GVG VS鉄人団 1
GVGは冒険者協会の敷地内にある魔法空間で行われる。
森が多めで砦が二つ、それが今回のGVGの部隊だ。
ここでは致命傷を受けた時点で離脱する仕組みになっていて、外部からの干渉もできない。
つまり応援の言葉やアドバイスは届かないから純粋に戦いに集中できる。
ルール自体は互いの砦に攻め入って大将を倒したほうの勝ちというシンプルなものだ。
この砦はギルドポイントによって上げられるギルドLvによって増築されて守りが強化される。
ギルドLvが高くなるとトラップが増えたりガーディアンが強くなるから、対人戦を意識したギルドなら上げない手はない。
クロスホープの砦Lvは【3】だ。
このLvだとトラップが追加されてガーディアンのLvは【30】、まぁ手強くはない。
今までのギルドポイントをすべて費やしてこれだ。
つまり砦Lvはそれだけ多くのギルドポイントを消費する。
あちらさんはまぁさすが老舗ギルドだけあってすごいな。
さすがに砦Lvは【7】、ガーディアンのLvは【70】だ。
それにトラップの数も多いだろう。
聞けばブランタークの先代がなかなか頑張ったらしい。
「兄貴、これって他の人達も見てるんだよね?」
「観客席でこちらの様子が特別な魔晶板に映し出される。ただしあちらからの声なんかは届かないから緊張する必要はないぞ」
「うーー! 緊張するっ!」
まぁ誰かに見られていると考えると確かにそうかもな。
オレの場合はむしろ見てくれって感じだ。
観客の中にはウィザードを舐めた奴もいるだろうから、ここで活躍しておきたい。
忘れちゃならない親父の無念を晴らすってやつだ。
「あー、緊張するわー。大将は重荷やでー」
「メルチャ、お前の出番はたぶんないから安心しろ」
「これって完全に置物やん。テンション下がるわー」
「だったら攻めるか?」
「クロスホープの大将として立派に砦を守ったるで!」
楽できるんだからメルチャとしては文句ないだろう。
そう、今回のフォーメーションはこうだ。
メルチャを大将として、他は全員で攻める。
敵の装備と砦Lvがとんでもないことになっている以上、後手に回るのは危ない。
ビルキットとかいう貴族のお坊ちゃんが未知数だしブランターク上位クラスだ。
敵に上位クラスが二人ってのがなかなかしんどいそうに見えて勝算はある。
「よし、それでは手筈通り各チームごとに分かれて突撃する」
「シェリナさん、頼むぞ」
「あぁ」
間もなくGVGが始まるはずだ。
そして魔法空間に声が響く。
「お待たせしました! みんな大好きG・V・G! 今回のカードはこちら! 設立から二年! 細々とした地道な研磨がついに火を噴くか!? 新生ギルド、クロスホープ!」
ノリノリで軽快な声でオレ達が紹介された。
細々とした地道な研磨か。
オレは過去のことは知らないけど、確かにそうかもしれない。
リク達はいわゆるはみ出し者だ。
そんな連中が何糞と歯軋りをして今日まで頑張ってきたのはこれまでの戦いでよくわかった。
ゴブリンレイド、そして獣の穴での戦い。
装備こそ貧弱だったけど、その動きは確実に磨かれている。
そして今日、その装備には一工夫してあるからな。
それに比べてあいつらはどうかな?
「対するはかつて王都で名を馳せた超前衛野郎どもの集い! 頭も体も筋肉か! 鉄か! 鉄人団!」
シェリナさんが言ってたけど、あいつら老舗ギルドだったんだよな。
昔は有名だったらしいけどブランタークの代になって途端に崩れ出したらしい。
先代が築き上げたものを自分の手で崩すのってどんな気分だろうな?
