獣の穴 6
獣の穴の最下層である五層に着いた。ここは魔物の数はあまり多くない。
だだっ広いドームみたいな空間の中にちょくちょく火狐やワータイガー、そして新顔のグレイビーストだ。
グレイビーストはこの五層にしか生息していないレアモンスターで、魔石は人気がある。
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グレイビースト
Lv :40
HP :610
MP :55
使用スキル:【風属性攻撃】【ダークファング】
弱点:聖
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腕と足を二本ずつ生やした四足歩行の狼、グレイビースト。
白目で常に涎を垂らしながら、なぜか痙攣しつつ徘徊する様は初見だとかなり不気味に見えるだろう。
もちろん実力もあまりかわいくない。
暗闇効果のダークファングは前衛クラスにとってかなり厄介だ。
ドルバーサ討伐の難易度を上げている原因といってもいい。
ドルバーサと取り巻きのバーサに加えて、こいつらも寄って来るんだからな。
幸いそこまで数が多くないにしろ、暗闇状態になると視界は制限されて前衛が一気に崩されやすくなる。
オレ達はまずグレイビーストから片づけることにした。
「うへぇ、兄貴。あの魔物めちゃくちゃ気持ち悪いよ。なんでピクピクしてるんだろ?」
「あんなもんまだマシなほうだぞ。世界にはあれよりキモい魔物がまだまだいる」
「オイラ、冒険者やっていけるかなぁ?」
トラベルファンタジーの魔物デザインは一定以上の評価を得ている。
かわいい魔物からグロい魔物まで、多彩な表現で描かれてるのが魅力の一つだろう。
問題は実際にゲームで見るより遥かにキモいって点だ。
いつものようにシェリナさんが先行して【スピアレボリューション】でまとめて叩く。
最悪、シェリナさんはタンク役さえできていれば暗闇になってもさほど問題はない。
リクとバゼルは暗闇状態になった時のためにクリアポーションを一つずつ持っている。
「うわっ! 真っ暗だ! クソッタレ! 任せたぞ!」
「あぁ、バゼル! 下がっていろ!」
バゼルが後退してクリアポーションで暗闇解除をしている間にユユルが迎え撃つ。
このクリアポーション、対人戦では必須のアイテムだけど重量が重いからあまり多く持てない。
アイテムを大量に所持できるメルチャがいなかったら、この立ち回りは出来なかっただろう。
「ファイアボールッ!」
「うわっ! 兄貴のファイアボールでも倒れない!」
オレも【ファイアボールLv10】で応戦するけど魔法防御力が高いから、微妙に確殺にならない。
だけどそこはフーイーがカバーしてくれた。
オレが倒しきれなかったグレイビーストに綺麗に止めを刺してくれて助かる。
今はこんなものでしょうがない。
ウィザードが残念と言われるのはこの装備が揃ってない期間がきついからだろう。
それでもあのLvの相手を一撃で瀕死にまで追い込むことが出来ている時点で強い。
「オレは強いッ! ファイアボール!」
リクに襲いかかった二匹目のグレイビーストにファイアボールを浴びせてやった。
後はさくっとリクが攻撃するだけで倒れてくれる。
削りにしては上出来な威力だろう。
「ふむ、グレイビーストの数が減って……来たな」
「シェリナさん、できるだけ遠距離攻撃組で取り巻きを減らすよ」
遠くからバーサを引き連れたドルバーサがやってきた。
バーサより一回り大きくて肌と毛の色は緑、長くて清潔感がない黒い髪で顔が覆われている。
髪の間から黄色く光らせる目には確かに殺気が込められているように見えた。
「出やがったな!」
「バゼル、まだ近づくな! ファイアボール!」
バーサを減らしつつ、グレイビーストの相手だ。
ファイアボールで倒れていくバーサ、残りわずかのグレイビースト。
ここまでは順調だ。問題はあのドルバーサだな。
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ドルバーサ
Lv :55
HP :5233
MP :0
使用スキル:【ヘヴィストライク】【グランドラム】【ぶん回し】【踏ん張る】
弱点:なし
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出たな、緑ゴリラ。毒も暗闇も効かない脳筋野郎め。
いかにもザ・脳筋な見た目でマジで脳筋、ゴブリンリーダーを上回る物理攻撃力を誇る。
【グランドラム】は広範囲攻撃だから、後衛にも被害が及びやすい。
【ぶん回し】も相まって攻撃範囲が広いのが面倒だ。
【踏ん張る】をされてしまうと一時的にだけど大幅にダメージが減らされてしまう。
その間に取り巻きのバーサにリンチされてしまう上にこちらのTPが尽きる可能性がある。
とはいえ、取り巻きさえ倒してしまえばあまり関係のないスキルだ。
踏ん張ってる間は攻撃しなきゃいいんだからな。
「取り巻きを減らしたものの、まだまだいるな」
「ウィムは一度マナポーションで回復してくれ。私達が押さえておく」
さすがのオレもこう敵の数が多いとTPが持たない。
前衛と違ってTPが尽きたら何もできないから、こういうサポートは本当にありがたい。
回復している間はシェリナさん達が頑張ってくれている。
オレとメルチャは【グランドラム】の射程外にいるけど、フーイーは無理だな。
さすがにあれの射程外からの射撃なんて下位クラスであるアーチャーには無理だ。
「グランドラムが来たな……!」
緑ゴリラが両手で地面を大きく叩くと洞窟全体が揺れた。
揺さぶられるようにして衝撃でダメージを受けるクロスホープの皆を見て、オレはもどかしかった。
もっとオレが育てばTPなんてほぼ気にせずに戦えるというのに。
「あちゃー、リク君が吹っ飛ばされたで!」
「ユユルのTPも危ないかもしれないな」
ユユルは【ヒールLv2】で止めているおかげで、オレよりTPの消費が少ない。
そのおかげで経戦能力自体は上がっている。
とはいえ、皆が苦しそうなのは変わらない。
緑ゴリラの攻撃モーションや回避方法は一通り教えているとはいえ、いきなり対応するのは無理だ。
オレは三本目のマナポーションを飲みながら戦いを見守るしかなかった。
あいつらはこんなオレを信じて戦ってくれている。
「うわわっ! もたなそーー!」
「リクゥ! 弱音はきやがるんじゃねぇ! ウィムが戻ったら瞬殺だ!」
バゼルの言葉にオレは目頭が熱くなった。
成長途中だからなんて言い訳している場合じゃないな。
四本目のマナポーションを一気飲みしてから、口を腕で拭いた。
「うっし! 行くか!」
「ホンマに大丈夫なん?」
「【踏ん張る】の頻度次第だけど皆のおかげで確殺数が大幅に減った。メルチャは引き続き待機してくれ」
「ほな、帰ったら食事当番のうちが皆の晩飯のエビフライ一本増やしとくわ」
エビ一本か。メルチャにしては気前がいいな。
いつもは食費に至るまで経費に目を光らせているのに。
本人なりにも粋な計らいだと思っているのか、オレに向けてニカッと笑った。
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