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獣の穴 7

「ヒ、ヒール……あっ!」


 ユユルのTPが尽きたみたいだ。

 その隙を見逃すはずがないバーサがユユルを襲う。


「ファイアボールッ!」


 ユユルへの攻撃寸前、オレが残り一体のバーサを仕留めた。

 そう、仲間達の奮闘の甲斐があって取り巻きはこれで全滅だ。

 ドルバーサは思ってもなかった事態なのか、唸りながら周囲を確認している。


「ウウゥオオォ……!」

「三発ってところか」

「ウウゥ……!」

「お前を仕留めるのに必要な回数だよ。いわゆる三確ってところだな」


 無駄に挑発してみたものの、すでにまともに立っていられるのはシェリナさんだけだ。

 バゼルとリクが倒れていてユユルは片膝をついている。

 オレはユユルを支えながら、後ろへ下がるよう促した。


「ウィムさん……」

「ずっと戦わせて悪かった。ほれ、ハイポーションだ」

「あ、ありがと……ございます……」


 ユユルを庇うようにして立ったオレを睨みながら見下ろすドルバーサ。

 傷ついて動きが鈍っているものの、ウィザードが立つべき場所じゃない。

 こいつ、バカそうに見えてオレの挑発はちゃんと理解してるように見えるな。


「ウィム、危険だ! 下がれ!」

「シェリナさんもHPが危うい。オレのことなら心配しないでくれ」

「バカを言うな! ウィザードなど一撃でも受ければ……いや、とにかく下がれ!」

「シェリナさん、お願いだ。オレが絶対に死なないウィザードだと証明させてくれ」


 シェリナさん達は過去のトラウマのせいで、ウィザードの死に敏感だ。

 そんな人達の前でワガママを貫こうとするには訳がある。

 クロスホープはいいギルドだ。


 だけど仲間のウィザードの死をどこか引きずっているように見えた。

 オレを手厚く守り、なんとしてでも前衛としての務めを果たす。

 それは正解だしありがたい。


 だけどそれは本当の意味で全力で戦えているだろうか?

 心のどこかで腫物を扱うようになっているんじゃないか?

 戦っている最中、ちらちらとバゼルが後ろを確認してくる。


 シェリナさんもやや過剰にオレの前に立つ。

 同じ後衛のメルチャとフーイーがいるというのに。

 これはオレにとっても屈辱だった。


 後衛は打たれ弱いという認識は間違いないけど、オレはお客さんじゃない。

 オレはここに戦いに来た。気を使われるなんて勘弁してほしい。


「ダメだ! 私が」

「左腕振り下ろし」


 シェリナさんが言いかけた時、ドルバーサが左腕をオレに振り下ろしてきた。

 オレは右方向に避けて、ドルバーサの腕が地面を叩く。


「か、かわした……? ウィム、偶然……ではないようだな」

「さすがシェリナさん。わかってもらえたなら安心して見ていてくれ……ファイアボールッ!」


 十連発のファイアボールをドルバーサに叩き込んだ後、オレはまた右方向に走った。

 予想通り、ドルバーサは完全にオレにヘイトを向けたみたいだ。

 シェリナさんから引き離しつつ、オレは次のモーションを予想した。


 これだけ距離が開いていればアレしかないだろ?