「新生ギルドの意地を見せつけるか! 老舗ギルドの威厳は健在か! いざッ! 開始! G・V・Gッ!」
開始と同時にメルチャ以外のオレ達は走った。
各チームごとに分かれて手筈通り、鉄人団の砦を目指す。
チーム分けはオレ、シェリナさん、バゼル、ユユル。
もう片方はリクとフーイーがそれぞれ独立して動いている。
一見して偏った編成だけどこれでいい。
こういう戦いならあいつらの特性がいかんなく発揮されるはずだ。
「いきなり向かってくるとはな!」
「さっそくサラマンダーソードの出番ってわけだな!」
「いやいや、魔人の斧の切れ味を試させろや!」
さっそく鉄人団の奴らがお出ましだ。
それぞれソードファイターが二人、ウォーリアが一人。
サラマンダーソードは火属性の片手剣だ。
追加効果で【ブレイズLv2】が発動して、攻撃時に一定確率で火傷状態にする。
魔人の斧は命中率はやや下がるけどクリティカル率が高い。
しかも防御無視の効果があったな。
さすがビルキットのお坊ちゃん、気前がいい。
「まずはそこのウィザードォ! 死にやが」
「ファイアボール」
「ぶあああぁーーーー!」
遅いんだよ。
こちとらどれだけ器用さに振ってると思ってるんだ。
スキル発動速度はたぶんお前らの倍以上だぞ。
「ゲミルゥーーー!」
「オラァ! よそ見してんじゃねえぞ! ヘヴィスラッシュッ!」
ゲミルとかいうおっさんが一撃で退場した。
もちろん死体にはならず、光の玉になって魔法空間外に飛んでいく。
あのゲミルとか言う奴、ろくに魔法防御を固めてなかったからな。そりゃこうなる。
対人戦はこれがあるから難しい。
対ウィザードを疎かにして物理防御偏重になり、耐性も度外視する。
無耐性でオレの【ファイアボールLv10】に耐えられるわけないだろ。
バゼルが容赦なく斬りかかった奴はダメージを受けたものの、まだ倒れないな。
ボンボン装備のおかげで物理防御力だけは高いからしょうがない。
だけどバゼルに押され気味なのはゲームで言う明確なプレイヤースキルの差だ。
「ク、クソォ! てめぇバゼル! この前までウィザードをコケにしてやがったくせによ!」
「あぁ? そんな大昔の話なんか持ち出してんじゃねぇよ!」
「うるせぇぇ! オラァーー!」
ソードファイターの男の一撃がバゼルに浴びせられる。
が、その傷は浅い。
男は決まったと思っていたのか、この状況を飲み込めずに瞬きを繰り返している。
「は? え? いや、効いてなさすぎ……」
「こちとら対策済みなんだよボンクラがッ!」
「あぎゅあっ!」
バゼルの【ヘヴィストライク】でスタン効果が発動したな。
すかさず追撃がヒットして、男が飛ばされていく。
「ど、どういう……こと、だ……」
「このギガントードの魔石は実に便利だな。人型からのダメージを軽減できる」
お、さっそくあっちでもあれが役立っているな。
シェリナさんがとある魔石込みの盾で攻撃を防いでいた。
「シェリナさんどいてそいつぶっ飛ばせない! ちぇりゃあぁーーーー!」
「ユ、ユユルゥ!? ぶぎゃあぁーーーーー!」
止めはユユルか。
やる気になったのはいいけど、増して力が入ってるな。
「ユユル、よくやった」
「はい! もっとぶっ飛ばします!」
シェリナさんがユユルの頭を撫でて、バゼルが自分のほうに加勢してくれなかったことを悔やんでいた。
シェリナさんの人型からのダメージを軽減する魔石を装着した盾がきらりと光る。
これが対策の一つだ。
GVGは相手が人間である以上、耐魔物用の装備が有効とは限らない。
オレ達は獣の穴で稼いだアイテムを売った金でGVG用の装備を取り揃えた。
今回のGVGで使うはめになるとは思いもよらなかったけどな。
つまり急いで使い切らなくて正解だった。
これもメルチャが慎重に使い道を検討してくれたおかげだ。
焦って使ってもろくなことにならないと改めて教えてくれた。
「このまま砦に突撃するぞ!」
「おぉ!」
鉄人団の奴らはこれで五人か。いや、ボンボンのお坊ちゃんを合わせて六人。
ていうかあのビルキットがこの場にいなかったのは意外だったな。
オレが敵なら間違いなくビルキット込みで突撃させる。
上位クラスの支援一つあれば、今倒された三人も善戦できただろうに。
それともまさか砦に籠って支援に徹する気か?
いくら砦Lv【7】とはいえ、そりゃちょっと悪手かもな。
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