清算と魔物の真実
獣の穴での討伐後、オレは眠ってしまったみたいだ。
朧気ながらシェリナさんにおんぶされた記憶がある。
シェリナさんの次はバゼルが背負ってくれたみたいで、オレは起きてからきちんと二人に頭を下げた。
「シェリナさんバゼル。迷惑をかけてしまった」
「気にするな。お前には助けられてばかりだからな」
「そうそう、下らねぇこと気にするな。大丈夫だ、ちゃんとシェリナさんには密着させてねぇからよ」
何が大丈夫なのかはわからないけど無事に帰ってこられたのは皆のおかげだ。
別にオレだってあの状況で、シェリナさんにおんぶされなくてくやしーとか言うつもりはない。
一階に下りるとすでに全員が着席していた。
夕食はすでに作られていてメルチャは約束通り、皆のエビフライを一本増やしてくれたみたいだ。
「さぁさぁ! 楽しい清算発表会やで!」
夕食兼清算発表会ということで、別テーブルには戦利品が並べられていた。
通常ドロップ品の他にはいくつかの準レアアイテム、レアアイテムの魔石がある。
この中で気になるのは魔石だが――
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ワータイガーの魔石
スロット:盾
効果:獣系から受けるダメージが30%減少する。
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バーサの魔石
スロット:アクセサリ
効果:物理攻撃力+20 力+5
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ドルバーサの魔石
スロット:鎧
効果:バーサーカーのスキル【凶化】の効果が上昇する。
ダメージを受けた時、一定確率で【グランドラム】が発動する。
獣系から受けるダメージが10%減少する。
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「さすが獣の穴、レア狩りで潜る冒険者が多いだけあるな」
「ウィムは冒険者になり立てと聞いたが、ずいぶんと詳しいな?」
シェリナさんに突っ込まれてしまった。
ついゲームのことをぽろっと言ってしまったけど、こっちの世界でも人気なんだな。
四層からはハードルが上がるから極端に人が減るのも同じだった。
どれも前衛組がほしがりそうな魔石ばかりだ。
バーサの魔石は適当なスロットつきのアクセサリを二つ装備してそれぞれにセットすれば効果が高い。
ドルバーサの魔石はタンク役がこれを装備しているだけで【グランドラム】がどんどん発動する鬼魔石だ。
ただしバーサーカーがめちゃくちゃ欲しがる魔石だから、これを売って資金にしたほうが個人的にはいいと思う。
皆の手持ちの金が増えれば、装備の質が高まってギルド全体の戦闘能力が上がるからな。
「で、この中で悩ましいのはドルバーサの魔石やなー。誰かバーサーカー目指す人おるん? バゼルとかどうなん?」
「俺はシェリナさんと同じナイト目指すからよ」
「シェリナさんはすでにいい魔石をセットしとるからな。じゃあ、これは売る方向で決めとくわ」
「あぁ、バリバリたっけぇ売値で頼むぜ」
クロスホープの場合、一人が強くなるより全体の強さの底上げが重要だからこの結論は助かる。
市場価格はオレの認識だと確か億は下らなかったはずだ。
オレへの分配で最終的に百万単位の金が手に入れば、また装備を強化できる。
ていうかなんでメルチャが仕切ってるんだ?
