつけばリクは数メートルほど距離を空けられていた。
フーイーは優秀なアーチャーだ。それはリクもわかっている。
唯一、あれは何とかならんのかと愚痴を言っていたウィムの気持ちをなぜか今になって理解した。
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