 予想通り、ドルバーサは両手を地面に叩きつける。


「ハイ! ジャンプッ!」


 直後、ドルバーサの【グランドラム】が発動した。

 地面を揺らした衝撃でダメージを与える範囲攻撃だけど、タイミング次第で回避できる。

 ただし言うまでもなくめちゃ難しい。


 これはあえてバゼル達に教えなかった。

 オレがゲームの中で何度も戦って覚えたものだから、いくらシェリナさん達でもすぐに習得できるものじゃない。

 これに拘って失敗しまくった挙句、隙をつかれて全滅する危険性のほうが高かった。


 ゲームでもよくあることだ。

 覚えたことを試そうとする余りにゲームオーバー。

 ゲームだとコンテニューができるけど、ここでは死んだら終わりだ。


「ウィムの奴、何の真似だよ……」

「兄貴、オイラ達よりいい動きしてるよ……」


 補給を受けながらバゼルとリクが観戦していた。

 オレがここまで戦えるのも皆がドルバーサを追い詰めてくれたおかげだ。

 オレだってこんな戦いを長時間続けるのは至難の業だからな。


 何せ素早さが足りてないから、少しでもタイミングがずれたら終わりだ。

 こいつの攻撃を安全に回避するなら最低でも素早さは【50】以上ほしい。

 本来、オレの素早さ【10】で挑むのは舐めてる。


「【ぶん回し】はしゃがんで転がる!」


 ドルバーサの腕の下を転がって移動した後、オレはまた奴との距離を作った。

 【ぶん回し】直後のわずかな硬直時間を見て、再び【ファイアボールLv10】を叩き込む。

 残り一発というところで二本の矢がドルバーサに刺さる。


「無茶しないでぇ! 私が撃ち殺す!」

「フーイー!」


 フーイーに攻撃されたことでドルバーサのヘイトが変わった。

 ドルバーサがフーイーに向けて走ったところで、背中がガラ空きだ。


「バカが! だからお前は獣なんだよッ! ファイアボォーーーールッ!」


 こいつは攻撃を受けると戦況も考えずにすぐにヘイトを変える。

 そういう意味ではやりやすい相手だ。


「ウ、ガフッ……」


 ドルバーサが十連発のファイアボールを背後から受けたドルバーサが硬直後、前のめりに倒れた。

 一瞬だけフーイーが巻き込まれてないか心配になったけど、あいつが距離を間違えるわけないな。

 倒れたドルバーサの頭の先に立っていた。ギリギリじゃん。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ウィムはダンジョン内にてLv【43】 → 【47】に上がった!

クラスLvが【26】 → 【29】に上がった!

【野人の腰巻】をドロップした!

【オリハル石】をドロップした!

【魔人刀】をドロップした!

【ドルバーサの魔石】をドロップした!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あぁーーしんどっ!」

「ウィム!」


 オレがその場に座り込むとシェリナさん達が駆け付けてくれた。

 皆、その手にポーションやらマナポーションを持っている。

 ユユルに至ってはどう見ても必要ないグリーンポーションまで握っていた。


「ウィムさん! すべて全部飲んでください!」

「い、いや、ダメージも毒も受けてないから問題ない……」

「じゃあマナポーションはいどうぞ飲んでくださぁい!」

「ありがと……」


 ありがたくいただいたマナポーションを飲んだ後、気づいた。

 しばらくここで休んでいればTP回復するから必要なくね、と。

 まぁいいか。どこかの三人と違って代金を請求されるわけでもない。


「ユユルちゃん、休んでいれば回復するんやから落ち着いてな?」

「あっ!」

「次からは頼むな?」

「はい……」


 何をどう頼むのかは聞かなくてもわかるだろう。

 クロスホープの会計係でもある以上、メルチャにも管理する責任がある。

 戦いでは貢献できていなくても、こいつには助けられているからありがたい。


「ウィムゥ! おめぇなんだよありゃ! なぁ! あんなんできるなら今度教えてくれ!」

「兄貴! マジで惚れ直したよ!」


 とりあえず皆、生きていてよかった。

 安心したらなんだか眠くなってきたな。

 ダメだな、ちょっと動いただけでこれだ。


 さすがにVRMMMOとは違って現実での接近戦は疲れるなんてものじゃない。

 オレもまだまだってところか。


「お、おい……ウィムが……」

「安心しろ、バゼル。眠っただけだ」

「そ、そうだったんすか。じゃあ俺が背負って……」

「いや、私がやろう。ギルドマスターとしてそうさせてくれ」


 バゼルの好意はありがたいけどシェリナさんでよかった。

 シェリナさんといえば、オレの命令違反について謝らないといけないな。

 なんてことを考えつつ、オレは本格的に眠ってしまった。


━━━━━━━━━━━━

名前   :ウィム

クラス  :ウィザード

Lv   :47

クラスLv:29

HP   :336

TP   :596 クラス補正+30

力    :1

体力   :1

器用さ  :38

魔力   :8  クラス補正+15 魔力アップ+5

速さ :10


装備 :アークワンド

    スロット1:ゴブリンリーダーの魔石

    ワンダーバックラー

    古代魔術師のローブ

    時空の帽子

    火輪の耳飾り


スキル:【ステータス】

    【ファイアボールLv10】【アイシクルLv1】【ウインドカッターLv1】new!

    【ブラインLv1】【ポイズンLv1】【サイレスLv1】new!

    【魔力アップLv5】【術式研究Lv10】

━━━━━━━━━━━━

名前   :ユユル

クラス  :ヒーラー

Lv   :38

クラスLv:25

HP   :451

TP   :285 クラス補正+20

力    :8

体力   :2   クラス補正+5

器用さ  :10

魔力   :13  クラス補正+8

速さ   :21   +3


装備 :グランドメイス

    風霊の髪飾り

    疾風の服


スキル:【ステータス】【ヒールLv4】【杖修練Lv10】【ヘヴィストライクLv10】

    【ブレッシングLv2】

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