シェリナさんが納得したように腕を組んで見守っているし、昔からそうなんだろうか。
「じゃあバーサの魔石はどうしよっか?」
「それはバゼルかリク、ユユルかな。ただユユルはアクセサリの魔石枠の選択肢が多いから難しいところか」
「ウィム君、ユユルちゃんはムッキムキでええんちゃう?」
「アクセサリ枠にイビルアイの魔石をセットして魔力を底上げすれば【ヒール】の回復量が上がる。ステータス振り分けで魔力に多く割かずに済む」
「ほえぇー、なんかえらい詳しいなぁ」
イビルアイの魔石はアクセサリ枠で魔力が+10される。
アクセサリを二つ装備するとして、だ。
イビルアイ、バーサの魔石。
イビルアイ×2。
バーサの魔石×2。
二つの魔石だけでもこれらの選択肢がある。
更に素早さを底上げする魔石も捨てがたいから本当に悩ましい。
「リク君はどうするんや?」
「ユユルねーちゃんかバゼルにーちゃんに譲るよ。誰かに使ってもらったほうが嬉しいからね」
「リク君はホント欲がないなー。シーフの風上にも置けんでー」
「そ、そうかな?」
まぁリクはそういう奴だ。
もう少し自分の強さも追い求めてほしいところだけどな。
話し合いの結果、バーサの魔石はユユルが使うことになった。
現時点の殲滅力を考えると、ユユルを底上げしたほうがいい。
高い攻撃速度から繰り出されるメイスぶん殴りを早く見たいというオレの願望がないわけでもないけど。
殴りヒーラーの恐ろしさはこれからだ。
「で、残りのドロップアイテムは全部売りさばくとして……レアを含めて総額五千万飛んで八十万ゼルやな」
「ご、ごごごごご、ごっせんまんだぁ!?」
「なんや、バゼル。でかい突っ込みは逆効果やで?」
「何がだよ! 五千万っておかしいだろ!」
「だってドルバーサの魔石がそのくらいやからな」
オレが知る相場よりだいぶ低いな?
そういえば前回のゴブリンリーダーの魔石もドロップしたよな?
ゲームだとボスの魔石なんてレア中のレアで、狩場を張っているギルドがいたくらいだ。
よし、恥を忍んで聞いてみるか。
「なぁ、メルチャ。ドルバーサみたいなボスの魔石ってさ……絶対ドロップするものか?」
「当たり前やで。じゃなかったら誰があんなかったるいもん討伐するねん」
「マジか……」
これは色んな意味でショックだった。
じゃあもう一つ、ついでにこれも聞いておきたい。
「ドルバーサってさ、オレ達が狩ってしまったからもういないのか?」
「いや? ていうかウィム君、あんなえげつない戦い方するのに何も知らんのやな」
「ど、どういうことだよ」
「魔物っちゅうのはな。空気中に漂う魔素から生まれてんねん。これが場所によって性質や量が違ったりするんやけど、放っておいたら魔物化するんや」
魔素、なにそれ。
オレがゲームをやっていた頃には一度も聞かなかった単語だ。
呆気に取られているのはオレ一人だった。シェリナさん達はオレに唖然としている。
そんなことも知らなかったのかと言わんばかりだ。
「うちらがダンジョンって呼んでる場所は大体魔素が濃いで。獣の穴は獣系の魔物が生まれやすい魔素が溜まっとるんやな。ドルバーサは五層の魔素ならではの魔物ってわけや」
「じゃあ、あいつはそのうちまた生まれるのか?」
「せやな。ちなみにこの王都みたいな人が多く生活してる場所は極端に魔素が薄いんや。だからこういうところなら魔物は生まれないってわけやな」
「そうだったのか……」
「ウィム君、今までどうやって生きてきたんや」
どうやらそのレベルの基礎知識らしい。
そういえば親父とはそういう話をしなかったな。
今にして思えばオレを冒険者から遠ざけたかった節があった。
真相はわからないけど、考えるのはよそう。
親父に感謝こそすれど、恨むことは絶対ないからな。
「ウィムよ。お前、魔素も知らなかったくせにあんな戦い方どこで覚えたよ」
「親父が優秀なウィザードでな。色々と教えてもらったよ」
「お前の親父、何者だよ……そんな冒険者がいるなんて聞いたことねーぞ」
「さぁ、知る人ぞ知るって感じじゃないか?」
一瞬どうしようかと思ったけどこれでごまかせるな。
これで親父とウィザードの株も上がるし、良いことだらけだ。
うんうんと一人で納得していたところでシェリナさんが手を叩く。
「清算は以上だ。アイテム以外の分配やギルドポイントの使い道は後日ということで、しばらくゆっくり過ごしてほしい」
「よし! 兄貴! あんな戦い方ができるなら教えてくれよ!」
「そうだな。俺も興味ありありだぜ」
「ウィムさん! ぜひ手ほどきをお願いします! 私、感動しっぱなしでずっと手が震えていたんですよ!」
リクはともかく、興味ありありってお前。
ユユルはなんで手が震えてるのかわからんし、もしかして撲殺に目覚めたか?
とりあえずこの後は露店巡りかひと眠りしたいところなんだが。
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